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無能魔法士の復讐   作者: 宮田悠保
第二部
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80/93

第80話

(いつの間に、、)


 銀髪の女は自身の長剣を退けた細身の武器に目を見開いた。


(、、!あの時か、)


 彼女はシバがM1911を手放し光の粒子となって形が崩れていくのを視界の端で捉えていたが今になってそれが頭をよぎった。


 シバがM1911を手放し、現に今手にしている剣にも見える細身の武器を生成したと理解した。


 ギリギリで彼女の突きの軌道を変えたシバは彼女の側頭部に身体強化で足に紫色のオーラを纏わせ蹴りを入れた。


 シバの蹴りはまたしても複数の黒い羽根によって直撃は阻まれた。


 しかし身体強化によってその勢いは殺されることなく彼女を吹き飛ばした。


 彼女と距離が離れたシバは一気に治癒魔法で左腕を回復させた。


「にしても銃とはまた違ってなんか綺麗な形だな、、」

 左腕が回復してからシバは右手を前に出して嬉しそうに刀剣を見つめた。

 シバは王都の学院で異世界人の書いた本に興味を持ち異世界の武器である“銃”に惹かれたが他にシバの目に留まったものがあった。

 片側にしか刃のない刀身がやや反ってさらには鮮やかな波の模様があるそれに全体的な美しさを感じた。その美しさにシバは目を奪われた。

 それはその本の著者の故郷が誇る最強の剣で本の紹介には”日本刀”と書かれていた。

「でも、一回でこんなに歪むもんなのか?」

 シバの手にしている日本刀の刀身は若干歪んでいた。異世界最強の剣と呼び名のものがたった一回でこの調子ではと少々不安になるシバだった。

 そこでもう一度異世界人の残した本の日本刀についての内容を思い返した。


 たしかその本曰く刀剣の素材の玉鋼を何度も折り返す鍛錬によって強靭な刀身ができるんだったよな。

 さらにその異世界人は“日本刀が世界最強とうたわれるのは折れず、曲がらず、よく切れる、を追求したからである”と書いていたな。曲がらず切れるには鋼は硬くないといけないし折れないためには柔軟性があったほうがいいし、、矛盾してる気がするんだが、、

 でもその肝心な方法は書いてなかったんだよな、鍛錬っていう工程はイメージで何とかすっ飛ばせるけど。

 うーん、とりあえずよく切れるためには硬くないとな、折れないためには衝撃を吸収できればいいのか?なら内側をやや柔らかい鋼の軸にしてそれを鍛錬で作ったような硬い鋼で包めばいいんじゃね?お、なかなかいい感じ。

 


「お前は今までに見たこともないような武器を持っているみたいだが詰めが甘いようだな、」


 そこへ黒い羽根のガードによって全くダメージを受けた様子もなく戻ってきた彼女は涼し気な顔でシバの手にする歪んだ日本刀を見て言った。


「まあ、次作るのはいい感じになると思うぞ、」


 シバがそう言うと右手には魔法陣が展開され光の粒子が凝縮していった。


 だがその途中で彼女はシバとの距離を詰めてきた。日本刀を生成させる前に仕掛けてきたのだ。


 構造まで正確にイメージしているので生成にやや時間がかかっている。


 その隙に彼女は体を捻り一気に突きの構えになる。


 シバは細長く形を作る光の集合体をその場に残し彼女から距離を離そうと降下した。そしてシバは地に足をつけた。空中戦から地上戦へと持ち込んだ。


 やや遅れて彼女も地上へ降りた。


 地面に降り立った瞬間に彼女は全力で地を蹴った。


 早く完成されるのヤキモキと待つシバは浮足立つ気持ちを抑え左手に防壁を何重にも重ねて彼女の剣撃を迎え撃つ。


 まるで弓から発射されたような矢のような突きが右の肩口に一発、連続で左の脇腹に一発。


 初撃を左に回避すると次撃を回避するのはかなり厳しい。


 シバはこの連撃を回避するのではなく自身も防壁を突き出した。


 剣身が赤黒く光る彼女の長剣とシバの何枚も重ねられた防壁が衝突した。


 先程同様一層目と二層目の防壁は簡単に敗れたが三層目はひびが入るだけにとどまった。


 瞬時にシバは体を右にずらし前に突き出された彼女の手を掴む。


 彼女が反応するよりもシバの動き出しの方が速かった。


 そのままつかんだ手首を支点に流れるように脇腹めがけて膝を突き出した。


 彼女も腕を掴まれているため長剣による防御は不可能だと思われた。


 (決まった、)と内心シバは思ったが心の奥どこで妙な違和感も感じていた。


 その違和感は見事に的中した。


 またしても彼女の脇腹には何枚もの黒い羽根が壁となってシバの膝蹴りをガードした。


「またかよ、」


 シバは彼女から距離をとったが笑みを浮かべながらスッと腕を挙げたかと思うとすぐさまその腕を振り下ろした。


 シバの腕を振り下ろすのと同じタイミングで彼女の頭上からものすごい勢いでそれは落下した。


「!?」


 彼女は大きく身をひるがえし直撃を免れた。


 それまで彼女のいた位置には落下によって巻き起こった土煙が上がっていた。


 土煙の中で地面に突き刺さる影が揺らめいている。


 それは先ほどシバが生成していた日本刀だった。


 地面に対して垂直に突き刺さるその刀をシバは引き抜いた。


「あの位置からでも何ともないな、」


 刀を手にし切先まで目を通した。


 美しく刀身が反りまさしくそれは本にあった日本刀と酷似していた。


 シバは正中線に沿うように体の中心でその刀を中段に構える。


 銀髪の彼女はやや腰を落とし左手をやや前に突き出し体を右に捻り右手を体側にひきつける。地面と平行に真っ直ぐ直剣をシバに向ける。


 緊迫した空気が流れる中で妙な静けさに包まれた。




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