第91話
吸血族の特質した体質は親王族の魔族の間で広く知れ渡るようになった。親王族を喰らい魔力を増大させる。そのことに危機感を覚えた親王族の王政は吸血族を捕虜ではなく根絶することにした。その中で吸血族の食事には必ず親王族の血肉が必要、親王族を喰らわなければ死んでしまう、などと吸血族にまつわる噂は徐々に誤った噂としてひとり歩きしてしまった。
それがさらに吸血族の根絶を加速させてしまったのだ。吸血族も元は親王族と同じ魔族であるので普通の食事で生きることは可能なのにもかかわらずだ。
「これにより吸血族は滅んだとされていますがその生き残りがいたなんて」
レスペシオの震えた声により動揺となぜという疑いがねばりつくような不気味な空気となって周囲に伝染した。
「詳しいな、そこの人間」
だがシバたちに漂う異質なものを見るような空気をばっさり切り捨てるようにエラスティスが不敵な笑みを浮かべながら言い放った。
「その通りだ。親王族の奴らに幾度となく住む場所を襲われ同胞は次々と手に掛けられていった。何十年、何百年だ」
「レスペシオ、その吸血族というのはあんなに長生きなのか?」
エラスティスの話を聞きディエフはレスペシオに小声で尋ねた。
「はい、詳しくは記されていませんでしたが普通の魔族や人間よりも長命であると」
人間の寿命は約80年、対して魔族は長くて120年前後とされているが吸血族はさらにその倍以上であると推定されていた。
「だが私たちを追っていたのは親王族だけではないぞ」
「「「「えっ」」」」
「お前たち、人間もだ」
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「逃げなさい!早く!」
「しかし、母が!私は母を置いては行けない!」
足が潰され翼も失い徐々に広がる血潮の中で必死に叫ぶ母親を無視して少女は駆け寄った。
「だめよ!行きなさい!あなたは生きなさい!生きてこの血を絶やさないで!あなたは私の希望なの!だからなんとしてでも生きなければいけないの!」
「それは母も同じではないか!」
しかし少女は目に涙をためながら拒み母を担ごうとしていた。
少女が瀕死の母親を担ごうしていると急に少女の体が母親から引きはがされた。少女は自身の母親を見下ろす形で同じく逃げてきた同胞に担ぎ抱えられたのだ。
「おい!貴様!何をする!母を見殺しにするつもりか!」
するりと離れていった母親との指先のむなしさがさらに少女の怒りを加熱させた。その怒りの矛先は自身を担いで横たわる母親からどんどん遠ざかっていく同胞に向かい、小さな腕でその背中を思いきり叩き抵抗するという行動に行きついた。
「おいこらっ!暴れるな!」
どれだけ力を込めても所詮少女の殴打だ、同胞の大人の男性にはいくらやっても効果はなかった。
「いつかきっとあなたを助けてくれる味方が現れるわ。」
少女は同胞を殴打する手を止め小さくなっていく母親の方へ目を向けた。
「それまでこの不条理な世界を生き抜きなさい!小さな火はすぐに消えてしまうけど、大きな炎になるのは時間がかかるけど、その分あなたの炎(心)は誰にも消せないわ」
横たわる母親は苦痛で歪んだ表情を必死に堪えにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「大好きよ、エラスティス」
その直後、力尽きた母親の奥から怒号が響くと少女の視界は何かに覆われるように暗転した。少女の視界を覆うその手は確かに震えていた。




