↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死体回収業務は真似っこさん  作者: ⻆谷春那
CaseK.1 真似で救われる人生
16/18

引き合わせ

死体回収業業務は真似っこさん

⻆谷 春那

CASEK.1

真似で救われる人生

引き合わせ


「…本当に、連れ戻って来てくれたの。」

「凄く、苦労した。」


【怪人】が女爵邸に着き、老婆が令嬢を呼び出した時。

令嬢は、酷く動揺した。

大変、時間が経っていたのだ。

最初に、【怪人】と出会ってから。


此処からマッチからまで、大層な日数は入用ではないはずである。

なのに、一週間以上、戻って来なかったのだ。


「騙されていたのでは?」

と、疑い始めた頃合いだった。




袋を開けようとする令嬢を、【怪人】は制止する。


「…ねぇ、一つ小言を言う。」

「…そんなに、酷いの?」

「いや?綺麗。

見ても、何の問題も無い、はず。

たださ?」


そう言って、何時ぞやの羊皮紙を床に投げ捨てる。


「レイラ(・・・)・ワーガーネスは、見ない方が良いかもね?」

「あ。」


その動作。

表情にはあまり変化は無いが、明らかに怒っているようである。


「世間一般では、狂った方がお前になっているらしいな?

『ドレミア=ハイト(・・・・・・・・)・ワーガーネス』?」

「何を言っているのかしら?

私は、『レイラ・ワーガーネス』よ?」

「惚ける気?

お前がそんな事してるから。

妹は余計、病んだんじゃないの?」

「…ねぇ。何処で、気付いたの?」

「お前が、『妹』って言っている時は、俺の言語能力も足りていなかったし、気にしていなかった。

第一、お前たちの事情なんて、俺は知らない。

…だが。俺は真似をする過程上、その死体を模倣した。

記憶をコピーした。

…第一、お前(妹)の婚約者ならしいじゃないか?」

「…だったら、何?」

「お前、どうしてこんな事をしている?

お前のその所業が、『ワーガーネス女爵』を余計苦しめているのは、分かっているだろう?」

「…ねぇ。どうしてそんなに、気にするのかしら?

貴方には、何の問題も無いじゃない。」

「…言わなきゃ、その人。

渡してもらえなさそうね。

しいて言えば…そうね。

…この世界の、未来の為、かしら?」

「…綺麗事か?

俺を騙して居ていたくせに?」

「貴方だけじゃない。

ローリー以外の、全ての者。

…レイラも、含めて、ね?

貴方、此の国の情勢は知っているのかしら?」

「…知った上で問う。

そこまでして、お前に何の価値がある?

お前は何のために、【俺達】に縋っている?

…その答えを聴けるまで。

俺は、役目を放棄する。」


そうすると令嬢は、困ったような顔を見せる。

困惑でも、焦燥でもない。

ただ「打つ手なし」と、言わんばかりに。


「…困ったわね。

さっき話したことが、全てよ?

私は、彼女に。姉(・)に。

世界の希望を、見出している。

彼女には、どうにか、立ち直ってもらわなきゃいけない。

…私が居なくなっても。」

「嘘つき。」

「本当なのに…。

姉(・)は昔、著作の中でこう書いたのよ?

『生きていれば、何とかなる。

ただ戦争は、生きている事を許してはくれない。

だから戦争を、許しちゃいけない』…って。」


何も見ず、暗唱する。

そして、微笑む。


少し、怖い笑みであった。

悪戯っぽさに近いものはあったが、もっと違う何か。

悲しい、何かが根底にはあるような。


「…私は姉(・)に、その言葉を、有言実行させる義務があるわ。

そしてきっと、姉はこれからも…いえ、これからの世界に、必要よ。」

「何それ?自己犠牲?」

「そうかもね。

ただ、ずっとなかった理由が出来て、嬉しいのよ。

…ねぇ、早く。

彼女に、会わせてあげて欲しいわ。

私、この後予定があるのよ。」


最終的には、【怪人】の方が折れた。

何か、心に引っかかるものがありそうだが、あえてのオーバーリアクションで、放棄した。

何を?追及?それとも、抑止?


少なくとも。

目の前の女が止められない事は、前々から知っていたのだろう。

ソルタントの記憶を、喰らった時から。


「…もう良いよ。

面倒臭くなった。

どうせ困るのは、上司だろうし。

と言うか、アイツ。

多分分かってたな、憎らしい。」

「…お礼を、言わせて?

…あの時、妹(・)が貴方に切りかかったわよね?」

「『お礼』?それは、『謝罪』じゃなくて?」

「そうね、両方かも。

…ごめんなさい。そして、ありがとう。

貴方の言葉で、彼女、何か吹っ切れたみたい。

何か、社会的なしがらみから、解放されたみたいでね。」

「…精神的に負荷を掛けさせてる本人が、何を言う?」

「そうね。そうかも。

…もう一押し、してもらえないかしら?」

「…偽物だよ?

本人じゃない。

全くの、別人。」

「良いわ。気休めに、なれば。」

「…あ、そう。」

「…あの子(・・・)ね。貴方の言葉で、信じたのよ?

私の時から急に、言葉を変えるもんだから。

少なくとも、特別な存在だって、思ってくれた。

…ねぇ、貴方、何処であの言葉を習ったの?

私でさえ、分からないのよ?」

「…さあ?お前の妹が、そんな【怪物】を、望んだんじゃない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。