冬の訓練場
エイルが王都に戻り、訓練が再開した。
冬の訓練場は寒い。息が白く、指先が悴む。それでも生徒たちは毎朝集まった。
エイルの剣が変わっていた。
一ヶ月の不在の間に、むしろ何かが整ったように、動きに余計な力みがなくなっていた。
ガルドはそれに気づいていたが、すぐには言わなかった。三日間、黙って見ていた。
四日目に言った。
「何かあったか」
エイルが「はい」と答えた。
「父上のことで」
「怖かったか」
「はい。でも怖い中でも、やれることをやりました。それが少し、剣に出たのかもしれません」
ガルドが「そういうことがある」と言った。
「剣は体だけで振るわけじゃない。その人間の経験や覚悟が、剣に出る。いい経験をしたな」
エイルが「いい経験と呼んでいいのかわかりませんが」と言った。
「辛い経験が、いい経験になることがある。すぐにそう思えなくていい」
エイルが頷いた。
模擬戦が始まった。
エイルは今日、二人続けて勝った。
勝ったことよりも、二試合とも乱れなかったことの方が、ガルドには評価すべきことに見えた。
試合後、ガルドが短く言った。
「七十点だ」
エイルが目を丸くした。前回は六十点だった。
「上がりましたか」
「上がった。浮かれるな」
「浮かれません。でも嬉しいです」
ガルドが「わかっている」と言って、次の組の試合を見始めた。
秀はその横顔を見ていた。
表情は動かないが、目が少しだけ柔らかい。
教師というのは、生徒が育つたびに自分の中に何かが積み重なっていく職業なのだと、秀はこの数ヶ月で学んだ。与えることで、満たされていく。




