第48話
燃え盛る紫炎は激しさを増し内部がうごめくように渦を巻いていった。
形は変形し紫炎の中から一筋の炎が空中を泳ぐように飛び出した。
飛び出した炎はどんどん伸び線状になる。その炎の線を骨格に燃え盛る紫炎の球体から炎が散開し骨格を覆った。
余すことなく炎が覆い一体の紫炎に燃え盛る竜が誕生した。
「へぇー、エイミーちゃんは炎と風の属性がずば抜けてるね~」
マーニがエイミーの紫炎竜を見て感心したように言った。
「マーニさん、見ただけでどの属性が得意だってわかるんですか!?」
シバが驚いた様子で言った。
「そんなに驚くことかな、普通に私は魔眼で見れるよ~」
「いや、前にアイと自分の魔力を計測した時には変な道具に血を垂らしてたので、」
シバは図書館でアイが取り出した魔力を測定する道具のことを話した。以前はシートに血を一滴ほど垂らすと五角形のレーダーチャートのように自身の得意な属性、不得意な属性が数値で示され分かるようになっていた。
「あー、そういう方法もあるね、むしろそっちの方が一般的かも。人間たちは正の魔法しか計測しないものを使ってるみたいだよ。」
「マーニさんはどういう風に見えているんですか?」
興味本位でシバが尋ねた。
「そうだねぇー、見たほうが早いかも、、」
マーニはシバを見ながら考えるようにして答えた。最後にニヤッと笑みを浮かべたがシバは気が付かなかった。
「少年、私の体に触れてみて、私の魔力を介して見れると思うよ、」
シバは魔眼を発動しマーニに言われた通り肩に触れようと手を伸ばした。
ぷにゅ、
(はぁー、マーニさんの肩柔らか~、、ぷにゅ?)
「ああん、あン、いくら触れてみてって言ってもそこ触るかなぁ、少年?」
ニヤニヤしながらマーニがやや頬を紅潮させ言った。シバが肩に触れる前に体をシバの方に向けたのだ。当然シバの手は強力な掃除機に吸い寄せられるがごとく埋もれていくのだった。
「な、な、なんでこっち向くんですかっ!」
シバは手を引っ込め飛び退いた。
「えー、なんとなくだよー、もう今まで誰にも触られてこなかったのに少年には何度も触られちゃってるよ、、」
両手で顔を隠して泣いているように見えるが笑いをこらえているのがバレバレだ。
(またやられた、この人はいつもいつも、)
「顔赤くしちゃってぇー、このこの~」
マーニはシバの頬をツンツン突ついていつもの調子でからかってシバの反応を楽しんだ。シバは恥ずかしさからフイッとそっぽを向いて座り込んでしまった。それを見かねたマーニは少し反省したのか申し訳なさそうな笑みを浮かべて座り込むシバに後ろから腕を回し抱きしめた。
「ちょ!なにやってんですかっ!、、マーニさん、、?」」
マーニに後ろから抱きつかれまたからかっていると思ったシバだが雰囲気が少し違う気がしてやや困惑した。
「ごめんね、少しやりすぎちゃったかな、、」
いつものハリのある透き通った声とは違い萎れたような声でマーニは言った。
「そ、そんな、まあ、びっくりはしましたけど、、ど、どうしたんですか?急に弱々しくなって、」
マーニはシバの背中に頬を重ねさらに言った。
「シバの反応見るのは楽しいけどそれだけのためにこんなことしないよ、」
「えっ?」
「ほんとにこういうことはシバにしかしてないんだよ?それに、、やっとまた会えたのにまた離れ離れになるのは、、嫌だから、、」
後半部分にかけて声が弱くなっていきうまく聞き取れなかったがいつもの強気なマーニさんからはどこか乙女な雰囲気を感じるシバであった。
「シバ、ドキドキしてるね、」
頬を赤らめながらマーニは呟いた。
「そ、そりゃ、そんな格好してたら心臓の音くらい聞こえますよ、、」
「ううん、そうじゃないよ、すごくドキドキしてるよ、」
マーニが弱々しくも優しくささやく。
「い、いやあ、それは、そうなんですが、」
「私もすごく、ドキドキしてるよ、、」
二人の会話は途切れ静寂に包まれる。だがそれが二人の鼓動を際立たせ加速させていた。
シュンッ、シュンッ、シュンッ、
何かが一瞬でシバの頬をかすめた。後ろの結界の壁を見ると恐ろしいほどに鋭利な氷の矢が数本突き刺さっていた。
「「、、、」」
シバとマーニは唖然とし放たれた方向に目をゆっくりと向けた。
その先にはエイミーの攻撃を華麗に受け流すアイの姿があった。
「ま、まさかな、ハハッ、」
「だって、戦闘中だものね、、」
シバとマーニはまさかアイがやったなんて思いたくなく空笑いが出た。
「、、、」
「「ひいぃぃ!!」」
だがエイミーの攻撃を華麗に受け流している一瞬アイの目線がギロリと二人に向けられた。禍々しいオーラのようなものが体中から湧き出ているようにも見える。
その後のシバとマーニはと言うときれいな直立不動で戦況を見つめていた。
「あ、そういえばマーニさんの属性を見る魔眼のやつ、、」
しびれを切らしてシバがマーニに話しかけた。
「あー、そういえばそうだった、じゃ、今度は肩に手を置いて、」
シバはマーニの肩に手をのせ魔眼を発動させた。その状態でアイとエイミーを見た。それぞれの傍らに何やらグラフのようなものが見えた。アイは五つの項目から水平方向にのびる帯がどれも同じ長さでグラフの端まで伸びていた。一方エイミーはと言うと上から一番目と三番目の帯が突出して長くアイほどではないがかなり長かった。他の項目の帯はどれも半分よりは長いがそこまで顕著には見られなかった。
「マーニさん、これって、」
「上から炎、水、風、雷、土の属性を表してて端っこの方にある数字がその人の魔力量だよ、」
マーニの言うことと照らし合わせるとアイは全ての属性の値が最大でエイミーは炎と風の属性の値がかなり高いことがマーニの魔力を介してシバでも分かった。
「ちなみに少年の属性は一応全部半分以下だよ、負の魔法はね。正の魔法は限りなく0に近いって感じかなー」
「それはもう十分理解してるつもりではいます、はい、、」
いざ正確に自分の属性についての話をされると情けない気持ちになるシバだったがふと気になることがあった。
「なんで僕の各属性値は低いのに隠蔽魔法や魔眼が使えるんですか?」
「あー、それは無属性魔法だからだよ、」
「無属性魔法?」
「そ、無属性魔法は属性に関係なくて保有魔力量によって精度が高まる魔法だよ、」
「なるほど、、マーニさんはすごいですね!」
「そんなことないよ、少年もそのうちできるようになるよ~」
その時シバの脳裏にかすかに幼い少女の声が響いた。
『そんなことないよ、シバもそのうちできるようになるよ!』
「!?、何だ、今の声、、」
それはどこかで聞いたことがあるような、そして懐かしいと感じるようなものだった。




