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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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05.行方知れず




「竜族の姫様がいなくなったらしい」



 デュモールサンが現れたかと思ったら、いきなりそう告げた。

自称「放浪の民」(ミミルファ在住)のデュモールサンは、各国を旅している。それは魔導師の勧めでもあった。魔導師の指導のもとある程度魔力の滞りを無くしたがそれでも全部とまではいかない。国や地域によって信仰する神や持つ魔力は異なるから、あとは魔導師の知らない魔力の道を自分で感じることが解決方法として一番早いだろうとおっしゃったから。


 いろいろな国々を周ってはミミルファに戻り魔力の流れを滑らかにする。

デュモールサンはこれを繰り返した。そうしているうちに様々な地に伝手もでき、ミミルファ国とヘファイス国の特使のようなものも陰ながら拝命し、暗躍している。

 そのデュモールサンが掴んできた情報だった。

竜族の国と竜の国とは、国交もある。定期的にやり取りもなされ、互いに親善大使や交換留学のような制度もあり外交は悪くない。だけど表面上には浮かび上がってこない情報もある。



「事件か、事故か」


「闇の精霊の仕業ではないかと噂になっています」


「闇の精霊?」


「まさか、闇の精霊が北の山々に囲まれた国を?」




闇の精霊とは、アレか?」


「ミミルファ国で十数年に一度起こる蝗害は闇の精霊の瘴気にあてられた下級精霊たちの暴動ではないかと考えられております」


「ああ、最近だと十五、六年ほど前に起きた災害だね」


「ええ、そうです。闇の精霊は海上の岩だらけの島にひっそりと住んでいるという話ですがあくまで噂で」



「ひっそり暮らしている奴がなぜ、竜族の娘を攫ったのだろうか」


「竜族の国にはそんなにたくさんの精霊がいるとは思えないのですが」



 知らないだけで、ほかにも行方不明者がいるのか?先日、トーイの竜瞳が消えたことと関連はあるのか?考えてみたところで、結論がでるわけではない。

竜の国から探りを入れてみることと、引き続きデュモールサンに情報を収集するよう指示し、ヘファイス国やエノシガル国ともさらに連絡を密とすることとした。







******






 闇の精霊、光の精霊と対をなす。



 魔導師が<書>を紐解いても、それ以上のことは記されていない。当たり前だ。精霊の何たるかが人間如きにわかるはずもない。しかも闇の精霊は、ミミルファに於いて近くにありながらも最も遠いと言われている存在だ。魔導師ごときが語れるお方ではないのだ。

 闇の御方は、加護の御心が多いと聞いたことがある。ゆえに人の負の感情を拾ってしまう、拾いすぎてしまうと。



 十数年前、ミミルファ国の沿岸部を大きな蝗害が襲った。通例ならもやの治世にはあれだけのものはもう起こらないであろう。が、憂いは自分の手で解決したい。この先再び繰り返す災害なら対策を練って対応する。排除できるなら取り組むだけだ。あれから十数年、海上の観察も怠らず常に監視の目を光らせてきた。

蝗害を起こす原因だって何度も検証を重ね検討してきた。

結果、たどり着いた答えは巷の風聞にあるものとさほど変わらなかった。


 蝗害は人の負の感情から生まれる、もしくは増殖する、と。


 そしてその負の感情は東の海上へと向かった。

闇の精霊のおわす方角へと。

精霊様がよぶのか、負の感情や負の者が行きつくのかはわからない。

だけど、東に何かがあることは間違いがなかった。



「もや、そんなに根を詰めないで。今までだってずっと一生懸命解明に取り組んできた、だろ?」


「ええ、そうね。だけど、不安なの。トーイの宝玉が消えて、竜族の姫様がいなくなって。何か良くないことが起こりそうな気がする」


「そうだね。それは否定しないよ。だけど、俺達は備えてきた。ほら?」



 ユーリは掌に竜瞳をひとつ載せていた。そして次の瞬間、掌の上の竜瞳は二つになった。



「こうやって近くの宝玉を呼び寄せることだって、以前ではできなかったことだろ?俺達は少しずつ、小さな積み重ねだが前に確実に進んでいるよ。……子どもたちの為にできうる限りの問題は取っ払っておきたいのはわかる。だけどね。私は、子ども達のことを無責任にも信じている。もし自分に払えなかった困難も我が子達なら乗り越えられるだろうとね。だけどそれよりも前に、魔導師様の努力を知っている、ずっと、見てきたよ」



 ユーリはそういって、魔導師を温かく見つめた。



「ええ、そうね。私は、私と私の子どもたちの力を信じるわ。そして、わたしを信じてくれた竜王様の力を、ね」



 二人はユーリの掌に載る竜瞳に手をそっと寄せる。美しく煌く宝玉がより一層輝きを増した。






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