第71話
広場は多くの人でごった返していた。よく見ると各々が数字の書かれた札を手にしている。
ステージ中央には価値の高そうな置物が置かれていた。その横には黒服の男が立っておりなにやらしゃべっていた。
「えー、ではでは大銀貨三枚からスタートです!」
黒服の男がそう言うと数字の書かれた札をあげ一斉にオークションが始まった。
数字の書かれた札を挙げた入札者たちが少しづつ金額を上げていった。どんどん金額は上がっていき最終的にシバたちがやって来た時に出された置物は中金貨五枚で買い取られた。落札された置物はステージのわきで落札した者に渡された。
「どうやらここで間違いなさそうね、、見て!ステージ裏に地下につながる通路があるわよ!」
上空からエイミーがステージの方を指差して言った。
ステージの奥の壁の真ん中にある扉が開かれ中から次の商品が運ばれてきた。どうやら次は大きな壺のようだ。さらに入れ替わるようにして落札された置物を運んだであろう空の台車もその扉を通りステージ裏まで運ばれていった。
上空から見るとステージの裏にはさらに小さな倉庫の様な建物があった。入り口にガタイのいい黒服の男が立っており台車を押す別の黒服の男がその中へと入っていった。
「あそこが地下に繋がっているみたいだね、地下の魔族や亜人たちのとは別の入り口だね、」
マーニも落札を控えた商品が置かれているであろう地下への入り口を見て言った。
「よし、じゃあ行くか、」
そう言うとシバは地下への入り口に向かって降りて行った。
「ちょっと待ちなさいよ、」
下降しようとするシバをエイミーが引き止めた。
「そのまま侵入したら入り口の男や次の商品を運んでくる人に見つかるじゃない!」
「それがどうした?侵入する、見つかる、倒す、どこか問題でも?」
間違っていることなんて一つもないと言った表情でシバはさらっと言った。
「さっきマーニさんが言ってたじゃない!慎重に行くべきだって!」
なんとか説得しようとエイミーは言った。
「どっちみち中の亜人や魔族を管理してる奴を倒すんだから変わらないだろ、」
シバはやれやれと呆れたようにエイミーに言い返した。
「でも、そこまで慎重になりすぎなくてもいいみたいだよ、」
エイミーとシバがいがみ合っているときにマーニがステージ裏を見て言った。
ステージ裏ではさらに次の商品が待機していた。その横には黒服の男がいる。
「ほら次の商品を運ぶ男、さっき空の台車を中に運んだ男だよ、」
マーニが指摘したのは商品の出し入れに関わる人員が二名で地下への入り口の警備をするものが一名の計三名ではないかということだった。
「じゃあ落札されて購入者に渡されているときなら一人だけを何とかすればばれずに侵入できそうね、」
次の商品がステージに運ばれている時は前の落札された商品を受け渡しているため実質地下への入り口には一人しか人がいないということになる。エイミーは得意げに言った。
「、、、たまたま今回だけ同じだった可能性もある。」
得意げな顔でシバにドヤ顔するエイミーを尻目にアイが言った。
アイの指摘も受け何回か商品のやり取りを見たがやはりマーニの指摘したように商品の出し入れに関わっているのは同じ二名だった。
「ならあの地下の入り口に立ってるいかにも屈強な感じの男を倒せばいいんだな、」
シバはそう確認すると再び警備の男を倒そうと向かって行った。
「だから待ちなさいって!」
だが再びエイミーが引き止めた。
「一人だけなんだから穏便に済ませる方法なんていくらでもあるでしょうが、例えば眠らせるとか、」
催眠魔法で警備の男を眠らせて侵入を試みるべきだとエイミーは提案した。
「まあ、今回はエイミーちゃんの案を採用したほうがまだいいかもね、」
「、、、中に侵入した者がいると思われにくいのは確かに催眠魔法ね。あくまで妥協案だけれど。」
もし警備の男を物理的に気絶させて中に侵入した場合外部からの者の犯行とすぐに思われるが単なる催眠魔法で眠らされていればすぐに外部の者の犯行とは思われにくいというのだ。
エイミーの提案にマーニとアイも単純に警備の男を襲うよりは催眠魔法で眠らせた方がまだましと賛同した。だがあくまで妥協だ。
シバもめんどくさそうに渋々了承した。
「、、、私が催眠魔法をする。」
四人が警備の男にばれないようにゆっくりと下降していく中でアイはその男に手を向けた。
ステージ裏で待機していた商品がステージに出されたタイミングでアイの催眠魔法が発動し警備の男は全身の力が抜けたように崩れ落ちた。
その瞬間シバたち四人は地下への入り口を通ることに成功した。入り口を抜けるとゆるい傾斜で下へ続いていた。
「おい!どうした!、、寝てんのか、、?」
空の台車を運んでステージから戻ってきた黒服の男は眠っている警備の男に駆け寄った。
「、、、解除。」
中からアイがそう言うと警備の男の催眠魔法が切れ目を覚ました。
「あれ、俺、何してた、、?」
警備の男はキョトンとした顔で辺りを見渡した。
「ずっと立ちっぱなしで疲れたのか?あと少しの辛抱だ。第一部が終われば第二部は地下だから立ちっぱなしじゃないだろ?」
駆け寄った男は警備の男に肩を貸し立ち上がらせながらそう言った。
「そうだな、あと少しだ、すまんな、」
警備の男は立ち上がった。
台車を運ぶ男が中に入って来たのでシバたちは隠蔽魔法で姿を隠し男が通過するのを待った。
「どうやらうまく言ったみたいだね、」
隠蔽魔法を解いたマーニは言った。
「てかあんた催眠魔法の微調節なんてできるのね、」
感心したようにエイミーは言った。
「、、、あなたと比べられるなんてとても不愉快だわ。」
アイはわざとらしく不快感をあらわにしながら言った。
「そこまで言わなくてもいいじゃない!褒めて損したわ!」
エイミーはアイをキィッと睨んだがアイは余裕の表情でエイミーをあしらった。
「ほらほらまた次の男も来るんだから急ぐよ、」
二人の間に割って入ったマーニがそう言うとマーニを先頭に下へと向かって行った。
地下へと続く通路は等間隔で明かりが灯されていたが薄暗くそして肌寒かった。途中商品を運ぶ男と鉢合わせになりそうになったが隠蔽魔法で姿を隠し何度かやり過ごした。
地下通路を下っていくと踊り場の様なやや開けた空間に出た。そこから左右に通路が伸びている。さらに正面には上と下へ続く折り返し階段が、その横には扉があった。
するとその扉が開き中からオークションに出されるであろう置物を運ぶ男が出てきた。皆瞬時に隠蔽魔法で姿を消したがどうやら階段のわきにある扉は商品の保管部屋の扉だったようだ。
「これなら何人いるかとか関係なく最初から隠蔽魔法で行けばよかったね、」
マーニは苦笑しながら言った。
「とりあえずあの部屋見てみるか、」
シバはそう言うと男が出てきた部屋に入ってアデルフィーがいるか確認した。
だがその部屋には古い置物や壺、甲冑などしか置いておらずアデルフィーはおろか他の亜人、魔族はいなかった。
「私たちが思っていたよりもこの地下、と言うより施設は広いから手分けして探そう、」
マーニはそう言うと三人に指示を出した。アイが左の通路を、マーニが右の通路を、シバが上の階を、エイミーが下の階を捜索することになった。
「アデルフィーちゃんや亜人や魔人が捕らえられている場所を見つけたら念話で各自報告すること、」
マーニの呼びかけで四人はそれぞれの場所の捜索に向かった。




