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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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03.宝玉の行方




 トーイとソーイを連れて戻ると、竜王はしかめっ面をして執務室にある応接セットのソファに座っていた。魔導師様はミミルファからまだお戻りになっていないようだ。



 宝玉<竜瞳>は、竜王と魔導師様のプライベートルームに飾られていた。

ユーリ様の竜瞳を城の最奥部に大切に保管していたことでもや様との出会いに気付かずにいた反省を踏まえ、ユーリの竜瞳とトーイの竜瞳は私室の飾り棚に並べて置いてあったのだ。

掃除に入った女中がいつもあるはずのところにない宝玉に慌てて大きな声を出してしまったらしい。


 双子はいつも通り父親の竜王の両隣に座るとユーリにぴたりと体を寄せ、楽しそうに微笑む。

昼間は執務に追われ一緒に過ごすことが難しい父親の、それもめったに入ることのできない執務室で、父親の隣に座れることは非常に嬉しいことなのだろう。

その証拠に二人の短く床まで届くことのない足が、パタパタと嬉しそうに動いている。


 そこへ魔導師が遅れて到着した。



「……番の元に、送られたということ?」



 魔導師はいきなり要件に切り込んだ。



「多分、きっと」


「トーイに揺らぐ事象が起きたの?」



「ユーキ、トーイの報告を」



 竜王は低い声で告げた。両脇に抱えた子どもたちをそうっと抱え込む。魔導師様は、竜王様とトーイを挟むようにして座った。




「本日は王城の裏の森で、いつものようにかくれんぼをしておりました。かくれんぼのレベルはすでにクラスBです。そのほかとくに変わったことはございません。ただ。かくれんぼでしたので、お二人の様子は見えておりませんでした。申し訳ございません」



「よい。それは不可抗力だ」


「トーイ。今日のかくれんぼはいつもと変わったことは何かあったかしら?」



 魔導師様は優しくトーイ様に語り掛ける。



「いつもと変わったこと?それはないと思うけど。いつものユーキとのかくれんぼだったよ。楽しかった。ね、ソーイ」


「そうね。トーイはいつも通り、あたしの傍にいてくれたもの。いっつもトーイ兄さまは私を守ってくれるわ」


「一応、僕はソーイの兄だからね。ソーイだけじゃなく、国の民をまもれる僕でありたいけれど」


「うふふ。トーイはいつもかっこいいね」




 うん、お二人の会話に部屋は和んだな……。




「じゃあ、番の方になにかあったのかしら。わたしがリヴァイとの繋がりが終わった時のような、心を揺るがす出来事が???」



 もや様が言った途端、竜王が顔をしかめる。



「トーイに思い当たることがないのなら、そうなるな。だが今は見守るしかあるまい。ユーキ。暫くはかくれんぼといった姿の見えなくなる遊びは不可だ。今後のことは相談し、追って伝える」



 竜王は優しく抱えていた子どもたちから腕を離すとトーイに向き直った。



「いいかい、トーイ。これから、今までと違うと思うことがあればどんな小さなことでも教えて欲しい。咲いている花が枯れたとか、風の匂いが変わったとか、本当にささやかなことでいいのだ。わかるか?」


「はい、父さま。今までになかったことは全てお伝えします」



 真っ直ぐに視線を向けて話すトーイに竜王ともや様は安心し、今日はこのまま城で家族四人で過ごすこととした。



 忙しい二人がこんなに早い時間から揃うことはあまりない。子どもたちは喜んで父上と母上に甘えた。二人の腕を引っ張り、外での遊びをねだった。その光景は傍から見れば微笑ましいもの…ならいいのだが、見ている護衛騎士は思った、戦闘訓練かと。子ども達のものとは思えない頭脳と俊敏さで庭を駆け巡る。相手が両親ということもあって、力加減に遠慮がないように見える。遊びの定義って何だろうと、深く考えさせられる日だった。






******






 ところ変わって、ユーキ邸。



「たっだいま~~~。パパが帰ってきましたよ~~~」



 まだ小さな子ども達は、邸で沢山の使用人たちに囲まれ大切に育てられていたけれど、陽が高いうちに父親が帰ってきたことで大喜びで出迎えた。



「とうちゃん。おかえり。おにわいこう」


「とうちゃん。にわで、あそぼう」



「おお、いいぞ。俺も今日は体を動かしたりないからな」



 ユーキは子ども二人を両手にそれぞれ抱えると庭へ走って向かった。それだけで子どもたちは、きゃっきゃと声をあげて喜ぶ。

庭の芝生に二人を下ろすと、ユーキは言った。



「さあ、お前達、力を全部ぶつけてみろ!」



 男の子達は、父親がほんとうに大好きだった。

なぜなら、ありったけの力をぶつけても怒らない、唯一の人だったから。

兄の知力と弟の体力。幼い二人なりに一生懸命考え、父親を倒す。いや、倒すなんて無理だろう、せめて、いずれは片膝くらいはつかせたい。子ども達のちっちゃな野望だ。

その発想が浮かぶ時点で、普通の子どもではないが、これがこの家の日常の風景。

邸に仕える者達は半分諦め、半分感心し、その様子を見守っている。


幼いころのユーキは魔力のぶつけ先もなく鬱憤ばかりが溜まっていた。その過去が導きだした子育て方法だった。そしてこの遊び方は王子と姫で検証済みである。安心して我が子に適用できるとユーキは得意げだ。



 子ども達はへとへとになっても挑んでくるので、その遊びはヘレネーが帰宅し三人を叱るまで続いた。そして、疲れた子どもたちは半分眠りながら夕食を済ませると、ぐっすり朝まで起きない。そうなるとヘレネーとの甘いひと時だ。頭を使わないユーキが唯一、無い知恵を絞ってだした、ヘレネー独占方法だった。







竜の愛情、依然重たし。





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