精神-1
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
フードを目深に被った男は、荒い息遣いを整える。
眼下には、血を流す死体が二人・・・・・・・
「お前達が行けないんだ・・・・・・・」
フードの人間はそう言い、その場を後にした。
「ふわ~わ」
吞気に大きな欠伸をするのは私立探偵の熱海 長四郎 28歳。
彼は高校生時代に数多くの事件を解決した男で、今はしがない私立探偵。
そして・・・・・・・
「なぁ~に、暇そうにしてんのよ」
そう言うのは、自称助手である女子高校生・羅猛 燐 17歳。愛称は、ラモちゃん。
彼女は長四郎の事務所に居座り、勝手に助手を名乗り数々の事件を持ち込んでは長四郎の力を借りて事件を解決してきた実績を持つ。
「それは、こっちの台詞だよ。学校サボっている奴に言われたくないんだよ」
ここで説明すると、燐は一応成績優秀でテストではいつもトップ成績を納める秀才でありここだけはご都合主義を通しているのがこの小説の良いところである。自画自賛!!
話を戻そう。
「サボってません。アルバイトをしに来ているんです!」
「ア、アルバイト!!」
長四郎は素っ頓狂な声を出す。何故なら、自称助手がアルバイトと言い出したのだ。
今まで無報酬でやってきた所に今度は報酬まで取られるとなるとたまったものじゃない。
長四郎は嘆く。
「何よ。何、驚いてるわけ?」長四郎に詰め寄る燐。
「怖い。怖い」
長四郎は身を縮こめ、戦々恐々とする。
そんな二人が睨めあっていると、事務所のチャイムが鳴る。
「はぁ~い」
燐は助手らしく、ドアを開けに行く。
ドアを開けると、そこそこタッパのあるふくよかな男がフヒフヒ音を立てながら突っ立っていた。
「依頼ですか?」
「はい」
「どうぞ」
燐は男を中に招き入れる。
「依頼人さんだよぉ~」
燐はそう言いながら、男を来客用のソファーに座らせる。
「どうも、初めまして。探偵の熱海です」
長四郎は男に名刺を渡す。
「ありがとうございます。私、野神 弘志と申します」
「野神さん。それで、ご依頼というのは?」
「実は私、狙われてるんです」
「狙われてる? 誰に?」
「ここ最近、おかしいんです。見知らぬ誰かに狙われている気がして・・・・・・・」
「心当たりは?」
「確信めいたのは、昨日なんです」
全然話が通じないなと思いながら、長四郎は聞き耳を立てる。
「帰り道の事です。サングラスを掛けた男二人がずっと私のことを尾行しているんです」
「たまたまじゃないですか?」
「たまたまとは何ですか! 僕は本当に狙われているんだ!!」
「これはこれは失礼しました」
長四郎は頭を下げて詫びる。
「結構、困っているようだし。受けたら?」
「え?」
正直言って断ろうと思っていたので、長四郎は困り果てる。ここで断ろうものなら、燐が暴れ出し、面倒くさいことになるからだ。
「受けてくれますか! ありがとうございます!! 私の職場は、ここです」
依頼人の男は名刺を机に置いて「定時は17時30分です!! では」そう言って、去っていった。
「あ~あ、行っちゃったよ・・・・・・・」
「面白そうじゃん」
乗り気な燐に対して、長四郎は嫌な予感しかないかった。
そう、この予感が的中にするとは長四郎本人も分かっていなかった。




