第34話
これで完全に死んだと思ったシバであったが破壊された中心核がほのかに光を放っているのを見つけた。
「いやぁ、まさかここまでやるとは思いませんでしたよぉ、シバ・イクディキシ君、」
砕けた中心核から気味の悪いレオポルドの声が聞こえた。
「おやぁ?もしかしてどうして私の声が聞こえるのか気になってるんですかぁ?君が殺したのは私のクローンだからですよぉ。自我を持ち合わせていますから彼の言葉は彼自身のものですが本体の私と意識はつながっているんですよぉ。だから先ほどまでの出来事はすべて知っていますよぉ。ん?なぜわざわざクローンを使っているかですかぁ?本人の私がいちいち買い取らせた奴隷の視察なんてするわけないじゃないですかぁ、面倒ですしぃ。」
この場に実体のないレオポルドは聞いてもいないことをすらすらと言った。
「まぁ、今回はいいデータも取れましたし引くことにしますぅ、またお会いすることになりますよぉ、次はおてやわらか、、」
グチャリ、、
レオポルドが話している途中でシバは光を放つ中心核を踏みつぶし完全にクローンを殺した。
シバは何とも言えない虚無感に襲われていた。ドロドロと溶けたクローンの肉片は消え地面に黒ずんだ染みができている。足元に残る核を破壊した時の感触が取れず鮮明に残る。大の字になって背中から倒れ空を見上げる。いつの間にか空は赤みを帯び始め夜が明けそうだ。自然と瞼が降りシバは眠りに落ちた。
一方、マーニはシバのもとへ向かっていた。普段冒険者として活動し魔法兵たちの信頼を獲得していたので説明はあっさりと信じてもらえた。一通り説明を終えたマーニはレオポルドの飛んで行った方に向かった。だがほどなくして大きな魔力のぶつかり合いを感じた。ぶつかり合う衝撃が激しくビリビリ伝わってくる。その衝撃の正体が赤黒い魔力が渦巻く巨大な魔弾と燃え盛る火焔の大剣のぶつかり合いであると分かるのは路地裏を飛び立ってからほどなくしてからだった。
「こ、これは!?」
魔弾と大剣は拮抗し互いに譲らなかった。しかし、シバが禍々しい黒いオーラを纏うと戦況は一変した。赤黒く巨大でまるで隕石のような魔弾は周囲に稲妻状にエネルギーを放出するように禍々しさを増していった。やがて大剣は押されオーラも崩れレオポルドは飲み込まれた。
「ま、まさか、ここまでとはね、」
マーニはシバの攻撃が予想以上にすごかったことに驚きを隠せずに若干顔が引きつっていた。それからはレオポルドの再生やシバの潜在魔力に驚かされた。シバがあおむけに倒れた時には焦ったがただ眠っているだけだと分かりホッとした。
「まったく、君は本当にすごいよ、昔から君には驚かされてばっかりだよ、」
眠るシバの肩に腕を回し呟いた。
どのくらい眠っていたのだろうか。レオポルドとの戦いの後、シバは倒れるように眠りに落ちた。徐々に意識がはっきりしてくる中で後頭部にいつもと違った感覚がある。頭が沈んでいくような感覚の枕とは異なっているのだ。
(なんだ、この弾力があって俺の頭を包み込むような枕のような感覚とは違ってプルンとはね返すこの感じ、それに、なんかいい匂いも、)
だが突如息が苦しくなるのを感じた。
(い、息が、苦しい、何か顔に乗ってるのか!?)
何かに押しつぶされるような感覚にシバは苦しめられた。その正体を確認しようと恐る恐る目を開けたが暗くて何も見えなかった。
(うわっ、くらっ、あー、なるほど、まだ夢の中なのか、よくある夢から覚めたと思ったらまだ夢だったみたいなやつだ。この苦しいのも夢の中かよ、死ぬかと思ったわ、)
(、、、ん?)
(、、、、あ、あれ?)
(い、息が、、)
(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!やばっ!息がっ!これ絶対夢じゃないやつだ!)
たまらずシバはおそらく自身の顔を覆っているであろう物体をどかしどうにか気道を確保しようと腕を伸ばしそれをつかんだ。
ムニュ、
「ぷはぁー!死ぬかと思ったぁ!」
一応息はできるようになったがそれ以上にまた別の感覚にシバは侵された。
(ムニュ?、、、なんかこの柔らかい感じ、どこかで?)
以前感じたことがあるような感触が手から伝わり何であったかを思い出すように何度も揉んでみた。
「ひゃ、っあ!、、、ぁあ、はっ、、やめっ、し、少年っ、だ、、め、、ァ、、」
(んんん!?何かまずい声を聞いたような、それにこの感触と少年って、、)
シバは何かに気が付いたようで手を止めて腕を下ろした。ゆっくりと体を起こし恐る恐る後ろを向いた。
そこには俯き頬を桃色に上気させ恍惚となっている様子のマーニがいた。若干息も上がっていた。シバは言葉が出ない。さらにマーニの服は胸元がやや乱れていた。ふぅーと一息つき乱れた服を整えたマーニは視線を上げシバを見つめた。
「、、激しすぎだよ、」
「ハハハ、、、」
すみませんと一言だけ言葉を残し二人とも黙り込んでしまった。
「もう大丈夫だよ、」
最初に口を開いたのはマーニだった。もちろんシバはマーニから話しかけられなかったら何も言うつもりはなかった、今の自分に言葉を発する資格、権利はないと思ってるのだ。さらにマーニは続けた。
「それになかなか起きないシバに悪戯しようとしてたらやりすぎちゃったみたいだし、」
「え、、じゃあ、あれってわざとだったんですか?」
「そうだよ、普通に膝枕しただけじゃ少年の顔はつぶされないよ~、牛じゃあるまいし、」
「牛って?あ、いやいや!確かにマーニさんはスタイルいいですけどそういうことではなくてですね、とにかく死ぬかと思ったんですよ!」
少しムッとしたようにシバは言った。
「ごめんごめん、ついね、あと少年私のこといつもそういう目で見てるんだぁ」
「なっ!んなわけないでしょう!」
またいつものマーニのシバをからかう時の笑みが見え隠れしている。
「まあまあ、それよりレオポルドは完全に殺したのね?」
「いや、それが、、」
シバは中心核を破壊し亡骸から出てきた光と声についてマーニに伝えた。
「なるほどね、結局あいつが何なのか謎が深まったって感じだね、今は考えるだけ無駄かな、」
「そうですね、それより昨日から帰らずにいるからアイ怒ってるだろうなぁ、ついでにエイミーも、」
「アイちゃんは知らないけどエイミーちゃんはきっとそうだろうね~」
「じゃ、急いで帰りましょう、」
「うん、帰ろ~、」」
マーニはニヤッと笑いながら言い二人はベルカの宿屋に向かった。




