↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガウル  作者: キヌミタロ
第9章 繋がれし白蛇
PR
57/95

第56話 新たな仲間?

 ダンネにフォクシイの意思は伝わり、ひょっこり出て来た原初の花もドロップの杖が吸収し、こうしてフォクシネル共和国を去ることになった。少し離れた雪の国、フォクシネル共和国。雪に囲まれた白の国。あれがフォクシイとトルピーが建てた国なのか。よくここまで建てたもんだ。デカすぎる功績につい笑みが浮かぶ。どうやったら国を建てられるんだ、すごいな。

雪が両脇に積まれた道を行く。王国まではダンネのママであるハスタが同行してくれる。既にニャーが楽しそうに、黒い両耳を横にしてドロップに抱き着こうとしている。それをダンネが必死に阻止している。それを心配そうに震えながら見ているカーリー……カーリー?

「カーリーはどうしてここにいるんだ?」

 俺が声をかけると、体を一度大きく揺らす。そして何も答えない。俺はどうしていいか分からず、カーリーに指をさして助言を求めることにした。

「カーリーが付いてきてる」

「隙ありニャ!」

 皆がカーリーに振り返る中、その隙を見抜いたニャーがドロップに素早く抱き着いた。

「抱き着いたニャ!」

 ドロップが必死にニャーを引き剥がそうとする。ダンネが慌ててドロップに駆け出す。

「しまった!」

 こうしてドロップはニャーに抱き着かれてしまった。それよりも、どうしてカーリーはここまで付いて来たんだ? カーリーのおばあちゃんの家を出てから、なんとなく付いてきているなとは気づいていた。国を出るまで見送ってくれるのかと思えば。国を出ても俺たちに怯えながら付いてきている。カーリーを眺めて瞬きをする。相変わらず両眼を瞑って震えている。何しに来たんだ?

「カーリー」

 名前を呼んでみると、また体を大きく揺らす。そこへハスタが傍に来る。

「ねえカーリー、どうしてあなたはここにいるの?」

「そ、その……おばあちゃんが……いい加減に外の世界を……学んで来なさいって」

 ハスタなら喋るのか。面倒くさいやつだな。俺は気にせず道を歩きはじめる。

 ニャーはドロップから離れ再び狙いを定めている。それをドロップが迷惑そうにニャーを睨み、ダンネが再びニャーを警戒している。その三人の横、俺は通り過ぎ様にドロップを睨む、ダンネはニャーを眺めていて俺にまったく気づいていない。そして俺はドロップに抱き着く。

「隙あり!」

 ドロップは俺を必死に剥そうとする。

「なんでガウルが僕にくっつくのさ!」

 俺は素直にドロップから引き剥がされていく。そんな俺を、ダンネがしっかり睨んでいる。

「邪魔しないでガウル!」

 俺はダンネに笑顔を見せる。見るべきはこっちじゃないぞ。

「隙ありニャ!」

 ダンネの死角からニャーが、ドロップにまた抱き着いた。

「もう! いい加減にしてよ! どうして僕がいつも! 抱き着かれなくちゃいけないんだ!」

 ドロップはまたニャーを引き剥がそうとしている。ニャーは離れる気がなくてドロップに抱き着き続ける。

「ドロップは暖かいニャー」

「離れなさい!」

 ダンネがニャーを引き剥がす。解放されたドロップが俺を睨む。

「そうだ! ダンネの代わりにガウルがやってご覧よ!」

「ええ? 僕う?」

「嘘をつかないで! 君はその……なんかこう強いガウルだ!」

「バレたか」

 ダンネが力強く俺を指さす。

「そうよ! やってみなさいよ!」

「ええ……」

 俺の承諾を得ずに、ニャーとダンネがドロップを狙い始める。ため息を小さく吐いて音を聞く。ニャーはドロップの周りを回る癖があるので、足音がよく聞こえる。ダンネは頭がいいので、ニャーの動きを見て反対側を回る。そして、ニャーは自分の意思をしっかり口にする性格なので、まず最初に突っ込んでくるのはニャーだ。頭の良いダンネはそれを見越して、後からドロップに突っ込んでくる。ちなみに、ドロップはワクワクしながら棒立ちをしている。いまのうちに雪玉を作っておこう。ドロップの足元で雪玉を作る。玉にはするが固めずにフワフワな雪玉を両手で作る。

 ちなみにニャーは「隙ありニャ!」という癖があるので、それを待てばいいだけ。ダンネは如何に俺に恥を欠かせようかと企んでいるはずだから。俺がニャーを抑えた瞬間に突っ込んでくるはず。だから先に狙うのはダンネだ。フワフワの雪玉が出来た。

「隙ありニャ!」

 ニャーの合図と同時にフワフワの雪玉を、ダンネの顔目掛けて投げる。見事に命中した雪玉にダンネが驚いて顔を払う。俺はドロップを少し押しのけて突っ込んでくるニャーに抱き着く。そしてそのまま体を捻って雪の地面にそっと投げ倒す。

「ニャ!」

 ニャーを沈黙させて、ダンネが遅れて突っ込んでくる。ニャーのほうから雪の音が聞こえる。もういちど突っ込んでくるのだろう。だから、片足でダンネの顔目掛けて雪を盛大に蹴り上げる。雪は綺麗にダンネの顔に当たる。

「うわっぷ!」

 棒立ちしているドロップを掴んでグルリと回って位置を変える。

「わわ!」

 突っ込んで来たニャーの胴体を手でそっと弾く。

「ニャフ!」

 ドロップを故意にダンネに荒々しく突き飛ばす。それと同時に俺はダンネに駆け出す。

「ちょっと!」

 ダンネが咄嗟にドロップを支えようとする。その隙をついてダンネの足を払い、顔が地面に落ちる前に襟を掴み、転びそうなドロップを掴んで終わり。

「まあこんなもんだと思う」

 ダンネの襟から手を離し、ダンネは雪の上に倒れる。ドロップは引き上げてしっかり立たせる。ハスタが俺に拍手をくれた。

「へえ、すごいわね。よく出来てるわ。学びなさいダンネ、ガウルはいま何を耳にした?」

 ダンネが首を勢いよく払い、顔についた雪を飛ばす。

「耳?」

「そう耳よ、眼だけじゃ足りない」

 俺はハスタを眺める。よくよく考えれば、ダンネの母親なのだから、ハスタから学べばいいじゃないか。

「ハスタが教えればいいんじゃないか?」

 ハスタを見ながら、駆けてくる音を耳にする。隙をついたニャーを両腕で捕まえる。ニャーは必死に暴れる。

「離せニャー!」

「いえ、面白いからガウルが教えて」

 つい眼を細めてしまう。いま面白いと確かに言った。よく分からない母親だ。

 俺は自分の母さんを思い出す。よく分からない母親だった。母親とはよく分からない人なのか? ニャーを抱えたまま雪の道をひとり歩いて行く。

「離せニャ!」




 懐かしき宿についた。相変わらず雪が積もっている木造の建物。先に扉を開けて入るが暖かさはない、左の奥に見える暖炉に火は灯っていない。最初来たときは、確か「ガウル」はいたと思う。自分でも相変わらずよく分からない。

 俺はガウルで、黒い手を握り、気づけば徐々に知らない記憶があり、ついには元からいたガウルの雰囲気が消えている。でも、俺は全部覚えているガウルなんだ! 誰でもいいから説明してくれ。つい静かに唸ってしまう。

「なに唸ってるの?」

 ダンネに言われて顔を背け、火の点いていない暖炉に向かう。

「別に」

 難しく考えても仕方がない。今はドロップを優先しよう。そのあと王国に行って……あの俺を襲って来た赤黒い眼の奴が恐いんだ。確か、ハリスが言うには北へ行くことを妨げいてる可能性があると。それなら北に行かなければいいのか? もしかして思ったより簡単な話か?

「暖炉に火点いてないニャ」

 皆が暖炉の傍にやってくる。ハスタが火打ち石を手に暖炉に近づく。

「いま点けるわね」

「面倒くさいからニャーが点けるニャ」

 ニャーが中指と親指を弾き、パチパチと音を二回鳴らす。指から軽く火花が散り、宙を舞う火花が消えず全て暖炉の隅にたどり着く。暖炉にそっと火が点いて、ニャーが横に置いてある薪を入れる。そして、背伸びをして床に寝転がる。

 俺たち全員ニャーに顔を向ける。いま何をした?

「ニャー、いま何をした?」

「火点けたニャ」

「どうやって」

「指でニャ」

 寝転がっているニャーを無理やり起き上がらせる。

「何するニャ」

「指で火は点かない」

 ニャーが大きく口を開いて欠伸をする。

「ニャアアアアア!」

 と声を漏らしながら茜の炎を吐き出す。吐き出し終わった炎が消えることなく、ニャーが差し出した手の平の上で燃え続けている。なんだこれ?

「魔力ニャ?」

「魔力?」

 ダンネが炎を覗き込む。

「これは火よね?」

「見れば分かるニャ」

「魔力ってなに?」

「食事ニャ」

「食事?」

「ニャーは食べたもの全てが魔力になるニャ。食べれば食べる程なんでもできるニャ」

 化け物じゃねえか。いや、待てよ。俺はひとりで作を練り始める。

「他のも出せるの?」

「出す必要はないニャ。変えればいいニャ」

 ニャーの手の平にある小さな炎が透明な水になる。なったかと思えば水の中から光が駆け巡り、雷の球体となる。ダンネは眼を細めているが、ドロップは眼を輝かしている。

「すごいね! 何でも出来るんだ!」

「ニャーは凄いニャ。なんでも出来るニャ」

 ニャーは手を握り、雷の球体を握りつぶす。また床に寝転がる。

「これだ!」

 俺は名案を閃いた! ニャーは何でも出来て、ドロップには癒しの力がある。

 ダンネが俺の腕を掴む。

「何が名案なの? 私に教えて!」

 俺はダンネに眼を輝かせる。

「ニャーの魔力とドロップの癒しの力、これを使って俺を狙っている赤黒い眼の奴を倒せばいいんだ! これなら俺は怖くない!」

 ダンネは視線を逸らす。

「でも、ドロップの杖にあるのは癒しの力だよ? 倒せないじゃん」

「だからニャーが赤黒い眼を攻撃して! 奴が攻撃してきたらドロップの癒しの杖で治してもらうんだよ! これなら」

「駄目に決まってるでしょ! 攻撃されてること前提じゃない!」

「ん? そうなのか?」

「そうよ! どう考えても理想はニャーに赤黒い眼を倒してもらう! こうじゃない!」

「そうなのか」

 名案だと思ったが、どうやら駄目のようだ。俺は両腕を組んで少しだけ見上げる。そして、もうひとつ良いことを思いついた。

「カーリーに尋ねてみよう」

「カーリーに?」

「カーリーは一番成績が……」

 無表情で眺めてくるダンネの視線が痛い。これ以上、先を口にしてはいけない気がする。カーリーを見れば、どこから出したのか、既に少し離れたところで布を被っている。おまんじゅうみたいな形をしている。

「一番成績がなに?」

「いやその……なんでもない」

 カーリーは眠っているのか、おまんじゅうがゆっくりと、呼吸の感覚で動いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。