ガルド、王都へ戻る
北方の任務を終えたガルドが王都に戻ったのは、木枯らしが吹き始めた頃だった。
訓練所に戻ると、エイルが来ていた。
実家から戻ったのは二日前だという。
「父上は」
「少し良くなりました。春まではもつだろうと医者が言っています」
「そうか」
「先生が北方に行っていると聞いて、帰ってくるまで待っていました」
ガルドが「なぜ待った」と聞いた。
「報告書の続きを書きたかったので。北方の状況の顛末まで、記録しておきたいと思って」
ガルドが少し目を細めた。
「お前が帰ってきたのは、俺に報告書を渡すためか」
「……半分はそうです」
「残りの半分は」
エイルが少し黙った。
「先生が無事かどうか、確認したかったです」
ガルドが返事をしなかった。
代わりに「飯を食いに行くぞ」と言った。
エイルが「はい」と言って、少し笑った。
二人で訓練所近くの食堂に入った。特に豪華でもない、普通の店だ。エイルが頼んだのはスープと黒パンで、ガルドは肉の煮込みだった。
食べながら、北方の話をした。
「グレイ・ハンドの首謀者は捕縛されましたか」と聞いたのはエイルだった。
「された」
「村人たちは」
「安堵していた。長かったからな、三年は」
「先生が案内しなければ、あの迂回路は使えなかったと報告書に書きます」
「そこまで書かなくていい」
「事実なので書きます」
ガルドが「頑固だな」と言った。
「先生に言われたくないです」
食堂に笑いが起きた。他の客も、釣られて顔を緩めた。
秀はその食堂の隅にいた。
ガルドが誰かと笑っている。
一年前の酒場の隅で一人飲んでいた男が、今は弟子と向かいに座って笑っている。
それがどれほど遠い距離か、それを測れるのはナレーターだけだ。
(遠かったな、ガルド)
秀は静かに思った。




