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ガウル  作者: キヌミタロ
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第6話 美味しいカラスのジュース屋さん

 家に帰った僕は机の上にある紙を見つける。そして何かが書いてある。でも僕は読めない。ダンネが覗き込んでくる。

「ガウルへ 母は旅に出ます 帰ってきます 村から出ないで」

 僕は髪を机の上に置く。母さんは旅に出たらしい。

「ガウルのお母さんはいつも旅に出てるの?」

 僕は首を横に振る。

「もうなんかよく分からない家族ね」

「そ、そんなこと言っちゃ駄目だよ」

「だって訳が分からないじゃない! 嘘を見破る狼にいきなり旅立つ母親なんて聞いたことないもん!」

 母さんはどこへ行ったのだろ? そんなことを考えていると、すごい甘い匂いがしてくる。

「甘い」

「甘い? あ、ほんとだ。甘い匂いがする」

 ダンネが宙を嗅ぐ。ドロップが家の外を指さす。

「あれじゃない?」

 外を見ると真っ黒な服を着ている誰かがいる。黒い綺麗な帽子を被ってカラスみたいな嘴が尖った仮面、真っ黒な服に黒い手袋をしている。靴も黒い、全部黒い。木製の段差に大きなガラス瓶がいっぱい並んでる。中に色々な色の液体が入っている。

「さあさあ皆さん飲んでみてください! 果汁百%の野菜ジュースですよ!」

 村の皆が大きなガラス瓶を手に皆飲んでいる。僕たちは歩み寄る。

「デカいガラス瓶」

「あれジョッキと言うのよ。大抵はお酒が入ってるの。酒場とかで使われてるの」

「へえ」

 近づくと甘い匂いのほかに草っぽい、野菜の匂いがしてくる。

「おやあ! やっと子供に会えたよ! さあほら飲んで見てよ! ご老人たちは皆青汁が好みでね!」

 カラスは服の下からピンク色の液体が入ったジョッキを僕たちの前に置く。すごい甘い香りがする。ダンネがジョッキを両手に持ってカラスを睨む。

「あなた誰? 見るかに怪しいけど」

「僕はカラスだよ!」

 仮面の嘴が開いて「カア!」と鳴き声を上げる。カラスが嘘をついてるのが何故か分かるけど、僕は両手に持ったピンク色の液体を飲んでみる。とても甘くて美味しい。こんな美味しい飲み物は始めてだ。

「美味しい」

 ダンネが僕に顔を向ける。

「あなた警戒心というのがないの?」

「おんやあ? 狐のお嬢さんはまさかジュースに毒が入ってるとお思いかな?」

「実際、中に何が入ってるか分からないし」

「それもそうだね!」

 仮面の嘴が開いてカラスは「カア!」と鳴く。

「僕は黄金の果実を自家栽培しているんだ! そこからどれだけ手を咥えず如何に美味しいジュースを作れるかを試しているんだ! 自分では飲み飽きてね! こうして降り立って皆にも味わってもらおうと思ってるんだ!」

 ドロップは目を瞑ってピンクの液体を飲み始める。

「すごい美味しい!」

「それはそうだよ! それは苺ジュースさ! しかも果汁百%なんだ!」

 ダンネも苺ジュースを飲み始める。そして目を見開いて苺ジュースを見る。

「なにこれすごい甘くて美味しい!」

 ダンネはジョッキに入っている苺ジュースを一気に飲み干す。

「喜んでくれて何よりだ! ところで狼の少年」

「ぼく?」

「そう僕だ、君はこの辺りじゃ珍しい子だね」

 僕は首を傾げる。ダンネが「おかわり」とジョッキを差し出す。

「ガウルの何が珍しいの?」

 カラスはダンネから空のジョッキを受け取ると服の下に隠す。新しいジョッキには黄色い液体が入っている。それをダンネは受け取る。

「君はとっても真っすぐな眼をしている。その澄んだ蒼い瞳は大事にするんだよ」

「あおいめ?」

 ドロップが苺ジュースを飲み終える。

「ガウルの目は蒼いよ」

「そうか蒼いのか」

 知らなかった。僕の眼は蒼いのか。

「そうだ! 大人にはもう尋ねたんだけど! 君たち宝探しは好きかい?」

「宝探し?」

「そうさ宝探しさ! ジュースを味わって欲しいというのは事実だけど、もうひとつこの島に用事があってね! 実はあるお宝を探しているだ! 原初の花というものを探しているんだ! 聞いたことないかい?」

 僕たちは首を振る。

「そうかそれは残念だ! 最近噂で耳にしたんだ、どうも原初の花というのが各地に現れたらしく。いちど見てみたいと思って!」

 ダンネがカラスを指さす。

「あなたどこから来たの?」

「それは言えないんだごめんね! 僕の畑に黄金の果実が実っている知られると皆欲望のままに狩りとって行っちゃうんだ! だから秘密なんだ!」

 僕は苺ジュースを飲み干して空いたジョッキをカラスに渡す。

「美味しかったかい?」

「うん、美味しかった」

「そうかそれは嬉しいよ! そのひと言が欲しくてジュース屋さんをしているんだ!」

 カラスの仮面は表情を見せない。でもカラスがとても喜んでいることが何故か分かる。

「ところで少年、君は……」

 カラスは体を大きく左右に振って僕を眺めている。

「いや気のせいだったよ!」

 ダンネが黄色の液体を飲み干す。

「オレンジジュースだった。ごちそうさま!」

「美味しかったかい?」

「美味しかった! ところで何が気のせいなの?」

「そうだね思わせぶりは失礼だね! 僕の知ってる似てるなあと思っただけだよ! たぶん気のせいだごめんね!」

 僕はカラスの知っている誰かに似ているらしい。でもそれは嘘だ。

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