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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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17.探す、捜す、サーガス




 ソーイは魔法陣を展開した。見えるこの距離なら転移魔法で移動できる。だけど、ただ移動しただけじゃダメなんだ。多分彼は、わたしを待っている。だから、わたしが来たってすぐわかるように一番大きい魔法陣を展開するんだ。



 そして二人は島の真上へと、飛んだ。



 突如現れた大きな魔法陣にみんなの意識は向いたようで、そしてその魔法陣の光がひときわ大きくなった瞬間、辺りを包むように光は弾けた。




 光の中心から飛び出した二人は島へと真っ逆さまに下降する。




「宝玉の在処が近い」

「わかった。そこに向かって飛んでいいよ」



 光が照らしだしている間も二人は急降下し、宝玉の気配がする方へと向かう。次第に光は弱まっていき、目の前には石でできた城の姿が浮かび出された。そして、城を、島を包んでいた瘴気はだいぶ姿を消していたのだった。



「あの城にある」

「わたしの方も、あの城にいる」



 城の広場に降り立つと二人は顔を見合わせた。



「ここからは別行動で、トーイ」

「ああ。気をつけてね、ソーイ」




 二人は自分が呼ばれるままに走り出した。トーイは暗く深く伸びる地下に向かう階段に。ソーイは中心に伸びる広い階段を駆け上った。







 地下に降りると空気の温度がだいぶ下がったように感じた。ジメッとしているかと思ったがそんなこともなく、時折潮風が通り抜ける。地下といっても半地下で片面は海面に抜けているのだろうか。城の地下だけあってかなり広いようだが、トーイは迷わなかった。宝玉の在処がわかる。自分の心の中に暖かい灯がともったような不思議な感覚に呼ばれている。

竜王と一緒に練習した時には感じられなかった、まるで宝玉が意思を持った様な自分を呼ぶ波動。引っ張られる様にトーイは進んだ。





 ある扉の前まで来るとトーイは立ち止まった。その扉は一部格子になっていて廊下から中の様子がわかる造りになっていた。だがそこから覗かなくてもこの部屋の中に宝玉があることがわかる。

だが、扉は施錠されているようでびくともしない。魔力で封印されているようだ。

トーイは扉に触れた。

この魔力は知っている。あいつの波動だ。物心つく前から、身近に感じていた温もりと一瞬。

取手に魔力を流し込むと、扉は抵抗することなく解錠された。閉じ込めておく意思も感じられないような簡単な施錠だった。扉を押して部屋に入る。薄暗くひんやりとした部屋には応接セットや寝台といった家具がきちんと置かれていて、牢獄を想像していたトーイはいささか拍子抜けした。だが、そこには姫の姿はなく、床に置かれた照明だけが灯っていて壁に影を形取っていた。


(ここに竜瞳があることは間違いないのに)


トーイが部屋を見回すと影がゆらりと揺れたのがわかった。


(影が揺れる?)


違和感を覚えて床に置かれた灯りを凝視すると、それは何故か見たことのある暖かな揺らぎに感じられた。



「竜瞳?」



 言葉を漏らすとその灯りはさらに揺らいだように思われた。即座に近寄って、灯りを手に取った。それはまさしく、自分の宝玉、自分の片割の竜瞳だった。

トーイは大事に懐にそれをしまうと、今来た道をすぐさま引き返した。

地上へ向かう階段を登ってる間にもその宝玉は温かさを増し、トーイの奥深くが熱く滾ってくる。これでもか、これでもかというほどの宝玉の主張にトーイは胸が苦しくなり、宝玉と共に溶けてしまいそうだったがその衝動に耐えた。十歳の小さい体には、石の持つ熱は身を焦がしてしまいそうなほどに強い力だった。ようやく地上に出て、空を見上げ父の姿を探す。

上空には瘴気はもうたくさんは残ってはいなかったが、全て殱滅させるつもりなのだろう。先頭に立つ一際大きな竜に向けて、トーイは飛び立った。





******




 ソーイは、美しく敷き詰められた石の階段を登っていった。時折感じる潜む気配に目を向けるとその影は遠くに逃げてしまうか、瞬時に消えてしまうようだ。彼へ会いたい故の焦燥感からか、ソーイは力の加減が上手く出来ていないようだ。

だけどそれすらも気にしていられないほどに、会いたい気持ちが募って抑えが効かない。

気持ちは昂っているにも関わらず感覚は研ぎ澄まされているようで、僅かばかりの彼の気配でも辿ることは難しくは無かった。

だが彼の気配にだけ注意を払っていたからだろう。ソレの気配にソーイが気付くのが遅れた。あっと思った時にはソレは目の前にいて、赤い瞳でソーイを見つめていた。咄嗟に後ろに飛ぼうとしたが既に囲まれていたようで、ソーイは身動きが取れなくなった。



「みいつけた」



赤い瞳のソレはソーイに言うでもなく、シューッシューッと漏れる息に混ぜ込み言葉を吐いた。

ソーイの意識は、そこで途絶えた。











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