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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第四章 竜の番 護衛騎士ユーキ編
62/108

01.番

精霊や魔法、古の力が多くを占める世界。それぞれの国で使う魔力も異なる者達が互いに惹かれ合うーーー。竜の国の護衛騎士、ユーキの物語。





 竜の国の護衛騎士ユーキは、若くして王太子の護衛となり即位後もそのまま竜王陛下の護衛となったエリート中のエリートだ。魔力と直観力、ノリの良さと肝っ玉、これらが選出された主な理由だったせいか本人も気取ったところは一切なく、親しみやすい性格がユーキの良さだった。




 ある日、ユーキのもとに故郷から便りが届いた。幼なじみ二人が結婚すると言う。喜ばしい知らせに休暇を願い出ようとユーキは上司であるエーチの執務室に向かった。エーチも元々は王太子の護衛としてユーキとともに仕えていたのだが、王太子が竜王になったのを機に護衛騎士統括の立場となり、今では書類に埋もれる毎日だ。



 ユーキは今まで生まれ故郷が遠いということを理由に、帰省するということはしなかった。

エノシガル国の王太子が竜の国に滞在中に、二人で意気投合し何度か旅に出るようになるまでは、長期休暇自体をとったことがなかった。

最近だと、エノシガル国に王太子殿下とその婚約者を送迎したついでにそのまましばらく滞在し有名リゾート地を満喫するのに取得したくらいだ。その時から時間も大分経っている。

なのでこの機会に長めに取ることと、エーチから逆に命令された。



「ブラックと呼ばれたら困りますからね」



 エーチが溜息を吐きながら、ユーキに言った。



「ブラックって?」


「フェンネラ様が不眠不休で研究をし始めると黒いオーラ?というか冷気?が流れ始めるようですよ。その様子をブラックと呼んだのがことの始まりで、その状態で研究を続けさせること、要は休みをとらせないことを指すようになったらしいですね」



 フェンネラの冷気にあてられると周りの研究員達はめまいや頭痛を引き起こす。しまいにはフェンネラも倒れてしまったため、よってへファイス国ではきちんと休みを取らせるシステムが確立された。

フェンネラ様も近年精霊の加護が大きくなっているようで、今までになかった様々な変化が起きているらしい。




「オシアノスもイーリヤ様と魔力でも惹かれ合ってたみたいだし、性格とかもあんなに気があって楽しそうだよなぁ。番が見つかった時ってどんな気持ちになるんだろう」



 休暇の理由が幼馴染の結婚だと伝えた後、ユーキがこぼす。



「俺の幼馴染達は、城のみんなが言うような番らしくないんだよな」


「それは竜化する竜人かどうかで全然違ってくるからだよ。正確には、らしいと言った方がいいのだろうな。わたしも独り身で経験していないから断言はできないけど」


「竜化するってことは、魔力が大きいってことだろ?」


「魔力の大きい者が当たり前だけど、感知する訳だ、魔力を。竜じゃなくても、そうだろ。おまえのオトモダチのデンカだって、結局のところ魔力で感じたわけだろう、最愛の伴侶をさ。

ということはだ、魔力の少ないただの竜人は、普通のいわゆる人間同士の恋愛に近い。どうしようもない焦燥とか抑えられない衝動とか、少ないんだ。

竜人や所謂獣人は、力が強ければ強い程、番への執着が大きいからなぁ」


「という事は竜化する竜人は人一倍、番への執着が半端ないってことか」


「だからお前が子ども時代、村で違和感を覚えたのは仕方ないことだ。お前はこの城の中に於いても、魔力量だけでいえばトップクラスだからな。幼稚さもトップクラスだが」


「はいはい。どーせ俺はガキだよー。だけど、番に出会ってないエーチさんにいわれたくないっすよ」


「そうだな。そういうことでいえば、俺らは半人前だ。イフーの溺愛は、見ているこっちがツラくなるほどだが、あれが竜人の男だ」



「ああ……。竜王を、あの時はまだ王太子殿下か。殿下を追っかけてミミルファに飛んだ時のイフーさん、酷かったすね。番にしばらく会えないとあんな風になるとは、恐ろしい……」




「知ってるか?イフーの恋愛はヤポネの国の言葉で、光源氏葵上計画って言うんだそうだ」


「ヤポネって確か竜族の東の国っすよね?」


「ああ。我が国が竜族と定期的な国交がある事は分かっているだろう。イフーは竜族の国に指導に行っていたことがあるんだ」


「マジで!さすが当代最強の戦士と噂されるだけはあるっすね」


「まあな、だからこそ竜王様の護衛騎士でもあるわけだからな」




「……まぁ正直、竜王様が最強なんだけどなぁハハハ」


「でイフーが番と婚姻を結んだときの話を聞いた竜族のやつが言ったそうだ。光源氏だなって。

それをうちの宰相が聞きとって<光源氏葵上計画>って言葉を竜の国に広めたのがはじまり」


「肝心のその計画って何すか?」


「なんでもヤポネの歴史に似たようなことがあったらしいんだけど、幼女を自分好みの女性に育てる<男の浪漫>だそうだ」


「うへぇ、俺にはそれ、無理だな」


「イフーだって、本当に自分好みになんて育ててないさ。出会った番が未成年だったっていうだけだ」


「以前ちらっと見た時、イフーの奥さんは、かなり若そうだったけど?」


「そうだな。お前とそんな変わらないだろう。お前が王城に入る一年くらい前に正式に娶ったはず。他国の娘だったから、とりあえず竜の国に連れ帰って、一緒に暮らしていたからな。勿論同意の上だし、向こうの親御さんにも許可はもらったぞ」


「あんな図体デカい竜の騎士が娘をくれっていったら、そりゃ断れないっしょ」


「そう思う。だけど、連れ帰った時のイフーの様子を見ていたら……可愛いもんだったぞ」



「……イフーさんのそんな姿、見たくないっす」



「ま、俺達もそうなるかもしれないってこと、胆に銘じておけ」


「うへえ、……でも竜王さまはそんな感じじゃなかったっすよね、途中までは」



「……ああ、途中までは、な。これは、竜王様と俺の推測でしかないが、番とは、欲が、その、成長というか、発達の具合によって現れ方が違ってくるのじゃないかと」


「欲って成長とか発達なんてしないっすよ?」


「ったく、言葉選びだよ。成人であるかどうかや、その、つまりは性欲の問題というか。女性であれば、番を迎えられる体になったかどうか、とか」


「ははあ……」


「ユーリ様は竜王だから、竜瞳とか違う要素もあるけれど、滾る思いは年々強くなったと言っていた。まあ、竜王の成人の儀まではもや様の体は実体のないものだったから、番の衝動のようなものはユーリ様は感じられなかっただろうし。

そのかわり、もや様が成人されるまでは三年も待ったせいでどんどん溺愛が酷くなっていったがな」



「うへえ、あれ甘すぎだったすね」



 ユーキは結婚前の竜王を思い出して、うんざりした。



「まあこれは竜人の場合の話だ。種族によっても違うだろうしな。俺達は魔力が強いと竜化するが、竜族は魔力の強い者が人化するくらいには、いろいろと違うだろう」



「......もう俺はこのままでいいっす」


「……いや、お前は少しは成長してくれ。せめて敬語くらい使え」


「うへえ、俺はまだまだ見習いでいいっす」


「……お前、エリート騎士って言われてるんだぞ。田舎民の希望の星って」


「うへえ、希望の星って、なんかダサいっす」


「ダサいったってお前のことだよ」


「……」



「郷里への道中出会いがあるかもな。楽しんで来い」


「……うぃーす」



「返事……、おまえは本当にエリートか?」





「失礼しまーす」


 

 エーチの説教が始まる前に執務室を辞した。イフーの恋バナを聞いても未だピンとこず、自分の番なんてまだ先のことだろうとユーキはこのときはそう思っていた。











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