第52話
「そ、そんな、、」
(早くこの鎖から抜け出さなくては、、)
驚愕を隠しきれないエイミーだったが瞬時に鎖から抜け出すことを考えた。
本能的に何が一番危険なのか感じ取った。故に鎖からの脱出することを優先的に選択できた。だが現状況で本能のみに頼ったことは悪手だった。
アイの巨大な魔弾から回避するため思い切り魔力を込め鎖から抜け出そうとした。
再び電撃が全身を襲った。
「あぁぁぁ!」
エイミーは我に返った。この鎖の特性を。魔力を込めた分だけ強く電撃は作用する。
圧倒的脅威の出現により判断を誤った。
だがこの鎖から抜け出さなければ頭上の圧倒的脅威を避けることはできない。生身の力では鎖から抜け出せない。あの巨大な魔弾を受けたらさすがに自己再生もできない可能性もある、最悪の場合、死ぬ可能性も。
考えても負のループを繰り返すのみだ。エイミーにはもはや成す術もなく万事休すか。
「!、まさか!鎖で捕らえることもブラフ、本当の狙いはこっちだったの!?」
万策尽きたエイミーの敗北。敗北つまり死、それはエイミー自身が一番理解していることだった。
(次元が違いすぎる、勝てる見込みが、ない、、)
『本当にそうなの?』
『あなたは強くなったんでしょ?』
『生きて未来を、世界を変えるんでしょ?』
彼女―エイミーの背中を押した彼女。顔も名前も知らない彼女。
(でも、もう何もできないよ、打つ手がない、、)
『それはあなたが力を出し切っていないからじゃないの?』
『打つ手がない?ならせめて最後まで抗ってみなよ、何もしないで、何もしようとしないで、無理とか、私にはできないとか馬鹿じゃないの?』
『それは強者とは言わない。いくら魔力が多くても自己再生能力に長けていても自分よりも強者を前にして、危機的状況を前にして、抗うことさえしない者は強者じゃない。』
『たとえ魔力が壊滅的に低くても、どんなに無様に見られても、周りから無能と罵られ馬鹿にされても、揺るぎない闘志を持って自己を高めようとする者、それが強者と呼ばれるべき者。』
『思いっきり放出してみなよ。』
(でも鎖が、、)
『それがどうしたの?自己再生があるじゃない、自分を信じなよ。自分を信じることも強者には必要な要素だよ。』
(自分を信じる、、)
『そう、頑張って!私はいつもあなたの側にいるから。』
(あなたは誰なの?)
『私は私、他の誰でもないわ。そんなことより早くしないと”あれ”まともに食らっちゃうよ。』
(そうだ!早くしないと!とにかく二度もありがとう、)
エイミーは呼吸を整えた。ゆっくりと息を吐く。自分の奥に眠る力と呼べるものを呼び覚ますかのように、自分を信じて。
エイミーの体からほんのりと黒いオーラがにじみ出てた。
オーラは背中周辺に集まり背中から触腕を模したオーラが数束放出された。
「くうぅぅ!」
先程よりもさらに強力な電撃がエイミーを襲った。しかしそれでもエイミーは抵抗した。
触腕のオーラが鞭のようにしなる。
そのたびにエイミーは電撃に苦しめられるも抗い続けた。
やがて鋭くうねる触腕のオーラが次々とエイミーを捕縛している鎖を断ち切った。
エイミーは電撃を受け意識失いかけるも背中から広がる黒いオーラがエイミーを包み込み自己再生を活性化させる。
「、、、まさかここまでとは。けれどもう遅い。」
アイは頭上の大玉の魔弾に向けた腕を振り下ろした。
禍々しい大玉の魔弾が刺々しく殺気立ちながらエイミーに襲い掛かる。
黒いオーラにより全回復したエイミーは自身に向かってくる大玉の魔弾を見て身の毛がよだつ感覚がするのを感じながらも自身を奮い立たせる。
背中から先ほどよりも一回り太い触腕のオーラが放出された。
四本の触腕のオーラが背中から迫りくる大玉の魔弾に向けられた。臨戦態勢だ。
全身を身体強化により紫色のオーラが包み込む。
エイミーの背中から放出されている黒いオーラが一斉に目の前の脅威めがけて伸びていった。
大玉の魔弾と四本の触腕のオーラが激突した。
四本の触腕のオーラは等間隔に広がり四点で大玉の魔弾を受け止める。
圧力と圧力の押し合いが続いた。
エイミーは魔力を放出し続ける。気を抜いた瞬間押しつぶされる。
現段階でエイミーの触腕のオーラが押されるということは起きていない。ほぼほぼ互角だ。
だが一瞬、ほんの一瞬、触腕のオーラが大玉の魔弾を押し返したように見えた。
「、、、!」
アイの一瞬の隙をエイミーは見逃さなかった。
四本の触腕のオーラが一つに束なりドリルのように回転し一点を突いた。
アイもすかさず力を込めるがエイミーの方が速かった。
黒いオーラが徐々に大玉の魔弾を抉っていく。双方が押す圧力により大玉の魔弾は歪み変形していく。
やがてドリルのように回転する触腕のオーラが大玉の魔弾を貫通してアイへと一直線に伸びていった。
再び四本に分裂した触腕のオーラがアイを捉える。
触腕が貫通した大玉の魔弾は両側からの圧力に耐えきれず大きく破裂した。
爆風と爆煙が広がる中触腕のオーラはアイに向かって伸びる。
アイは自身の攻撃が突破されても何食わぬ顔でエイミーに向かって加速した。
意思を持ったようにうねる触腕のオーラが自身を捉えているにも関わらずアイはエイミーを見据えている。
鋭く尖った触腕のオーラを高速で移動し、かわしながらエイミーに向かってさらに加速した。
弾丸のごとく爆煙の中を高速で突っ切り爆煙が四方に散る。
エイミーが無意識的に瞬きをし瞼を上げるとすでに目の前にはアイの姿があった。
だがすぐの前にいるアイは何もしてこない。
「ガハァッ、、」
エイミーは突如胸に熱を感じた。次第に痛みが襲う。
体を見ると自身の体には短剣が柄まで深く刺さっていた。その短剣を握る手は、アイだった。
アイは一瞬でエイミーの距離を詰めた後何もしてこなかったのではない、“すでに短剣でエイミー胸を貫いていた”のだ。




