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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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07.竜族の国




 齢十三になった竜族の姫の名は、ヨーキ。容姿の美しさもさることながら、曲がったことは嫌いな義の人で三人の兄達とともに育ったため武に秀でている。

竜族の王家の血筋なら戦闘力は世界で屈指といってもいいだろう。

その姫君が居なくなった。

家出をする心当たりは何一つもない。毎日健やかに育ち、いなくなる日の翌日には姫様の好きな月に一度のトーナメント形式の武力訓練が戦士団の中で行われる予定だった。当然姫は観戦ではなく、参加する方で。そんな状況で自らいなくなるわけがないと誰もが言った。


そして、いなくなる一年程前から、不穏な気配があったそうだ。


何かが起こったわけでもないし、目に見える何かがいるわけでもない。

だけど、何かが違うと感じてはいた。だが、その正体はわからず、誰もが何かがおかしいと思うだけで、口にするわけでもない。

姫様がいなくなって初めて、皆がもしやと思ったのだ。


その話を聞いてイフーは、竜の国だけではなくミミルファ国にもお知恵をお借りした方がいいのではないかと思った。

見えない何かなら、精霊の国の方が詳しいのではないか。

竜の国だって竜王が魔導師と出会うまでは精霊の存在を感じることは出来なかったのだ。いくら竜族が物理的に強くても、見えない相手に立ち向かうことはできないだろう。



イフーは話を預かり、竜の国へとすぐさま戻った。

そしてミミルファ国を交えた鼎談の場をこれ以上ないくらいの速さで設けた。






******






「どうだ?トーイ。何か感じられるか?」


「いいえ、父上。何も感じない、きっと近くにはないですね」




 二人の間で度々繰り返された会話だった。

竜王は過去の体験から、トーイが自分と同じようなことを繰り返さないように幾つかの対応をしてきた。


一つは竜瞳をしまい込まないことだ。

飾り棚に置き、万が一無くなったとしてもすぐに気づけるようにした。

実際、侍女が掃除の際にいつもなら四つ並んでいる宝石が三つしかないことに気付いたのだ。


二つ、宝玉のありかを探ることだ。

トーイが宝玉を握りしめ生まれてきたのを見た時から、こんな日が来ることを想定して竜王は自身の訓練を開始した。

魔力のコントロール方法は魔導師に仰ぎながら、宝玉を持ちもう片方の宝玉を感知するということを繰り返した。慣れてくれば少しずつ距離を離す。

それによって竜王は、宝石が竜の国とミミルファにあっても場所がわかるほどに精度を上げた。なので魔導師が数日自分の元を離れるときは宝玉を持たせるようにしている。

ただ、宝玉は出し入れ自由なので持って出かけたとしても魔導師の意思で竜の国の飾り棚に戻すことはできる。が、「お願いだから肌身離さず持っていてくれ」と竜王が懇願しお持ちいただいている。

そしてそれらを繰り返すうちに宝玉がなくても瞬時に互いの居場所がわかるようになった。今までだって、魔力の気配を追うと時間はかかったがある程度の距離なら見つけられたが、今ではすぐにわかる。トーイのための訓練だったが、竜王は思いがけない結果にとても喜んだのは言うまでもない。



 トーイが成長し魔力を操れるようになってすぐに竜王は訓練を開始した。

トーイは魔力が高いのは勿論だが操る術も器用で、どんどん上達していった。

だが、索敵には国内がいまのところ限界のようで、それ故に竜王は外交上行ける範囲でいろいろな国の様々な場所にトーイを連れていき、もう一つの宝玉の行方を捜した。


だが、見つからない。


今回竜族の国へも一緒に連れて来たが、そこでもやはり宝玉は見つからなかった。

竜族の姫がいなくなった事がトーイの宝玉の行方に何か関係があるのではないかと思っていたが、その考えは違ったようだ。





 トーイは初めて見る竜族の国に目を輝かせた。

竜の国から北に位置する竜族の国までは、いくつかの国をまたぐ。それらの国の様子にも目をきらきら輝かせてながら訪れた。そして国を越えるごとに宝玉の行方を探らせるがいずれも近くに反応はなかった。

期待を込めてやってきた竜族の国。だがそこでも宝玉は見つからない。




 遥か昔、竜達は岩山といってもいいような険しい山々に住んでおり、地上において最強の生き物と言われていた。

よって人のことわりの中で生きてはいない。

人が暮らすには不向きな険しい山々に自由気ままに暮らしているのだ。

気が滅入ったと言っては咆哮を上げる。腹が減っては里におり好きなものを食べる。食べ物もその個体差によっていろいろで、肉食のものもあれば雑色のものも、果ては草食のものまで様々だった。

ただ力の強いものは一目置かれるのはどの種族も一緒で、力のある者が暗黙の了解で竜族の長となっていた。だがある時、竜族の長が人間の番だと分かった。

里におり美しい純朴な番と出会った竜族の長は人の魔力と絡みあい、変化の力を手に入れその力は子孫へと受け継がれた。

そこから竜族の高魔力者の人化が始まったのだ。

人の魔力と知恵が混ざり合い、竜族もまたただの居場所であった岩山をある程度国と認識をしそれなりの統制を持って執務政を行うようになっていった。

そうしているうち番が人や獣人であることも多くなり、竜の流れをくんだ竜人の住む国と協力関係を結び騎士団の統制方法や訓練方法など互いに切磋琢磨する良い関係を定期的に結んできたのであった。






 眼下に広がる険しい山々を見てトーイは興奮した。



「こんな素晴らしい景観の中に竜族は住まわれるのですね」


「ああそうだ。われら竜人とは真逆の起源を持つ竜族の国だ」


「われわれは人が竜と交わり生まれたもので、竜族は竜が人と交わり生まれたんですよね。いろいろと興味深いです。デュモールサンがいろいろな国での体験を話してくださるのですが、やはり聞くのと自分の目で見るのでは全然違います。成り立ちが違うだけで住まう環境や国の形成にこれほどまでに違いが出るとは面白いですね」


「お前もこういった機会に様々な国の違いを肌で感じるが良い」


「はい、父上」



 そう言って目を輝かせる幼い我が息子に、竜王は愛し気な瞳を視線を投げかけた。













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