精神-8
「ラモちゃん、どうしたと? そげん、顔をしかめて」
一川警部の言う通り、燐の顔は険しい表情をしていた。
ご飯を食べているにもかかわらずにだ。
「美味しくない?」絢巡査長にそう聞かれて、「いや、そうじゃなくて・・・・・・・」と答える。
「ははぁ~ん。長さんと行動できんのが寂しいんやね」
一川警部の脛に爪先が刺さる。
「グボッ」痛みに耐えることができず、変な声を出してしまう一川警部。
「事件のこと?」
「うん」
悶絶する一川警部を他所に会話を続ける女子二人。
「いやさ、安直過ぎないと思って」
「どういうこと?」絢巡査長は説明を求める。
「いや、いくら交友関係があるからって、尾行までするかなと思って」
「そういうことね。実はね、あの人に聞き込みに行った刑事の証言なんだけど、被害者のことを悪く言っていたらしいの」
「それだけで?」
「ラモちゃんが思うことも分かるけど、大人の世界で相手の悪口を言う場合って、相手に非がある場合なんだよ」
「非があるんじゃないんですか?」
「それがね。他の人達から聞くとそういう話はほとんど聞かれないのよ。勤務態度、生活態度もすこぶる評判が悪いってわけでもないし」
「プライベートはどうなんです?」
燐はアジフライを頬張りながら、質問した。
「それもね。悪い評判を聞かないの」
「へぇ~」
「でも、悪口だけで疑うのはどうかと思うんだけどね」
「絢ちゃん。忘れとうとよ。例の人は、アリバイが曖昧やっていうことを」
「あ、すいません」
「アリバイがないの?」
「うん」
「アリバイがないか・・・・・・・」
燐はまたもや顔をしかめる。
「さ、事件の話はここまでにしてご飯食べて帰るよ」
一川警部にそう促された女子二人は「はぁ~い」と返事をして食事を再開する。
翌日
長四郎はタブレットで事件資料を読みながらソファーで寝転がっていた。
ドタドタドタ
階段を駆け上がる音がする。足音で燐だと察する長四郎は身構える。
ドアが開き、「おい! どういう事だ!!!」と憤慨した野神が事務所に入ってきた。
長四郎はソファーから飛び上がり「ど、どうされましたか?」と用件を聞く。
「まだ狙われてるぞ!!」と長四郎に詰め寄る。
「落ち着いて」
巨体に詰め寄られると人間萎縮してしまうもので、今の長四郎もまさにそれであった。
「今日、家を出ようとしたらまた変な奴が居たぞ!!」
ああ、まだ内偵を続けていたかと思いながら、「その原因を突き止めたと昨日申しあげたじゃないですか」と冷静に答える。
「それが何なんだよ!!」
長四郎は困り果てる。何を言っても地雷でどうすればよいのかと考えていると「もういい!!」と切り上げて帰っていった。
とんでもない依頼人を引いちまったと思いながら、タブレットに視線を戻す。
「変な奴・・・・・・・」
長四郎は気になり、一川警部に電話する。
「一川さん。おはようございます。ちょっと、聞きたいことが・・・・・・・」
長四郎は一川警部の回答にある仮説が頭の中で組立られた。




