フィアとレインの出会い
フィアが東街道を三日歩いたとき、前方から馬が来た。
馬に乗っているのは、衛兵の制服を着た若い男だった。
レインだった。
ラメールの管轄範囲の外れまで来た巡回の帰り道だ。
「この先の道で、橋が一部傷んでいます」レインが馬を止めて言った。「渡れないことはないですが、重い荷物があるなら気をつけてください」
フィアが「ありがとう」と言った。
「一人旅ですか、この先は」
「そうです」
レインが少し空を見た。「夕方になります。近くに宿屋はないですが、三時間ほど戻ったところの村に泊まれる家があります。今夜は引き返した方がいいかもしれません」
フィアが「そうですね」と言いかけて、止まった。
革袋の中の紙を思い浮かべたのか、何かを確かめるような目になった。
「この先に廃屋はありますか」
レインが眉を寄せた。「廃屋?」
「昔あったはずなんですが。石造りで、川沿いの」
「……知りません。でも確認してみます」
レインが馬を降りた。地形を考えながら、川沿いの方向を見た。
「この先に川が合流する場所があります。そこなら可能性はあります。一緒に確認しましょうか」
フィアが「いいんですか」と言った。
「任務の帰り道なので、少し余裕があります」
二人が並んで歩いた。
秀はその後ろを漂いながら、「もう一つの目」の気配を感じた。
相手が興奮に近い揺れ方をしていた。
(これを待っていたのか)
川が合流する場所に出た。その川沿いに、確かに石造りの廃屋があった。
フィアが駆け寄った。
建物の周囲を歩きながら、紙と照らし合わせた。入り口の形、窓の位置、川からの距離。何かを確認している。
「ありました」
フィアが小さく言った。
レインが「何があったんですか」と聞いた。
フィアがレインを振り返った。
「……少し長い話になりますが、聞いてもらえますか」
レインが「時間なら少しあります」と答えた。
二人が廃屋の外壁に並んで座った。
秀と「もう一つの目」は、その二人を見ていた。
(さあ、始まるぞ)
秀は思った。
眠っていた物語が、今日ここで目を覚ます。




