精神-2
野神から職場に迎えに来るようにとの指示を受けた長四郎は、野神の勤務先へと向かった。
「ねぇ、どんな勤め先なんだろ?」
燐はワクワクしながら、長四郎に付いて行く。
「電気の施工会社さ」
「調べたの?」
「ああ」
二人はそんな会話をしながら、新馬場駅から消防署へ通ずる道を歩く。
「ここを曲がる」
消防署の突き当りを曲がり、少し行くとハコブネ株式会社という看板が立っていた。
「ハコブネ?」
「そう、ここが依頼人の勤務先だ」
長四郎はハコブネの品川事業所への敷地内へ入る。
「どうも」
電材を運ぶ野神に声を掛けると、「ああ、ちょっと待っててね」と言いながら倉庫へと消えていった。
「忙しいそうだね」
「ああ」
それから5分近くの経っても、野神は戻ってくることがなかった。
「ねぇ、まさかとは思うけど。中で襲われたとかはないよね?」
「気が短いんだよ。もう少し待てや」
長四郎はスマホの時計を見ると、定時の17時30分を示していた。
多分、着替えて帰る準備をしているのであろう。そう思っていた。
「私、見てくる!」
燐は倉庫の中に入ろうとするが、長四郎はそれを止める。
「待て待て。30分。30分戻って来なきゃ行こう。な?」
「分かった」燐は不服そうに了承した。
それから、野神を待つ二人。
定時なので勿論、退社する社員と出くわす二人は気まずそうに「こんにちはぁ~」と挨拶してやり過ごす。
そして、30分が経過した。
「私、見てくる!!」
待っていました! と言わんばかりに、燐は倉庫内へと入っていく。
「野神さぁ~ん」
そう呼びながら、倉庫内をうろついていると倉庫内の事務所に明かりが点いている。
「野神さぁ~ん」
カーテンを返して中を覗くと、フヒフヒ言いながらパソコンと睨めっこしている野神の姿があった。
「野神さん」
「何?」怪訝そうに返事をする野神。
「いや、何とかじゃなくて。お帰りにならないんですか?」
「待ってろって言ったよな? 待てよ!!!」
「なっ!」
燐が言い返そうとした時、口をふさがれる。
「すいません。どうぞ、お仕事続けてください」
「何なんだよ!」
「申し訳ございません。では、また」
抵抗する燐を引きずり、事務所を後にした。
「ぷはぁ~」息を吐いてから「何すんのよ!」長四郎に蹴りを入れるが寸でのところで躱された。
「ラモちゃん。あの人に何を言われても基本はYesで通せ」
「なんで?」
「なんでもだ」
「意味分かんない」
それから30分後、ようやく野神が姿を現した。
「帰ります」
「はい」
野神が先行して長四郎と燐は後方を歩く。
不貞腐れた顔で歩く燐に対して、長四郎は飄々とした感じで付いて行く。
そんな三人を物陰から観察する男が二人居た。




