サラが見つけた誤りと発見
東部山岳地帯の調査で、サラは重要なことに気づいた。
既存の地図に、誤りがある。
ある峠道が、地図では東に向かっているとされているが、実際は北東に曲がっている。その差は小さいが、地形の読み方を誤ると、降りる方向を間違える。
荷馬車なら問題ないが、夜間や悪天候では命に関わる差だ。
サラは現場で何度も確認した。日を変えて、時間を変えて、三回確認した。地図が間違っている、という結論は変わらなかった。
クロウに手紙を書いた。
「既存地図に誤りを発見しました。確認のための追加調査が必要です。行程が三日ほど延びる可能性があります」
返事は二日後に来た。
「確認を優先しろ。正確な地図の方が、速い地図より価値がある」
サラは追加の調査を行い、正確なルートを記録した。
それだけではなかった。
誤りを確認しに行った際、地図にない小道を発見した。地元の農民が使っている道で、正規のルートより一時間短く、かつ安全だという。
農民に話を聞いて、道の詳細を記録した。地形の変化点、注意すべき箇所、季節によって通れない場所。
すべてを丁寧に書き留めた。
その夜、宿で地図を書き直した。
誤りを直した正確なルートと、新たに見つけた近道と、農民から聞いた注意点。三つが一枚の地図に収まった。
「これで人が助かるかもしれない」
サラが独り言を言った。
誰に聞かせるでもない言葉だったが、秀にはしっかり届いた。
地図師になった理由が、この一言に凝縮されていた。
道を記録することは、未来の誰かへの贈り物だ。見たこともない顔の誰かが、この地図を使って、無事に峠を越える。それでいい。それで十分だ。
サラの地図帳に、また新しい線が引かれた。




