第54話
マーニの転移によって宿屋に戻ってからベルカは夕食の準備をはじめ、シバはエイミーを二階の部屋に運んだ。他の皆も各々自由に過ごし夕食を迎えた。
「マーニお姉ちゃん、またお空行きたいの。」
「私も行きたいです。」
フォニアとアデルフィーがマーニに言った。
「お、いつでもいいよーその時はシバお兄ちゃんも呼んで四人で行きましょーねー。」
マーニがあやすように言った。
「やったぁ!」
フォニアとアデルフィーは手を取り合って喜んだ。フォニアに至ってはしっぽを大きく振っているから相当うれしいようだ。
そこへ二階からバタバタと慌ただしくエイミーが降りてきた。
アイとの戦闘後シバの治癒魔法により傷口は完治したもののまだ顔色はよいとは言えない状態だった。それに比べると今のエイミーの顔色は血色が良くむしろ若干顔が赤くなぜか火照っているようにも見える。
「エイミーさんそんなに慌てなくてもちゃんとエイミーさんの分の夕食もありますから。」
ベルカが二階から降りてきたエイミーに気づき厨房へ向かった。
しかし、エイミーはベルカに目もくれずシバたちが座るテーブルに一直線に向かう。アイたちとの談笑するシバもエイミーがやって来たことに気づき声をかけた。
「お、エイミー起きたか。調子はどうだ?顔色も良くなった、、お前顔真っ赤だぞ、まさか、」
シバは席を立ちエイミーの肩を抱き寄せ彼女の額に手を当てた。
「ちょっ!シ、シバ、い、いきなり何してんのよっ!」
いきなりのシバの行動にエイミーの顔はさらに赤くなる。トクンと心臓が跳ね上がる。
「顔が赤いから熱でもあるのかと思ったけど少し熱いな、まだ寝てた方がいいんじゃないか?」
シバはエイミーの頬が赤く火照った様子から熱でもあるのかと思ったようだったのだ。アイとの戦闘で異常なまでの魔力を限界まで使い切ったためその副作用のようなものがあるのだと学院に居た頃習った気がしたのだ。あくまでシバのあやふやな記憶による推測だが。
「ねー、アイちゃんあれ絶対熱じゃないよねー?」
「、、、シバに心配してもらいたいからって仮病を使うなんて。」
どうやらマーニとアイはなぜエイミーの顔が赤く火照っているかなんとなく予想がついているらしい。いや彼女たちの口ぶりから確実に熱はないと断言しているようなものだ。
アイとマーニの会話を聞いてシバは「そうか?」と言ってエイミーの額から手を離し再び席に着いた。
「違っ!これは熱じゃなくて、、」
近かったシバとの距離が離れややシュンとしたエイミーであったが再燃したように神妙な面持ちでシバに詰め寄った。若干まだ顔は赤い。
「シバ!あんた私に治癒魔法したのよね?ベッドに運んだのもシバよね?」
エイミーが腰に手を当て疑い深く言った。
「ああ、俺だけど何かまずいことでもあったのか?」
シバは正直に淡々と答える。
「じゃ、じゃあ、この服も、その、シバが、?」
エイミーは自身が来ている服に触れながら緊張した様子でもとい恥ずかしがっている様子でシバに尋ねた。
「ああ、それも俺だが?その服がどうかしたのか?気に入らなかったのか?」
きっぱりとシバは答えた。
「な、な、な、なんてことしてくれてんのよぉぉぉ!」
エイミーの顔が見る見るうちに赤みを増していった。
「じゃあ、じゃあ見たのね!見たんでしょ!それにどさくさに紛れて触ったかも!」
エイミーはまくしたてるように見ただの触っただの何やら訳の分からないことを口にした。周りのシバたちはエイミーが何を言っているのか全く分からなかった。いや、アイとマーニには理解できたようだ。
「しょ、正直に言いなさいよ!別に、シバなら、見られても、仕方ないって言うか、そ、その嫌じゃないかもだけど、、」
ぼそぼそと縮こまるように言うエイミーだがシバには聞き取れた様子はない。逆にアイとマーニはなぜだかはっきりと聞き取れたようである。
「で、でも、ちゃんと私も意識があるときの方が、いいなって、、」
恥じらいを見せながらエイミーは途切れ途切れに言った。
「あははははっ!エイミーちゃんおっかしーっ!」
突然マーニが腹を抱えて笑い出した。
「、、、さすがは赤髪勘違い。」
クスッと小さく笑いアイも言った。
「な、なによ!二人して、、」
アイとマーニが自分を笑うのでムッとした様子でエイミーが言った。
「エイミーちゃん、あなたに治癒魔法をしてベッドまで運んだのは少年だよ、」
「、、、体を拭き、別の服に着替えさせたのはベルカ。シバじゃない。」
「へ?」
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エイミーは目を覚ました時、体の倦怠感はなく傷も完治していたのでシバが治癒魔法を施してくれたと理解した。と同時に自分の着ている服が変わっていることに気が付いた。やや露出の多い村の衣装ではなくクリーム色のワンピースだ。
(どうして服が?そうかアイとの戦いで汚れたから、でも誰が?まさか!)
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そう、エイミーはシバに服を着替えさせてもらったと勘違いしていたのだ。自分は意識のない状態だからベッドに運んだままシバがやったと思ったのだ。さらに言えば目の前に意識のない女性が横たわっていればそう言うことをされたと思ってしまったのだ。
そう思ってしまったら実際にそうである可能性は否定できなくなってしまう。故にエイミーは慌ててシバのもとへ行き事情聴取に及んだのだ。
『じゃ、じゃあ、この服も、その、シバが、?』
『ああ、それも俺だが?その服がどうかしたのか?気に入らなかったのか?』
結果がこれである。淡々と答えるシバが逆に怪しい。人は何か疑い深く考えるとなぜか答えがそうなるように思考してしまうと言うがそれは魔族でも同じだったようだ。
ということは、エイミーは自分が眠っている間にシバに裸を見られ、もしかしたら触られた可能性があると確信してしまったのだ。思い込みとは何とも恐ろしい。
「だからエイミーちゃんの思ってるようなことはないよ、“残念だけど”」
ニヤニヤしながらマーニが言った。
「、、、普段の妄想が現実になったと勘違いするなんて、赤髪淫乱女。」
冷ややかな目をエイミーに向けアイは言った。
「ん?二人ともどーしたんだ?残念?淫乱?」
シバは未だに二人が何を言っているのか理解できていない。
「いやっ、べつになんでもないからっ!」
焦った様子でエイミーは誤魔化そうとした。だがアイとマーニだ、手加減などするはずがない。
「だからー、エイミーちゃんは服が変わってるから少年に変えてもらったと思ったんだよ。ってことは少年がエイミーちゃんの裸を舐め回すように見たと勘違いしたんだよ。」
「、、、だから顔は赤く火照った。それでシバはエイミーに熱があると感じたの。」
二人はやはり容赦なかった。だがまだまだこんなもんではなかった。
「少年が言った服はエイミーちゃんの服がボロボロだったから適当に買ってきたんだよ。」
マーニがニヤニヤしながら言った。
「そうだぞー、女の人の服なんて初めて買ったからな、結構苦労したのに、変な勘違いしやがって、」
あきれたようにシバが肩を落として言った。
「、、、挙句の果てにシバになら見られてもいいと。」
「で、でも、ちゃんと私も意識があるときの方が、いいなって、、」
マーニが胸元を手で覆い頬を赤らめエイミーの真似をしながらとどめを刺した。
「皆さんは何を話してるんですか?」
「さぁー、でもいつもこんな感じなの!」
「はいはい、その辺にしといてください、エイミーさんの分の夕食も持ってきましたし、、」
ベルカが厨房からエイミーの分の夕食を運んできた。
「それに、、エイミーさんのライフはもうゼロですよ。」
フフッと優しく微笑みながらベルカは言った。
「あんたたち、いいかげんにしなさいよぉぉぉ!!」
「いい加減にするのはお前だろ、」
「そうだよねぇー」
「、、、ウザい。」
今日も今日とて相変わらずのシバたちであった。そして今夜も誰がシバと同じベッドで眠るのか争奪戦が繰り広げられるのであったがシバはまだそれを知らない。




