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無能魔法士の復讐   作者: 宮田悠保
第二部
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47/93

第47話

 エイミーは勢いのまま再び拳を突き出した。拳は紫色のオーラに包まれている。


 アイは両腕を交差し身体強化されたエイミーのパンチを正面から受け止めた。


 だが身体強化により威力が増していたためアイの立ち位置がわずかに後ろにずれた。


 続けてエイミーは左足を軸に身体強化し紫色のオーラに包まれた右足をアイの顔めがけて蹴り上げた。


 それを左腕で受けたアイは瞬時にしゃがみエイミーの左足を払う。重心を失い体勢を崩すエイミーの脇腹にアイの蹴りがめり込んだ。


 苦痛に顔を歪めながらものすごい勢いで吹き飛ぶエイミーにアイは追い付き背後に回り追撃しようとする。この時アイは初めて自分から大きく移動した。


 両手を伸ばし片手の魔法陣よりも大きい魔法陣を展開し魔弾を放とうとしたその時アイの真横から魔弾が連続して放たれた。


 魔弾が放たれた方向には腕を伸ばしていたエイミーの姿があった。しかしアイのすぐ横にはエイミーの姿もある。


 エイミーは二人いた。エイミーが二人いることにさすがのアイも驚きの色を示した。


 だが五つほどの魔弾がアイのすぐそばまで迫りくる。


 アイは体の向きを変え、魔弾を放つ相手をエイミーから自身に向かってくる魔弾に変更した。


「、、、!」


 アイの魔弾が放たれた瞬間、いやアイが魔弾を放つよりもごくわずかに早くアイのはるか後方から一筋の赤い光が駆け抜けた。


 燃え盛る紅蓮の矢が衝撃波を纏いアイの背中めがけて超高速で向かってきたのだ。


 アイは避けきれずもろに燃え盛る炎の矢をくらった。


「、、、チッ!」


 空中でバランスを崩したアイは謎の五つの魔弾とアイ自身の魔弾の誘爆に巻き込まれた。


ドーンッ!!


 爆発の衝撃は結界の端にいるシバやマーニのところまで響くほどのものだった。


 空中には黒煙が立ち込める。


 煙の中からは透明な球体に囲まれたアイの姿があった。背中に攻撃を受けた後とっさに防壁で自身の周囲を囲い爆発から身を守ったのだ。しかしアイの表情は先ほどのように涼しげではなくやや曇っている。


 背中は焼けただれており魔族特有の自己再生でもすぐに傷は癒えてはいない。


 アイは防壁を解き自身の背中を襲った矢の飛んできた方に視線を移した。その表情は厳しいものだった。


 視線の先にはなんとまたしてもエイミーの姿があった。つまり結界内には二人ではなくエイミーが三人存在していることになる。


「さすがのアイでも三度目の攻撃は避けきれなかったようね、」


 エイミーが得意げに言った。


「、、、」


 だがアイは何も答えない。その表情からはアイの心情が読み取れない。



「エイミーちゃんも結構やるじゃん、」

 エイミーの三段攻撃に感心したようにマーニが言った。

「まあ、エイミーなりによく考えてるみたいですね、」

 シバもそれに答える。口ぶりからしてどうやら二人はエイミーの攻撃のカラクリに気が付いたようだ。


 エイミーから淡い紫色の光がにじみ出てすぐにエイミーの移動速度が急激に上がったことから身体強化によるものだと見られたが実はそうではなかったのだ。自身の分身を作り隠蔽魔法で姿をくらますためのものだったのだ。そのためにあえて直後に移動速度を上げたのだ。


「けど、どれが本物のエイミーちゃんなんだろね、少年なら分かるんじゃない?」

 首をかしげマーニは言った。

「いや、正直僕も分かりません、三人とも魔力量が均等に配分されているみたいなので、」

 シバは魔力探知でエイミーの魔力を探したが分身体と本体の保有している魔力はどれも同じだったと言うのだ。

「エイミーちゃんやるじゃん、」

「そうですね、アイと比較していたから忘れてましたけど確か学院の並みの魔法士相手なら余裕でしたね、」

「ライバルはアイちゃんだけかと思ってたけどエイミーちゃんも侮っちゃだめだね~、これは、」

「マーニさんもエイミーと戦う気ですか!?」

「そういうことじゃないんだなぁ~」

(少年はライバルって書いて“恋敵”なんて読まないだろうし、そもそも私のこと忘れちゃってるみたいだしね、)

 マーニはどこか懐かしいような、それでいて少し物寂しそうな何とも言えない微笑を浮かべシバを横目に見た。



 エイミーは自身と分身の二体でアイを等間隔で取り囲んだ。これまでに受けたアイからの傷は自己再生によりほとんど完治している。


 一方、アイの背中の傷は自己再生により徐々に治りつつあるがエイミーほど完治されたとは言えない。


 魔族同士の争いは軽い傷なら自己再生で自動的に回復してしまうため相手に深手を負わせることで有利になる。人間との違いは人間の治癒魔法は自身の魔力を消費するが魔族は自己再生に自身の魔力を消費しないというところだ。


 自分はほとんど万全の状態、相手は怪我を負っている。たとえ相手がアイであろうと容赦はしない。むしろアイだからこそここで勝負を有利に進めたい。言うなれば絶好の好機。エイミーは躊躇うことなく攻撃に移ることを選択した。


 アイはそれぞれのエイミーの位置を次の攻撃を警戒しつつ確認した。警戒と言っても臨戦態勢とは言えないほどいつものように平然と空中に浮いている。


 エイミーは斜め前に一体、右横に一体、斜め後ろに一体、アイを中心とした正三角形の配置だ。


 アイが横の一体にわずかに視線を送ったとき斜め前と斜め後ろの二体が動いた。ほとんどアイが視線を動かしたのとほぼ同時だった。


 二体は一気に距離を縮めた。


 前の一体が拳を突き出す。


 アイは撃ち込まれたパンチを左腕で受ける。同時に上半身をひねり魔法陣を展開させた右腕を伸ばし後ろから迫る一体に魔弾を放つ。


 さらに体を右に回転させ前の一体に後ろ回し蹴りで反撃する。


 アイの後ろ回し蹴りをガードするもアイから距離を離される。魔弾を受けた一体も同様に後方に吹き飛んだ。


 しかし、アイの蹴りが決まったとき横にいた一体は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。


 魔法陣が展開され紫色の燃え盛る炎の球体が出現した。

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