表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガウル  作者: キヌミタロ
5/15

第4話 偽りの気配

 口が生臭いので僕は川の水を飲む。食べた魚は美味しかった。

「ねえお腹大丈夫?」

 ダンネも魚を食べ終わったのか、魚が刺さっていた木の棒を焚火に放りこむ。

「美味しかった」

「本当に大丈夫なんだ」

 ところでこの狐のダンネは一体どこの誰だろう? 山向こうの子供かな?

「山向こうの村の子供?」

「え? あ、うん。 そうだよ」

 嘘だ。ダンネは嘘をついてる。

「最近引っ越してきたから、どこがどこだか分からなくて」

 これも嘘だ。なんで分かるかのか自分でも良く分からない。僕は首を傾げる。

「なによその首?」

「どうして嘘をついてるの?」

「嘘じゃないもん! 山向こうの村に引っ越して来たんだもん! それで散歩してたら遭難しただけだもん!」

 遭難したのは嘘じゃない。でも引っ越してきたのは嘘。よく分からなくなってきた。

「お魚ありがとう! じゃあ私は家に帰るから」

 ダンネが足早に歩いていく。これも嘘だ。何で嘘だと分かるんだろう?

「家に帰らないよね?」

 ダンネが足を止める。振り返ると顔が怒っている。

「なんで私が嘘をついてると思うの! 証明できるの!」

「しょうめい?」

「私が嘘ついているのをどうやって分かるの?」

「なんとなく?」

 僕は首を傾げる。ダンネが僕に指をさし犬の子供に顔を向ける。

「この子、本当に大丈夫?」

「ぼ、僕に聞かないでよ」

「ひとりは記憶喪失でひとりは何考えてるか分からないし。そうだ! じゃあ私が嘘をつくから嘘か本当か当ててみてよ! それであなたが見破れなかったら私は嘘をついていない! いい?」

「わかった」

 ダンネが足元から石をひとつ拾う。

「ルールは簡単! 私がこの石を右手に握っているか握っていないか! 後ろで石を隠すから私が嘘か本当か当てて!」

「わかった」

 ダンネがにやにやしながら両手を後ろに回す。そして右手を突き出す。

「私はいま右手に石を持っています!」

「持ってない」

「む」

 ダンネが右手を開く。そこに石はない。犬の子供がダンネの手を覗く。

「へえすごーい!」

「まぐれよまぐれ!」

 ダンネはまた両手を後ろに回す。そしてまた右手を突き出す。

「はい! 私はいま右手に石を持っています!」

「うん。持ってる」

 ダンネは悔しそうに右手を開く。石は右手にしっかりある。

「すごいすごい!」

 犬の子供がはしゃいでいる。

「ちょっとルール変えるわ。片手だからまぐれなのよ」

 ダンネはまた両手を後ろに回してから、今度は両手を前に突き出す。

「私は今左手に石を握っています!」

「握ってないね」

「なあ!」

 ダンネの左手には石がない。

「僕もやる!」

 犬の子供が足元の石を拾う。ダンネと同じようにして両手を前に突き出す。

「はい! どっちに石があるでしょうか?」

「分からない」

「あれ? 分からないんだ」

「うん、分からない」

 ダンネが犬の子供に指をさす。

「たぶんそれ質問が悪いのよ。あなたが本当か嘘か言わないと」

「あーそうか。ごめん。じゃあ僕は右手に石を持っています」

「持ってないね」

 犬の子供が嬉しそうな笑顔を見せる。

「すごいすごい! どうして分かるの!」

「分からない」

 ダンネが歩み寄ってくる。

「私はお嬢様で成績優秀。文武両道で皆の憧れの的。どこが嘘か見破れる?」

「嘘ついてないよ」

 ダンネは犬の子供に近づいて腕を引っ張り連れて行く。

「私ちょっと怖いんだけど。あの子変だよ」

 怖がらせてしまった。

「僕も分からないよ。助けてもらったの昨日だし」

「ちょうどいいからあなたも変な嘘ついてみなさいよ」

「分かったよ」

 ふたりが戻ってくる。犬の子供が手を上げる。

「じゃあ僕は今から嘘をつきます!」

「わかった」

「僕はその……記憶喪失じゃありません!」

 犬の子供は笑みを見せ僕の答えを待っている。僕は驚いている。犬の子供は記憶喪失じゃないと言った。そして嘘をついていないことも何故か分かる。それは犬の子供が記憶喪失だから? そもそも記憶喪失って嘘つけるの? 僕は何が何だか分からなくなった。

「うーん」

 僕は頭を抱えて悶える。

「ぼ、僕嘘ついたよ! なにその反応!」

「流石に記憶喪失は難しいんじゃない? 嘘の元がちょっとデカすぎるのかも」

「そうなんだ。ごめんねガウル」

「じゃあ私はそろそろ家に帰る」

「それは嘘だ」

「こんの!」

 ダンネがすごい怒っている。犬の子供のことは考えても分からない。

「結局、ダンネはどこから来たの?」

「教えない!」

「そう。じゃあ僕たちそろそろ帰る」

「え? 聞かないの?」

「お魚美味しかった」

 僕は村に向かって歩きはじめる。

「ねえガウル」

 犬の子供が僕の腕を引っ張る。

「なに?」

「き、聞いてあげなよ」

 ダンネを見るとちょっと離れた場所に座って耳がペタンとなっている。

「何してるんだ?」

「聞いて欲しいんだよ、聞いてあげなよ」

 なんかちょっと面倒くさい感じがしてきた。

「ダンネ、僕たち帰るけど一緒に帰る?」

 ダンネの耳が立ち急いでこちらに駆けてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ