表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/99

フィアの引き出し

 雪が積もった夜、フィアは久しぶりにあの紙を取り出した。


 暖炉の前で、紙を広げた。


 地図でも見取り図でも、正確にはどちらでもないその紙を、フィアは指先で辿った。一本の線、記号、また線。


「もうすぐ、行かないといけない」


 独り言だった。マルが尻尾を揺らした。


「怖いけどさ。でも行かないと、ずっとここにいることになる」


 マルが鳴いた。


「そうだよ、わかってる」


 フィアが紙を折りたたんで、今度は引き出しではなく、革の小袋に入れた。首から下げている革紐に通した。


 いつでも持ち出せるように。


 秀は固唾を飲んで見ていた。


「もう一つの目」の気配も、いつもより緊張した揺れ方をしていた。


 フィアが工房を見回した。鍛冶道具の並んだ棚。依頼品の並んだ台。マルの寝床。


「春になったら、行く」


 それだけ言って、暖炉の火を一段落とした。


 何かが動き始めようとしている。フィアの中で、長い間眠っていた物語が、ゆっくりと目を覚ましている。


 秀は「もう一つの目」に向けて気配を送った。


(そろそろ動くな、あいつが)


 気配が返ってきた。


 確かな肯定と、それから何か複雑なもの。期待と不安が混ざったような揺れ。


 秀はその複雑さに、親しみを感じた。

 

 誰かの人生が動くとき、見ているこちらもドキドキする。それはいい意味での落ち着かなさだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ