精神-4
“速報です。港区 芝で殺人事件が発生しました。被害者は会社員の男性とのことです。”
テレビから物騒なニュースが流れる。
「はぁ~あ。嫌な世の中だねぇ~」
長四郎は珈琲を飲みながら、テレビを見る。
「おっは~」
燐が陽気に事務所へと入って来る。
「はい。おはようさん」
長四郎はテレビに視線を映す。
「土曜日だっていうのに、しけてるね」
「土曜日なのに友達や彼氏とアオハルせずに、探偵事務所に乗り込んでくる方がヤバいと思うけどね」
「寂しい。独身男性の相手をしてあげているだけ。感謝しなさい」
ああ言えばこう言う女だと思う長四郎。
「ね? 昨日の事なんだけどさ」
「ああ」
「あの人、本当に狙われてるのかな?」
燐は昨日の件で、狙われてる節はなかったと感じていた。
「それはどうだろうな」
「どういうこと?」
「昨日、帰りに変なおっさん二人とすれ違ったろ?」
「そうだっけ?」
「観察力のない奴だなぁ~」言うと同時にヘッドロックされる長四郎。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
平謝りし、ようやく解放される。
「で、どういう人間だったの?」
「スーツにサングラスの男二人」
「如何にもじゃん。なんで、放っていたの?」
「依頼は護衛であって、捕まえることじゃない」
「いや、捕まえろし」
燐は頬を膨らませ、反論する。
「面倒くさ」
探偵にはあるまじきことを言う長四郎。
「あんたねぇ~」
長四郎に取っ組みかかろうとした時、長四郎のスマホが鳴る。
「はい、もしもし」
「野神です」
「昨日はどうも」
「家の前に変な人間が」
「どういう人か分かります?」
「サ、サングラスを掛けた男が」
例の奴だと思いながら、「危ないですから、家から一歩も出ないでくださいね」と忠告して電話を切る。
「どうしたの?」
「例の男が家の前で張っているんだと」
「出動ね!」
燐は嬉しそうに事務所を飛び出して行った。
野神の連絡から30分後、現場に現着した長四郎達。
運良くも野神の住むアパートから少し離れた斜め先の電柱に身を隠すようにして男二人が立っていた。
「私、行ってくる」
「おい、待て!」長四郎の制止も聞かずに燐は男二人の元へと駆け寄る。
「お兄さぁ~ん」
燐は吞気に男二人に声を掛ける。
「何してるんですかぁ~」
「仕事中だから、邪魔しないで」とサングラス1が言う。
「人をストーキングすることが仕事かよ」ボソッと呟く燐。
「え?」サングラス2が身構える。
「もうちょっと、マシなウソがあるんじゃない?」
「君はいったい?」
「フフッ、知りたい」
サングラス二人はうんと頷く。
「教えねぇ~よ。バァ~カ!」
「なっ!?」まさかの一言にたじろぐサングラス2。
「あんまり、邪魔するようだと」
「なんだよ!」
まるでヤンキーみたいな言動の燐を見て、長四郎は深いため息をつく。
「たい」そうサングラス1が言いかけた時、燐から先制攻撃の脛蹴りをお見舞いする。
「あ!」
サングラス2は燐の腕を押さえつけ、抵抗出来ないようにする。
「離せよっ! てか、助けろ!!」
傍観者を気取っていた長四郎に助けを請う燐。
長四郎はまたもや深いため息をついてから、燐を取り押さえるサングラス2目掛けて走っていった。




