第33話
その肉片は一定の割合で拍動するように膨張したり縮んだりしながら徐々に肥大していっていた。やがてその肉片は拍動しながら形を変え人型になった。そしてレオポルドは肉片から再生した。
「、、お前、」
「死んだと思って油断したな、お前のあの巨大な魔弾に飲み込まれる前に体の一部を切り離したんだよ、」
「いや、お前、」
シバの言葉を遮るようにレオポルドは高らかに言う。
「私は体の中にある中心核さえ破壊されなかったら何度でも再生するのだ!だから私はお前にかなわなくても負けることはないのだ!!」
「それはわかったから、まず服ぐらい着ろよ、気持ち悪いな、」
嬉々として高らかに叫ぶ裸の中年の男にシバは汚物でも見るような視線を向けながら言った。しかし、レオポルドは聞く耳を持たず続けて言った。
「その拘束器具は対象者の魔力を吸収して魔法を使えない状態にする物だ、魔力も吸収出来て拘束、捕縛できる、まさに一石二鳥の代物だ、」
シバは確かに魔力を吸収されている感覚があった。さらに魔法を発動させようとしたがその効果はない。さらにやや強く魔力を込めても一瞬だけ魔法が発動されるだけですぐにその効果は消えてしまった。
「お前の存在は危険だが思わぬ収穫だ、お前の魔力ならいい素材になる、」
レオポルドは遠隔で接続されているであろう手元の計測器を見た。目盛りが付いており吸収した魔力量が表示されるようだ。さらに以前アイに見せてもらった魔力を計測する道具に似た物も手にしている。
それまで意気揚々としていたレオポルドであったが手元の二つの計測器を見て期待が大きく外れたのか動揺が隠せない。
「何だ、この数値、保有魔力量10以下だと!?」
シバの魔力量は10以下の目盛りを指していたのだ。レオポルドは驚愕の事実であるようだがシバからしてみたら当然のことだった。なぜならシバは半魔族となっているからだ。魔族としての負の魔力は底が計り知れないが本来人間であったシバの正の魔力は10以下なのだ。加えてレオポルドの使用している計測器は正の魔力しか検知できないのだ。
「なぜだ、しかし、あの魔法は一体!?はっ!ま、まさか、お、お前、」
レオポルドは何か気づいたかと思うと空中の魔法陣から別の計測器を取り出し拘束器に接続した。その計測器を見て先程とはまた違った様子で驚愕した。計測器の指標を指し示す針は振り切れグルグルと高速で回転していたのだ。
「お前は、魔族、なのか!?いや、だが魔族が保有しているはずがない正の魔力も検知されている、お前は一体、?」
レオポルドは自身の推測が確信に変わったが同時に新たな疑問が沸き上がっていた。
「無能魔法士と罵られ続けてきた元人間だが?訳あって俺の体には魔族の血が流れているが、そんなことより魔力が必要なんだろ、」
するとシバの体からはうっすらと黒い光が見られた。
「なら、好きなだけくれてやる、」
直後シバはオーラに包まれ周囲に魔力を開放させた。
「はあああああああ!」
バチバチと全身を包んでいるオーラから稲妻状の火花が煌めく。魔力は吸収されオーラは一瞬消えるがすぐにまたオーラを纏う。
「なっ!?一気にこんなに!」
「はあああああああ!」
さらにシバの纏うオーラは殺気立つように激しさを増す。大瀑布のごとく流れ出るオーラはもはや吸収されても消えることはなくなった。
「ま、待て!そんなにやったら、、」
徐々に膨張していく拘束器は今にも破裂しそうだ。
「おおおおおおおお!」
突然許容量を超えた拘束器はシバの魔力を抑えることができなくなり爆発した。
「ば、ばかな、、」
レオポルドは呆気にとられていた。まさか、拘束器の許容量を超えるとはと。だが、レオポルドはあることに気が付いた。シバの姿が見当たらないのだ。先ほどの爆発に巻き込まれたのか?と一瞬思ったがすぐに否定する。
「こっちだ、」
背後から聞こえる声をシバのものであると認識した時にはすでに遅かった。
バチバチバチー!
レオポルドの全身を強力な電気が駆け巡った。
「があああああああ!」
シバは両手の10本の指先に周囲に放電している光点を生成しレオポルドの背中に押し付けたのだ。シバの体は所々傷がある。さすがに自身の魔力をもろに食らったのだ、無傷とはいかなかった。
感電し痙攣しているレオポルドに間髪入れずシバは手刀に剣を形作ったオーラを生成しレオポルドの右腕を切断した。鮮血が勢いよく噴出した。だが、当の本人は顔を歪めるがどこか余裕の表情を見せている。
「い、言っただろう、私は中心核さえ破壊されなければ何度でも再生が可能だ、、と?」
切断面からブクブクと再生が始まるがなぜか先程とは異なりなかなか肥大せず再生されない。
「な、なぜだ!?再生が、」
「そりゃ、感電して細胞が壊死してるからな、壊死してる細胞がある程度あればその分再生は遅くなると思ったがどうやらその通りだったようだな。」
通常人間は高電圧で感電するとその部位の体細胞は壊死してしまうという。壊死した細胞は最終的に免疫機能により除かれその細胞が構成していた組織の一部が再生し補うが一般的に壊死した部位は機能しない。
切断された右腕の切断面は黒く変色し再生する様子はなかった。さらに両足の先も黒く変色してきている。徐々に壊死に伴う腐敗が進行しているのだ。
「そこ早く切らないとその内死ぬよな、お前にはまだ死なれたくないからな、助けてやるよ、」
黒く変色している両足首を見ながらシバは腐敗の進んでいるレオポルドの両足を切断した。しかしすでに腐敗は切断面よりも高い位置まで進行しており続けて太腿まで切断した。腕も同様に前腕、上腕と順番に切断を繰り返した。
「肩や股まで壊死が進行してるんだその内中心核も壊死してお前も死ぬな、すまないな、助けてやれなくて、」
レオポルドはただただシバを睨みつけることしかできなかっ。
「お前がそんな目で見るなよ、」
シバはこれまで抑えていた枷が外れたように感情的になる。
「お前らが亜人たちにやってきたことだろ!お前は亜人たちに価値がないと言った、あいつらがゴミだと、ゴミ以下であると、ふざけるなっ!!必死に生きているあいつらに価値がないはずがないだろうがっ!!確かにあいつらの衣服や髪はきれいだとは言えない、けどあいつらは命ある限り必死に生きてんだよ!それだけで価値はあるしきれいなんだ!!」
シバが感情をあらわにしたがレオポルドには何も響かなかったようだ。ただ俯き黙っている。だがふと顔を上げシバを見上げる。その表情は下卑た笑みを浮かべている。
「ははははは、なんとでも言え、どうせ私の体はもう腐敗が進行し機能停止するんだ、だが確かに亜人にも価値はあったのかもしれないな、、金になる商品としてのな!!」
反射的に体が動いていた。
オーラの手刀がレオポルドの中心核に突き刺さっていた。
シバの目はただ黒く冷酷だった。
レオポルドの体はドロッと溶けるように崩れた。




