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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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16.捜す




 デュモールサンから内緒話をされた後、トーイとソーイは考えた。

何故そんな話を自分たちに聞かせたのかを。だけど考えても答えなんて出なかった。まだ十歳の双子だ。大人の考える事なんて理解できない。ならば。



「トーイ。わたしをその島まで連れて行って。トーイなら飛べるでしょ」


「竜の国からなんて無理だよ。ミミルファからだって休み休みで、どれくらいかかるか。それにそんなに長い間二人っきりになんかなれないだろ」


「ミミルファからなら大丈夫で、見つからなきゃいいってこと?それならわたしを乗せて飛んでくれる?」


「……」


「お願い。心配なの。絶対何かあったのよ。それで今もきっと苦しんでいると思うの。わたしが行かなきゃだめなの」


「……わかったよ。じゃあ、ソーイの作戦を聞かせて」


「いい?トーイは昼間、兎に角体力を温存させてね。飛行は夜よ。出発は父さまがわたしたちを寝かせつけた後、わかった?」


「ずいぶんと簡単な作戦だな。まあいいや、ソーイに任せる。おれはいつでもソーイの味方だからな」





******





 夜、竜王はいつもの通り子どもたち二人を寝かせつけた後、足音を立てぬよう静かに部屋を出て行った。その後、ぱちくりと瞳を瞬かせトーイとソーイは目を見合わせると、むくりと起き上がり竜王の寝室へと足音を立てずに移動する。トーイは黙ったままソーイの後に続き、こっそりと寝室に忍び込んだ。部屋に入ると小声でトーイは聞いてきた。



「ソーイ?ミミルファに行くんじゃなかったの?」


「ええ、ミミルファに行くのよ」


「転移門使わないと行けないだろ?」


「転移門は使用すると記録が残るの。わたしたちがミミルファに行ったことがバレちゃうわ」


「だからって父上の部屋にきたってさ、」

「いいから、さあ、ここよ」


 ソーイは躊躇うそぶりも見せずに壁に手を当てた。するとそこに空間が広がったのだ。



「なんで??」


「ふふ。小さいころ父さまの寝台で寝たことが度々あったでしょ。その時、壁からかあさまが出てくるのをこっそり見たことがあって。しーかーもー、ほら」


 

 そこには城の転移門と同じミミルファへの転移魔法陣が描かれていた。

目をきらきらと輝かせて言うソーイは、ものすごーく楽しそうだった。



「これを使うとね、かあさまの秘密の部屋に行けるのよ」


「たしか、あの部屋は母上しか開けられないって、」

「そう思うでしょ、でも大丈夫。トーイはわたしの中にかあさまの<書>が流れ込んでいるの、知ってるでしょ」

「もちろん」

「だからね、わたしも秘密の部屋が持てるの。でね、わたしもかあさまと同じ部屋を使いたいって思ったら、なんだか大丈夫って言われた気がして」


「あ、昨日ミミルファいったとき急にかくれんぼしたいっていうからどうしたのかと思ったら、そういうことか」

「うん。秘密の部屋にわたしの魔力を登録してきたの。だから、わたしもあの部屋が使えるから、これでこっそりミミルファに行けるはず」


「でも、かあさまにばれるんじゃあ」

「今、忙しくて秘密の部屋に行ってられないと思う。それにバレたらバレたよ」

「そうだな。やるだけやってみるか」

「多分、大丈夫な気がする。なんか、この転移陣作った時、父さまはこれは守る為に誓うとか何とか言ったみたい。だからわたしたちが悪いことにさえ使わなければ、味方になってくれる気がする」

「じゃあ、俺達も守る為に使うと誓うよ!」



 そして二人はなんてことなく、ミミルファに潜入したのだった。




 ミミルファに潜入すると秘密の部屋のすぐそばにある林の中を出発地点とし、トーイの体力の続く限り飛んだ。そして限界まで来ると、そこにソーイが転移門を設置する。そしてそれを使って城に戻る。次の夜は出発地点から作った転移魔法陣まで移動し、そこからトーイの背に乗って飛行する。限界まで来たらそこに転移門を設置する。

それら一連の行動を夜になるとひたすらに繰り返した。


 疲労したのは飛行するトーイだけではない。転移魔法陣を設置するソーイもまた、沢山の魔力を消費するのだ。しかも設置するときには、かなり明るい光が出る。それを隠すためにまず結界を張り、その中で門を設置するという、十歳の子どもにはかなりきつい作業だった。

城に戻ると二人は泥のように眠る。昼間の訓練や学習もかくれんぼがいいとねだっては、隠れて仮眠をとる。ヤポネという国の瞑想とやらが心身の発達にいいらしいと高説をたれては、おかしなポーズで座り瞑想してる風を装って仮眠をとる。

その合間にトーイはユーキにさりげなく聞いてみた。



「なんかさー、みんな忙しいみたいだけど、ユーキは準備とか、そこに行ったりしなくていいの?」


「俺は当日、行くだけっすねー」



(……ということは、毎日俺達についているユーキの任が外れた時が、その日ってことだ。それまでに島に辿り着かないとな)



 そうして二人はちょうど事が起こる前の晩、どうにか島の見えるところまで到達したのだった。トーイは遠くに島が見えた時心の中の、体中のざわざわとしたものがしっかりとした形になったことがわかった。




「あの島に、俺の竜瞳がある。あそこに俺の番がいる!」




 だが、そこでトーイの力は尽きた。


すぐそばまで来ているのにと非常に悔しい気持ちになった。だけど、明日の晩は島に上陸できるからと「よく寝て次の晩に備えてやる」とふらふらになりながらも宣言し二人は気持ちだけは意気揚々と城に戻って、言葉通りぐっすりと眠った。


いつもなら朝、規則正しく起こされる双子たちだったが、筆頭の護衛騎士もつかないこんな日は眠っているならその方がいいとトーイとソーイは起こされることなく、ただひたすら力を戻すための睡眠をとることが出来た。起きた時には陽は既に高くまで登っていて、しかも扉の前にはユーキの姿はない。



「ユーキは?ねえ、今日ユーキはいないの?」


「はい、今日は別の任に就いておられます」



 トーイとソーイは目を合わせると、いきなり走った。王城の転移門へと。今日は記録に残ったっていい。一刻も早く辿り着く為の最短ルートを選ぶ。みんなが呼ぶのも気にせず、走りに走った。途中、騎士たちが前に立ちふさがりもしたが、日々の成果よろしくなんとかかわし走り続けたが途中ソーイの足がもつれると「俺に摑まれっ」とトーイは叫んで竜に変化した。そしてソーイを乗せ追っ手をかわしつつゲートへと飛び込んだ。

ミミルファ国に移動してからもトーイの背に乗り、ソーイが設置したゲートをひたすら移動しまくる。ようやく島が見える最後のゲートまでやってきた時、トーイは自分の番が近くにいるという事実にドキドキする

胸の高鳴りが抑えられなかった。対照的にソーイは黒い霧が立ち込めている様子とそれを取り囲む大勢の人の姿に言いようのない不安に駆られた。



「行くわよ、トーイ」

「ああ、しっかり捕まっていろ」



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