精神-10
長四郎が聞き込みを行っている頃、一川警部と絢巡査長の二人はフープの営業所へ来ていた。
「故障車についてですか?」
営業所の担当者からそう聞かれた一川警部は「はい」と返事をする。
「確かにここ二ヶ月、この営業所管内では増加傾向にはありますね」
「原因は分かりますか?」
「はい。少々お待ちください」
担当者はタブレットを操作して作業報告書を確認する。
「パンク、バッテリー故障。ああ、ダントツで多いのが体重オーバーによるモーターの故障です」
刑事二人は顔を見合わせる。
「それって、誰が利用したとか分かりますか?」
「それに関しては、システム部へ問い合わせてみないと」
絢巡査長に申し訳なさそうに答える。
「問い合わせ、お願いできますか? 出来れば移動経路も」一川警部はそう頼むと「はぁ、分かりました」と了承する。
営業所を出た刑事二人は、捜査車両に乗り込む。
「長さんから頼まれましたけど、犯人に繋がるんですかね?」絢巡査長はそう疑問を上司にぶつける。
「繋がっとうやないと?」
一川警部は光り輝く頭をぺちぺち叩きながら、答える。
「野神さんと言う人が犯人なんですかね」
「どうやろうねぇ~ でも、事件と繋がりがあるのは間違いないばい。これ、あたしの経験」
「はぁ。それで、お昼ですけどどうします?」
「お!」
一川警部は車載の時計で時間を確認する。時計は11時55分を示していた。
「そやねぇ~ 美味しい定食屋さんがこの近所にあるけん。そこ行こ」
「はいっ!!」
絢巡査長は定食屋に向けて、車を発進させた。
燐は長四郎が行きそうな所に目星を付け、その場所へ向かっていた。
「巡りあえば~」と訳の分からない歌を歌いながら歩いていると、居酒屋の軒先で昼飲みしている長四郎の姿があった。
「てめぇは昼から何、飲んどんのじゃ!!」
燐は長四郎の後頭部にチョップを食らわす。
「ゲボッ!!」
鼻から日本酒を垂れ流す長四郎。
「あ痛たたたたた」鼻の中で染みる酒に悶絶する長四郎を他所に「ねぇ、野神さんが犯人だと思ってる?」とドストレートな質問をぶつける。
「さぁ?」
「とぼけないでよ!!」
「ああ、こぼれる、こぼれる」
テーブルに載った酒を気にする長四郎に燐はすんごい剣幕で睨む。
「怖い、怖い。ラモちゃん、顔と態度に出るから教えたくないんだよ」
「何ィ~」
ここで暴れられたらひとたまりもないので、長四郎は折れることにした。
「約束。顔と態度を改めること。これが絶対、条件だ」
マジトーンの長四郎に「分かった」と納得する燐。
「良いだろう。俺は、野神が犯人だと思っている」
「どうして?」
「まぁ、色々と理由はあるが。普通、狙われてる男がだ。理由とか心当たりを話すだろ? それが一切ない。周囲に気を配って生活するには何かしら後ろめたいことがあるからだ」
「それだけで?」
「んな訳ねぇだろ。ま、ここから先は企業秘密。ラモちゃんには、ちょっち頼みたい事がある」
「何?」
長四郎は手招きして、燐に耳打ちした。




