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無能魔法士の復讐   作者: 宮田悠保
第二部
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第72話

「なんもないな、、」

 シバは階段を上り呟いた。

 シバが階段を上ると開けたフロアがあった。それよりも上の階の繋がる階段はなくシバの今いる階で行き止まりだった。だが下の階と同様に左右に通路が広がっていた。

「ま、適当に左だな、」

 シバは左の通路を選択し進んだ。通路には扉などは一切見当たらずただ通路が伸びているだけだった。しばらく進むと通路が左右に分かれていた。

「左だな、」

 シバは左に曲がりさらに奥へと進んだ。

「また分かれ道かよ、、」

 再び通路は左右に分かれていた。

(さっきは左だったし次は右に行くか?)

 今度は右の通路を選択した。シバが右に曲がるとすぐに右手に何かが見えたが薄暗いため何かよく見えない。

 シバが進むとそこには階段があった。上には繋がっておらず下に降りるためのものだと思われる。

「なんだか迷路みたいだな、、」

 シバは階段を降りながらややうんざりした様子で言った。

 それから何度も分かれ道に出くわす度にため息が出てきた。何の変哲もない通路をただひたすら彷徨うように進んでいった。階段も登ったり降りたりもあった。

 次第に緊張感がなくなりシバの気も緩んでいった。

 もう何度目か分からないが再び左右の分かれ道に出くわした。投げやりになりながらほぼ無意識のままシバは左に曲がった。

 だが曲がり角で人の影が動いた。

(しまった!)

 それを認識したシバだったがすでに遅くその影の正体と衝突した。


 それでもシバはその相手と衝突した瞬間に相手の背後に周り腕をつかんだ。


 さらに足を払いもう片方の手で首を掴みそのまま地面に押し倒して制圧した。


(こう何度も同じような光景が続いたり何度も彷徨ってたりしてつい気が緩んだな、、って、)


「おまえ、、」


 シバがオークション関係者だと思って制圧したと思ったら見たことのある長めの赤髪の持ち主だった。


「ちょっと!いい加減放しなさいよ!」

 

 彼女はシバの方を見ながら強い口調でそう言った。



 エイミーがマーニに言われたように階段を降りると左右に伸びる通路のあるフロアに出た。階段はこれ以上進めないので彼女は右の通路に進んだ。

 等間隔に心細く灯された明かりで薄暗い通路を歩いていると再び分かれ道に出くわした。

「また?迷路みたいね、」

 エイミーは左に曲がった。左に曲がると上へと続く階段を目にした。なんとなく階段を上ったエイミーだったがその後何度も分かれ道に出くわしては右に、左にと交互に進んでいった。

「もしかしたら他の皆も同じような感じなのかな、、」

 エイミーが何気なくそれまでと同じように右の角を曲がったときだった。

 曲がった瞬間に曲がった先から誰かにぶつかった。


 瞬時に距離をとろうとしたが目の前の相手に背後をとられてしまった。


 それからは流れるような素早さで捕まれた腕を背中に回された。


 それとほぼ同時にうなじの部分を掴まれ足を払われて体勢を崩された。


 床に押さえつけられ肩をキメられたエイミーは顔を歪めながらも相手の顔を確認した。


 やられたと焦る気持ちで心臓がバクバクと波打っていたが相手の顔を見たとたんに安堵した。


「おまえ、、」


 その相手はエイミーに気が付くもなかなか手を離さなかった。


「ちょっと!いい加減にしなさいよ!」


 エイミーは見知った彼に一喝した。


「ああ、すまん、エイミー、」

 

 そう言ってエイミーの腕を離し床に押さえつけられたエイミーに手を差し出したのはシバだった。


「確かに私が注意を怠っていたのもあるけどすぐ気づきなさいよね、」

 シバとエイミーが曲がり角で鉢合わせしてから二人は一緒に歩いていた。

「すまん、俺も気が滅入ってて気抜いてたからさ、」

 ムスッとしながら言うエイミーに苦笑いを浮かべながらシバは軽く謝った。

 そんなこんなで二人で歩いているとふとエイミーがシバに話しかけた。

「てかさ、シバの魔力探知でアデルフィーちゃんを探せなくても他の亜人や魔族の魔力は探知できるんじゃないの?」

 シバの魔力探知つまり索敵魔法は人間の持つ正の魔力も魔族の持つ負の魔力もどちらも探知できる。

 さらにシバの索敵魔法はシバのオリジナルの魔法で魔法そのものを感知できるためたとえ隠蔽魔法で姿を隠してもその隠蔽魔法自体も対象者の魔力として感知されるのだ。

「いやそれが無理なんだよ、俺の索敵魔法でもダメだった。」

 シバの推測としては亜人や魔族を捕えている首輪が彼らの魔力を相殺しているため魔力が感知できないのではないかと言うのだ。

「じゃあ、あんまりあてにならないのね、いい加減早くしないと、、」

 エイミーがそう言い何気なく分かれ道を右に曲がったら目の前の扉が視界に入った。

「ねえ!扉よ!」

「待て、一応中に誰かいないか確認しよう、」

 すぐさま扉に駆け寄り中に入ろうとするエイミーをシバが引き止めた。そしてシバは少しだけ扉を開けその隙間から中の様子を伺った。


「「「あ“あ”―――!!」」


「さっさと働け!!ノルマを達成させろ!!」


 少し開いた扉の隙間から聞こえてくるのは悲痛に苦しむ叫び声と野太い声の男の怒号だった。

「ちょっと、なによ、ここ、、」

 中から聞こえてくる声にエイミーは声を震わせた。シバも驚きを隠せないと言った表情だ。


「ここはさっき話してた奴隷の場所だ、」


 この扉の中は以前マーニに連れられて来た奴隷たちが働かされている地下の施設だった。

 もう少し扉を開き中の様子を伺うエイミーは目を疑う光景に目を見開いた。

「そ、そんな、、」

 亜人や魔族から魔力を搾取する機械、違法薬物の栽培、話に聞いたものが自分の目の前で実際に行われていることにエイミーは言葉が出なかった。

「ねえ、腕や、足が、ない人たちは、な、なに、?」

 エイミーは亜人や魔族の中に片腕や片脚がない者たちを目にしシバに震える声で尋ねた。

「、、あれはノルマを達成できなかったりミスを犯したりしたら、切り落とされるんだ、、」

 シバは苦虫を嚙み潰したような表情で言った。


「エイミー、これが現実だ。奴らは平気でこういうことをしているんだ、」


 シバの冷たい言葉と目の前に広がる光景がエイミーの胸を強くえぐった。



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