第50話
剣が自信を貫いてもなおエイミーは苦痛に耐えながらもアイを挑発するように笑みを浮かべた。
「ハァ、ハァ、私は諦めない、、」
グサッ、
「グァッ!ぁあ“、あぁぁ、人間と魔族の共存も、あ、あなたの、、」
グサッ、
「カハァッ!、ハァ、ハァ、あ、あなたの大好きな、シバも、、」
エイミーの口から血が吐き出される。
「わ、私も、、大好き、だから、、」
グサッ、
四本目の剣がエイミーの腹部を貫いた。血だまりは広がりだらりと下ろされた手を伝って血が何度も血潮に波紋を生み出す。エイミーの意識も遠のいていく。
「私、は、、無理でも、、可能性が、低くても、、望みは、捨てない、、」
「、、、そう。」
残り一本の剣の魔法陣が光りエイミーに向かう。だがアイの表情は暗い。
「それに、、」
エイミーの口が再び動きアイは剣を止めた。
「そ、それに、たとえ私が死んでも、魔族と人間の共存を、望む者は、必ず現れる。わ、私は信じてるから。魔族と人間が共存する世界が幸せだって、、」
「、、、あなたの気持ちは分かった。エイミー、あなたを心から尊敬する。そこまで自分の意思を貫いていくのは正直にすごいと思う。」
再びアイは残る剣に魔力を注いだ。
「、、、あなたはうるさくて勘違いばっかりであと胸が大きくてイライラした。でもあなたの家族や友人を思う気持ち、フォニアの家族に対する気持ちを知っている。あなたはとても素直で優しくて誰かのためを思って行動できる素敵な女性。」
「な、なによ、最後だからって、急に、、」
エイミーは嬉しかった。いつも邪険にされるアイに自分を認めてもらえて。辛くて苦しくて自分はもう死ぬんだと分かっていても笑みがこぼれてしまう。
笑みと同時に涙も頬を伝って流れ落ちた。
「、、、けれどあなたの、考えには、、賛同できない。」
剣がエイミーに向かって放たれた。
ああ、私は死ぬのか、そういえば前にもこんなことがあったな。村のみんなを殺した学院の人間に復讐だって言って一人で特攻したっけな。あの時はシバとアイに助けてもらったな。目の前の剣が私の体を貫いたら本当に死ぬんだよね。あの時みたいにシバは、誰も助けてくれない。せっかくアイに認めてもらったのにここで死んじゃうのか、嫌だな。魔族と人間が共存して争いのない世界になったときに私もシバたちと一緒に居たいな。ああ、死にたくないよ、もっとみんなと一緒に居たいよ。なんでいつも私は、、
『それはあなたが弱いからよ。』
目の前に誰かがいる。姿ははっきりと見えないけど。でも薄暗い部屋に私が横たわっている。
『弱いから誰かに助けてもらう。』
目の前のたぶん、女性、は横たわる私に言った。
『弱いから何もできない。』
そう、私は弱い。痛いほどよくわかってるわ。さっきだって全くアイに歯が立たなかった。
『強くなりたいの?』
強くなったら私にもできるかな?
『強くなればあなたは何でもできる。』
そしたら死なないでこれからもみんなとシバやアイたちと一緒に居られるかな。
『今を生きるのならばこれからの未来はどうだってできる。』
生きる?
『そう、あなたが生きてさえいれば未来は変えることができる。そのためには、、』
私は強くなる、ここで死ぬわけにはいかない。
『あなただって強くなれるの、誰だって強くなる素質はあるものよ。』
『さあ、立って、行きなさい。』
私は死なない、死んでしまったら本当に夢物語で終わってしまう。
目の前にいる女性はいったい誰なんだろう?
『私は私よ。他の何者でもないわ。それよりほら。』
彼女は私に手を差し伸べた。私はその手を取り立ち上がった。
その時薄暗い部屋は一気に明るくなった。真っ白に照らされた浜辺が広がっている。
ここは?
彼女が急に私の背中を押した。
『さあ、行っておいで。この先のあなたの願う未来に向かって。』
最後に一度振り返り彼女を見つめた。
彼女は笑顔でたたずんでいる。結局彼女の顔は見えなかったし彼女が誰なのかはわからなかった。
でも彼女は今までもそしてこれからも私のことを見守ってくれるのだろうと感じる。
そう思うと安心して前に進める。歩き出そう、強くなってそして私の願いをかなえるために。
私は水平線の先に広がる光に向かって吸い込まれるように大きく一歩を踏みだした。
剣がエイミーを貫くその瞬間エイミーから強い光が発せられた。
「、、、!」
閃光が剣を包みこむと剣は砂のように崩れ散った。
アイはとっさにエイミーから距離をとった。
エイミーは仰向けのまま光に包まれ上昇していった。
しかしエイミーを包む眩い光は突然消えた。
光が消えたかと思うとエイミーの腹部の傷口から黒いオーラのようなものが何本も束になって噴き出し今度はそのオーラがエイミーを覆った。
その黒いオーラによってエイミーの傷口が修復していく。
「、、、自己再生が活性化している!?」
全ての傷が完璧に修復したエイミーは意識を取り戻した。
「私は言ったわよね?アイ、私は死なないって!」
先程までの体のダメージが嘘であったかのように調子よくエイミーは笑みを浮かべながらアイを見下ろす形で言った。
「、、、そうね、正直驚きが隠せないわ。」
アイも上空にいるエイミーにやや笑み浮かべて言い返した。
「その割には全然驚いてるようには見えないけど。むしろ嬉しいとか?」
「、、、確かに、今はなぜだか気分がいいわね。」
「ほんとになんでだろうね、私も今までで最高の気分だわっ!」
エイミーはアイに向かって行った。アイも笑みを浮かべながらエイミーに向かって行った。
エイミーを迎え撃つのではなく自分からエイミーに攻撃を仕掛けに行ったのだ。
それはアイがエイミーは今までとは何か違うと感じたからだろう。
シバやマーニにも同じことがいえるだろう。あの状態から、まさかエイミーが復活すると誰も想像できなかった。
異様な閃光、そして黒いオーラによる自己再生の活性化。本来なら自己再生でも修復しきれないほどの大ダメージを一瞬で治すほどの力。
明らかに今までのエイミーとは違う。
「マーニさん、あれって、、」
シバはマーニに尋ねた。
「多分少年が思ってることと同じことを考えているよ、」
マーニは驚いた様子だったが笑みを浮かべていた。
「じゃあ、あれは、黒魔法が発動したってこと、、」
「どうだろうね、確信はないけど。正直驚きを隠せないんだけどなぜかすごくワクワクするんだよ、、」
エイミーを見つめるマーニの表情は困惑と興奮に満ちていた。
それ以降二人は何も言わなかった。シバとマーニはじっと戦況を見つめていた。




