第78話
結界の発した眩い光が消えると捕らわれていた亜人や魔族、そしてアイ、エイミー、マーニはベルカの宿屋へと転移していた。
亜人や魔族たちは閉じていた目を恐る恐る開け全く別の場所にいることにまだ実感がわかないと言った様子で辺りを見渡した。
「もう大丈夫だよ、一応ここなら今のところ安全だから、」
マーニは慣れない様子の彼らに優しく言った。
「マーニさん、、」
転移で帰ってきたことに気が付いたベルカがマーニ達の元へやって来た。フォニアもその後をついて来ている。
「あ、あの、アデルフィーちゃんは、、」
身を寄せ合っている亜人や魔族たちの中にアデルフィーの姿が見えないと怯えたようにベルカは尋ねた。
「ああ、そのことなんだけど、、」
マーニはアデルフィー救出までを事細かに説明した。アデルフィーは無事見つかったこと、シバとアデルフィーは転移に間に合わなかったこと、そして今はシバがアデルフィーと一緒にいることを。
「アデちゃんは帰ってこないの、、?」
ベルカの隣で聞いていたフォニアが不安げに言った。
「大丈夫、少年が必ず連れ戻してくれるから、だからもう少し待っててね、」
マーニはフォニアの頭を優しくなでながら微笑みかけた。
その時だった。マーニの冒険者レベルを示すバンドから音が鳴り響いた。
「マーニさん至急ギルド支部まで来てください!緊急事態です!」
マーニがバンドに触れるとギルド支部の受付嬢、レスペシオの切羽詰まったような声が聞こえた。彼女の様子からかなりの非常事態だと分かる。
「分かったよ、」
マーニはバンドに向かって一言だけ発した。
「、、、どうするの?」
レスペシオとのやり取りを終えアイがマーニに尋ねた。
「とりあえず行ってくるよ、それまでこの子たちよろしくね、」
マーニはそう答えると宿屋を後にしギルド支部へと向かった。
「とりあえず、何か作りましょうか、」
ベルカは平静を装いそう言うと厨房に向かって行った。
それまで人間に捕らえられいきなり見ず知らずのアイたちに助けられこの宿屋に連れてこられたのだ、いまだに不安に思うのも無理はない。
ベルカの計らいでちょっとしたお菓子が振る舞われた。最初は亜人や魔族たちは出されたお菓子に手を出すのに顔を見合わせ戸惑っていた。
「ベルカお姉ちゃんのお菓子おいしいんだよ!」
フォニアが笑顔で一人の魔族の少女にお菓子を差し出した。
無垢な笑顔のフォニアと差し出されたお菓子を交互に見て魔族の少女は差し出されたお菓子をそっと手にてし口に運んだ。
「、、おいしい、」
一口かじってから魔族の少女は呟いた。それからは溢れ出る涙を押さえながら手にしたお菓子を頬張った。
それを見て他の亜人や魔族たちもベルカの作ったお菓子に手を伸ばした。
「エイミーお姉ちゃんたちも食べるのー、」
その様子を離れて見ていたエイミーたちにフォニアが手を挙げ呼んだ。
「はーい、今行くよー、」
エイミーは笑顔でそう言うと涙を流す者、満足げにお菓子を食べる者、とにかく一安心した彼らの輪へと入って行った。
「よかったですね、皆、安心できると感じてくれて、」
「、、、とりあえずはね、」
そんなエイミーの様子をアイとベルカは見ていたが唐突に二人の目の前に黒いサークルが出現した。
それが何なのか二人は一瞬で理解した。
中からは銀髪の少女が姿を現したからだ。
「アデルフィーちゃん!」
ベルカは中から出てきた銀髪の少女、アデルフィーを抱きしめた。その目には涙があふれている。
「ごめんなさい、私のせいで、ごめんなさい、、」
ベルカはアデルフィーが戻ってきたら笑顔で迎えようとフォニアと約束したがその約束は守れなかった。
アデルフィーの姿を見た瞬間自然と涙があふれてしまったのだ。
だがアデルフィーの様子が少しおかしいことにアイは気が付いた。
「、、、ベルカ待って、アデルフィーが何か言っている。」
アイに言われベルカはアデルフィーを強く抱きしめる力を弱めた。
「シバさんが、何者かと戦っています!」
開口一番にアデルフィーは言った。その慌てた一言にその場が一瞬凍った。
「、、、一体それはどういうこと?」
アイが疲弊した様子のアデルフィーに尋ねた。
「地下から地上に出たら建物が壊されていて、そしたら誰かが私たちに攻撃してきたんです。シバさんは私だけこのゲートで移動させて、、」
アデルフィーは声を震わせながらも必死に言った。
「そんな、まさか、、」
アデルフィーの言葉に信じられないと亜人や魔族たちはざわつきだした。
「その話、本当に本当みたいだよ、」
丁度その時宿屋の扉を開けてマーニが戻ってきた。
「アデルフィーちゃん無事に帰ってこれたんだね、」
マーニは中に入るなりアデルフィーに微笑みかけた。
「、、、どういうこと?」
アイがマーニに尋ねた。
「さっきギルド支部で緊急のクエストが出されたの、」
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『先ほど連絡があった。今日広場で行われていたオークション会場を何者かが襲った。』
マーニがギルド支部に着くなり支部局長のディエフが荒々しく言い放った。
『その場にいた者は全員殺され辺り一帯は壊滅状態だと言う。恐らく魔族もしくは魔物によるものと考えられる。そこで君たち冒険者レベル5以上のものを緊急招集したということだ。』
ディエフの言葉にその場にいた冒険者たちはブツブツと騒ぎ出した。
『今ここに超緊急クエスト魔族及び魔物の討伐を要請する!』
【超緊急クエスト】都市を脅かす敵対勢力の討伐
・緊急クエストよりも危険度は高いため冒険者レベル5以上の者が参加
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「ということなんだよ、」
マーニはギルド支部でのことをアイ、エイミー、ベルカに説明した。
「、、、アデルフィーを抱えていては満足に戦えない。」
「だからアデルフィーちゃんを戦闘から遠ざける意味も含めて一人だけ送ったのね、」
マーニの説明を聞いて二人は納得したように言った。
「とりあえずここは結界張っておくから、」
マーニはそう言うとアイとエイミーが戦った時のように腕を大きく広げて半透明の立方体を拡大させ宿屋をすっぽり覆う結界を展開した。
「二人も来るんでしょ?」
マーニはアイとエイミーにそう言うと二人はうなずいた。
その反応にマーニは笑みをこぼし三人は結界を出て再び広場の方へ向かった。
シバは魔弾が放たれた方を見上げた。
視線の先には何者かがいるのを確認できた。
シバがその者と対峙して真っ先に目に移ったのはその眩いほど目麗しい銀髪だった。
黒を基調とした貴族風のドレスと膝上ほどのスカートに身を包むその女性だが黒いマントと銀髪が風にたなびくその出で立ちはさながら軍隊の将校を思わせる。
背中には漆黒の翼が生えており”彼女”の銀色の瞳は真っ直ぐシバに向けられていた。
そして”彼女”は言った。
「私の妹を返せ、、人間、」




