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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第七章 竜の愛し子と魔法使い
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18.闇の精霊王




「ソーイっ、ソーイっ」



 黒く霞がかった意識の中、私を呼ぶ声がする。その声に安心して再び微睡みかけた時、体を大きく揺すられた。ああ、そうか。わたし、彼に包まれている。

……包まれている?

ぱちくりと瞬いたわたしの瞳に映ったのは、しばらくぶりの彼の姿だった。




「クラ…ミ…」


「ああ、よかった。目を覚ましたんだね」


「クラ…あっ、ごめっ、もう少しで名前を呼んでしまうところだったわ」


「だから、何度も言っているだろう。君に名前を呼ばれても、私は大丈夫だよ。むしろ嬉しいのに」


「だけど、貴方に何かあったらと思うと」


「君が名前を呼んでくれると強くなれるって何度も話しただろう?」


「そうだけど……、それよりここは?わたし、どうして?」



 彼の手を借りてソーイは横たわっていた体を起こした。すると彼の後ろに二つの影があった。その一つは先ほどの赤い瞳の黒い影だ。その影は縮こまりながら「申し訳ありません」と更に身を縮め震えているようだった。



「あら、あなたがここへ連れてきてくれたの?ありがとう」


「ソーイ、ありがとうじゃないよ。君は危うく攫われかけたんだよ。届け先が私のところでなかったらどうなっていたことか」


「だけど、貴方の元に届けてくれたのだから、結果としては最良よ、ね?」


「……申し訳ありません」


「彼はね、サーガスというんだ。多少、早とちりというか、思い込みが激しいというか。でも根は悪い奴じゃないんだよ。武では右に並ぶものはいないんだけど、真っ直ぐすぎて」


「ふふ、そうね。真っ直ぐここへ運んでくれたんだもの」


「……ソーイはもっと疑ってかかった方がいいと思うよ」


「大丈夫よ。囲まれた時、貴方の仲間だってわかったから抵抗はしなかったのよ。じゃなかったら、わたしがそう簡単に捕まるわけないじゃない」


「……全く、心配で目が離せないよ」


「目を離したのはそっちでしょ。全然会いに来てくれないんだもの。寂しかった」


「悪かった。だけどこの島から離れられなくて。でもソーイが居ればもう大丈夫。みんなを守ってやれる」


「みんなって?」


「闇に逃げてきた心が弱ったもの達だよ。ソーイのお蔭で濃い闇を作り出せるから、みんなの居場所を作ってあげられる」


「……ねえ、もしかして、そのみんなを、わたし、消してしまったんじゃないかしら?」


「えっ?」


「島の上空にうじゃうじゃいたのをここに上陸する前に、その、カッと照らしてしまったというか、光が、その」

「ああ、それなら大丈夫だよ。そいつらは負の感情が膨らんでできた憎悪の塊で小さな生き物に寄生している奴らなんだ。寄生された生物もそれで利を得ようとするものばかりだから、光に照らされても全く問題ない。私が庇護しているもの達は、今はきっと岩場の影か海底にまで潜って隠れているかもしれないね」


「そっか。少し安心した。なら上空に残っているのは、全部消しちゃって大丈夫?」


「ああ。そうしてくれれば逆に助かる。人の世界に害を及ぼしてしまって申し訳ないと、ずっと思っていたんだ」


「別に貴方が生み出したわけじゃないでしょ」


「そうなんだけどね。私の力があれば抑え込めたものだろうし、自分の非力さが情けなくって」


「そんなこと言わないで。わたしがいるじゃない。それにもうここまで簡単に来られるようになったから、もういつでも大丈夫よ」


「ふふ、ソーイは相変わらず頼りになるな」


「じゃあ、ちょっと外にでて片付けてくる」


「なら、わたしも付き合おう。ソーイの輝きを間近で受け止めたいしね」



 王はソーイを抱きかかえると大きな窓の外のテラスに向かった。途中振り返り「シェード」と呼ぶ。



「一瞬で力を取り戻す。その後の皆の者への対応を頼む。かなり弱っているだろうから、ゆっくりと英気を取り戻してもらいたい。もちろんシェードもな。苦労を掛けた」


「は。ありがたきお言葉」


「サーガス。私が力を取り戻したのち、一緒に竜族の姫を捜すぞ。よいな」


「かしこまりました。申し訳ありません」


「では、参ろう」



 ソーイを抱くうちに王の力はどんどん増えて行っているのが周りの者達も感じられた。そして、王の表情がものすごく甘く柔らかい。ソーイを見つめる瞳はまっすぐでソーイ以外、眼に入っていないだろう。

外に出ると上空では、まだ瘴気を殲滅すべくぶつかり合っているのが見えた。ソーイは目を凝らす。トーイの竜の姿が見える。もう少しで竜王のところに辿り着きそうだ。

ソーイは安心して息を吐いた。そして祈った。この地の安寧を。闇を照らし更に濃い闇を作り出し、彼が生きやすい場所を作るのだ。途端、ソーイの体から金色の光が溢れ出す。いつもは調性するように魔導師からは言われていたが、今は彼のためにこの力を解き放つ。


ソーイが心の解放を念じた時、力も大きく膨らんだ。















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