第49話
『ぼくにできるかなぁ?』
四角いテーブルを囲んで話す幼き日のシバとその家族の光景が浮かんできた。
『父さんの息子だ、できないことはない!』
『あらあら、シバは母さん似だからあなたより立派になりますよ、』
『そんな、母さん、たまには父親にもいい格好させてくれよ、、』
仲睦まじくテーブルをはさんでシバの正面に座る父親と母親が話す様子が見える。相変わらずシバの父親はシバの母親には敵わないようだ。
シバの横にはもう一人シバより年上と思しき少女が父親と母親のやり取りを見て笑っている。目元には靄がかかっていてよく見えない。
『おねえちゃんみたくぼくもできるかなぁ?』
幼いシバは隣の少女に尋ねた。
『きっとそのうちできるよ!』
少女はシバの方を向き笑顔で言った。
「、、少年、少年!」
「マ、マーニさん、、」
シバは何度も自分を呼びかけるマーニの声でハッと我に返った。
「どうしたの?急にボーっとして、」
マーニは心配そうにシバの顔を覗き込んだ。
「い、いや、なんか昔の記憶かな、、」
シバは訳が分からず頭を抱えた。
「、、、」
その様子をマーニは無言で見つめていた。
紫炎竜は牙をむき出しアイを威嚇するように咆哮した。
紫炎竜の威圧と咆哮による突風でアイの髪がなびく。
「、、、うるさい、目障りなトカゲ。」
そう呟くとアイは下に手を向けた。床と水平に赤い魔法陣が出現した。
魔法陣の線が暗赤色の炎に変わったと思った直後、炎の柱が勢いよく渦を巻きながら竜巻のように上昇していった。
暗赤色の炎の柱は垂直に伸びていきその姿を露にする。荒々しく燃える暗赤色の竜となり威風堂々と空中を舞う。
エイミーの紫炎竜よりも一回りも二回りも太く長い。
体格差はあるものの互いに敵意をむき出しに睨みあう二体の竜。
アイとエイミーが同時に魔法陣を展開させた腕を前に伸ばし互いに相手に向けた。
するとどちらの竜の口にも光点が現れた。光点は徐々に拡大していく。
光点は燃え盛る巨大な炎の球体となり魔力が凝縮される。
凄まじい威力とパワーが凝縮されているであろう炎の球体から竜たちの咆哮と共にビーム砲のように放たれた。
互いに放った光線はけたたましい轟音と共に真っ直ぐ伸びていく。
暗赤色の光線と紫色の光線が直撃した。その威力は結界が震えるほどのものだ。
互いに一歩も譲らない。
しかしエイミーは必死に歯を食いしばる。そんなエイミーとは対照的にアイは平然としている。
「くっ!」
「、、、」
しかし徐々に暗赤色の光線がじりじりと押していった。
それもそのはずだ。アイの暗赤色の炎の竜はエイミーの紫炎竜よりも大きいのだ。
それでも容赦なくアイは平然としている。さらに突き出した腕の魔法陣が光る。
それに合わせて暗赤色の光線は激しくなり威力は強くなる。
エイミーも魔力をさらに込めるが紫炎竜の光線が押し返すことはない。
突き出されたエイミーの腕が押されはじめ徐々にひじが曲がっていく。
エイミーの体が悲鳴を上げ始めたがエイミーの目はまだ死んではいない。
しかし光線の打ち合いに終止符が打たれたのは意外にも早かった。
アイは無常にもさらに魔力を込める。暗赤色の光線の荒々しさは増していく。
暗赤色の光線は紫色の光線を紫炎竜もろとも包み込み吹き飛ばした。
「、、、あまり調子に乗らないほうがいい。」
息を切らすエイミーにアイは言った。
「な、なによ、もう、勝ったつもり?私は、まだ、負けてないわ、」
エイミーは自己再生により体の節々の悲鳴は治まったものの分身に加えて紫炎竜の攻撃で魔力の消費量が激しく酷い倦怠感に苛まれていた。いつの間にか分身は消えている。
「、、、そう?顔色が悪いようだけれど。」
「ご心配どうも、でも余計なお世話よっ!」
エイミーは怯むことなくアイに突進する。
アイはエイミーの繰り出してくるパンチを正確に払い対処していく。
何度打ち込んでもアイにはエイミーの拳が全く通じない。
何発かエイミーの身体強化により重くなったパンチをかわすとアイは逆にカウンターを一発エイミーの腹部に打ち込んだ。
アイの拳は紫色のオーラに包まれていた。身体強化による一撃がエイミーを襲った。
「ぐはっ、」
エイミーはその場から脱力し頭から崩れ落ちていく。床に激突する寸前でアイがエイミーの足首をつかんだ。
「、、、シバに体術を教えたのは私。」
「ゲホッ、ゲホッ、」
アイが逆さまになっているエイミーを見下ろす形となった。凍てつくように冷たい視線を向ける。
「、、、これ以上は時間の無駄。」
アイはエイミーに向けゆっくりと手を伸ばした。アイとエイミーを取り囲むように空中に五つの魔法陣が展開された。
魔法陣からは真っ直ぐと伸びた両刃の剣身が徐々に姿を現した。
「、、、あなたの選択肢は二つ。、共存を諦めるか、私たちの前から去るのどれか。選べないと言うなら死んでもらうまで。」
持ち手も含めて一メートルほどの長さの剣が一斉にエイミーを捕捉している。
「フフッ、はなっから死ぬつもりなんてないわ!」
グサッ、
「グフッ!っあ”、あ”ぁぁ、、」
剣の一本がエイミーの腹部を貫いた。刃を伝って鮮血が滴り落ちる。
「、、、今から一本ずつこの剣があなたの体を貫く。」
アイは出現させたロングソードを一本ずつエイミーに刺していくと言う。
剣の数は残り四本。全ての剣がエイミーの体を貫いた時、エイミーは死ぬ。




