精神-9
燐は長四郎に会うため、事務所を訪れた。
つい先日から、長四郎と音信不通となったためだ。
「あれ?」
事務所に鍵がかかっていた。
燐はカバンから合鍵を取り出し、中に入る。
長四郎の姿はなかった。
「居ない・・・・・・・」
燐はため息をつきながら、長四郎の作業机に向かう。
椅子にドカッと座り、机の上の物を物色し始める。
「ふ~む。ないなぁ~」
何か手がかりがあるかとも思ったんだが、無かった。
次の一手を繰り出すことにした。
長四郎愛用のノートパソコンだ。燐の手に掛かればパスワード解読なんて朝飯前。
長四郎のノートパソコンにログインして、捜査ファイルを開く。
最近の日付で付いているファイルを開く。
そこには写真ファイルが入っていた。
「どれどれ」
犯人に繋がる手がかりがあるのかと期待してファイルを開く。
すると、そこに映し出されたのは野神の姿ばかりであった。
家から会社までの往復を写したものばかり。
「狙ってるのあいつじゃん・・・・・・・」
写真をスクロールしながら、長四郎の思考を読み取ろうと一生懸命考えていた。
「まさか・・・・・・・ いや、でもそんなまさか・・・・・・・」
燐が行きついた答えは、意外なものであった。
そして、当の本人である長四郎はというと・・・・・・・
被害者達が勤務する会社を巡っていた。
「そうですか。そんなことが・・・・・・・」
野神と被害者は仕事でトラブルになっていた。部材の送付先を被害者が間違えてそれに激昂した野神は3時間もクレームの電話を入れ続けたとのこと。
「ええ、彼も困っていました。ですから、担当を変えてくれと頼まれた矢先で」
被害者の上司からそう話された長四郎は「それは何と申してよいのやら。分かりました。本社に持ち帰って共有させていただきます」そう言って去った。
長四郎は野神の話を聞くために、野神が勤める会社のコンプライアンス部の人間だと偽りコンプライアンス違反の調査で来たという理由で聞き込みして回っていた。
「次は・・・・・・・」
斑が勤めていた野神が勤務する会社からするとメインの取引先になる。
「どうも。私、ハコブネ株式会社から参りました田柴と申します」
長四郎は受付嬢にそう身分を明かし,「工事部の住友さんをお願いできますでしょうか」とアポイントメントがあるように見せかけて呼び出す。
「少々お待ちください」と受付嬢は内線で住友を呼び出す。
「御用件は?」と聞かれ、言うのを忘れたと思いながら「弊社のコンプライアンス調査にご協力いただきたく」と答えた。
しばらくして、住友が降りてきた。
「どうも、今回は弊社の野神についてお話が聞きたく」と本題を切り出した。




