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死体回収業務は真似っこさん  作者: ⻆谷春那
CaseK.1 真似で救われる人生
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事後報告 Part.1

死体回収業務は真似っこさん

⻆谷 春那

CASEK.1

真似で救われる人生


事後報告 PART.1


「…何か、顔つきが違うね。」

「五月蝿い。」


先程、怪人に頼み事をした少女と、似ても似つかない姿をしている。

しかし、彼女が退出して数分も経っていない、後。

早着替えをする意味も、ないだろう。




彼女が、本物(・・)の。

「レディ・ワーガーネス」である。


「…貴方の事は、聞いてたわ。

前々から。」

「誰から?」

「…姉様の、『初恋の人』。」


以前「怪物退治」をしかけた人物とは、思えない顔つきだ。


冒頭で、【怪人】が言及したのも、頷ける。


同一人物とは、少し思えない程。

まるで、憑き物が落ちたような。




本当に、穏やかで。

聡明そうな顔つきだ。

それとも、これが「本来」の表情なのだろうか。


狂ったと言う噂が真なら、狂う前―本来の表情は、こんなに美しかったのだろうか。

それとも、もっと?


「誰、それ。」

「姉様が、せがんだらしいわね。

その時に、貴方が化けた人。」

「…あの人、此処にも来てたんだ。」

「数年前に、ね。

姉様が私のフリをしてたんだけどね、何故か、見破って来たのよ。

そんな事、あの人だけだから、よく覚えてる。

【秘密話】は、本当だったんだねって、驚いた。」

「…やっぱりお前は、本家の(あの)ワーガーネスなの?」

「あら?知らなかったの?」

「分家かと思ってた。

まさか、本家が謀反なんて。」

「あら、失礼ね。

『謀反』まではいってないのよ?

ただ、『御話合い』をしようとしているのに、向こうがテーブルに着いてくれないだけ。」

―――――――――――――――

庶子には、知らされなかった事がある。




「ワーガーネス家」は、ただの男爵ではない。

表向きはそうなっているが、その実、最も王国家と関わりが強い家の一つなのだ。


ワーガーネス家の始祖は、本当に只の男爵だ。

ただ、少し戦争が得意だっただけ。




ある時、王国家が過ちを犯した。

そこから、ワーガーネス家の本家は、人知れず王国家の血縁を受け継ぐようになった。




そんなワーガーネス家は、王国家の暗部のような働きをこなすようになった。

表面上は、只の貴族だ。

王国家には、とても知らせられないような情報も、手に入れる事が出来る。


言わば、「裏切者」「内通者」。

ワーガーネス家は、そのような働きを担って来た。






「真似っこさん」は、実在する。

しかし、多くの者達に、それは内密にされている。

混乱を、避ける為である。

そのため、ただの「噂」「都市伝説」とされている。






しかし、ワーガーネス家は、【秘密話】を許される家柄であった。

―――――――――――――――

「今の軍部は、本当に優秀だわ。」

「マジで?それ、言っちゃって良いの?」

「建前と、本音があるものよ。

…今は、本音で話すべき場所なんでしょ?」


「カイラ・ワーガーネス」は、今は退室している事になっている。

この部屋には、【怪人】と、「少女」のみ。


「私が本当に倒すべきは、もっと裏側(・・)。

だけど、裏側は何の、非も被ってないのよ。

表向きは、ね。

…軍部は合理的だから、本当はこんな事、したくないでしょうに。」

「『こんな事』、って?」

「…察しが悪い事は、美徳ではないわ。」

「どれか、もはや分からないんだから。

しょうがないでしょ?」

「…ソルタントの、事よ。

…ねぇ、『同胞』達は、既に声を上げているのでしょう?」

「…新聞とか、手紙とか。

来ているんじゃないの?」

「姉様が、見せたがらないのよ。

つい最近、と言うか、朝まで。

『あんな』状態だったから。」


そう言って一口、茶を飲んだ後。

「少女」は、遠い目をした。


「…何だか、スッキリしたのよ。凄く。

凄く、子供じみてたし、馬鹿みたいな事ばっかしてた。

頭に、靄がかかったみたいに。

正常な、思考じゃなかったし、いつもだったら、し得ない事も、沢山していた。

…だけど、楽しかった。

体裁なんて気にせず、暴れまわってた。」


そう言うと、溜め息をつくと。

【怪人】に向き合って、こう言った。


「…ねぇ、今の貴方は、『誰』なの?

…いや、答えなくて良いわ。

分かり切っている事を、確かめたいの。」

「…少なくとも。

お前の関係者には、居ない者だろうね。」

「…つまり。此処には、ローリーも、姉様も、誰も居ない。

二人きりな上。

貴方は、此れ以降、関わりの無い。

そうよね?」

「少なくとも、其の予定はない。」

「…ねぇ、墓を、暴くようで。

本当に、彼には申し訳なく思うんだけど。」


そう、「少女」は前置きする。

生唾を飲み込む音も、聞こえてきそうな程、凍った空間。


「此処でしか、知れない話をしたいわ。

…貴方の記憶に、問うわ。」


表情も凍り付く。空間のみならず。

冷たいが、何かを射抜けそうな、瞳。

その瞳が、真っすぐ【獣】の瞳孔をした瞳―モストロを、射抜く。


「…私を狂わせたのは、誰の策略?」

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