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幾星霜の月の人  作者: 青門 利空


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クヌギの樹の上で

投稿遅れてすみません。

慈円と通夜に行った翌日。



朔丸は午前中の仕事や勉強を終えて、


いつものカイとの待ち合わせ場所に


そそくさと向かった。



山のふもとに立つ大杉。


幹は大人三人が手をつないでも

抱えきれないほど太い。


朔丸とカイは、

いつもその木の下で待ち合わせをしていた。



カイ来てるかな、怒ってないかな……と


心配しながら行くと、そこにはカイが待っていた。



「ごめん、昨日は来れなくて!


 急な用事が入ったんだ……」



謝る朔丸にカイは飄々と



「気にすんな!


 そういうこともあるし。


 それより早く山の中いこうぜ」



とこともなげに答えた。



朔丸はほっとすると同時に、カイっていい奴だなとじ~んとしていた。



山道を半刻ほど歩くと、クヌギの大木があった。



カイはするすると難なく木を登っていく。



朔丸はカイに貸してもらった麻の小袖の着物に着替えると



カイの後を追った。



しかし、カイほどは早く登れず、慎重に幹に



足をかけられるところを探し登っていく。



そうして、やっとカイのいるところまでくると、



カイは



「大丈夫か?大分木登りなれたな」



とわらった。



そうして、それぞれ、幹と枝の間で体を落ち着けられるところをみつけると



そこに体を寄りかからせる。



「今日も海が見えるぜ」



カイが指さす方向をみると、遠くに海が見えた。



「わあ、すごいね~。遠いけどいつか行ってみたいな」



朔丸が言うと、カイも頷きながら



「そうだな。話に聞くと海の魚も旨いらしい。


 カニも沢蟹よりでかくて、うまいらしいぜ」


と答えた。



「そうなんだ。


 いつかカイと一緒に行きたいな」



朔の言葉にカイは笑顔で



「そうだな、いつか絶対一緒に行こうぜ」



というので、朔丸はいつかの未来を想像して顔をほころばせた。



カイと一緒だったら絶対楽しい。



例え海でなくても、どこででも。


挿絵(By みてみん)




そう思いながら、朔丸は昨日買ったお土産を懐から取り出した。



「これ、お土産。

 飴…そして、組み紐」



「えっ、お土産買ってきてくれたのか?

 うわ~飴じゃん、嬉しいわ。

 なんか悪いな、ありがと。



 でも、なんかこの組み紐高級そうだな?


 なんか花の形に結ばれてるし」


カイは組み紐を手に取りしげしげと眺める。



「それ、お守りだって。

 その色みたとき、なんかカイっぽいなって」


「俺っぽい?」


「うん、だって、海って漢字はカイとも


読むでしょ?


それ、綺麗な青色だから……。


海の青い色、つまりカイの色って思ったんだ」



朔の言葉にカイは


「……そっか。ありがとな…。大事にするわ」


と感激しているようだった。



カイの顔はうっすら赤い。


そんなに喜んでくれるなんて。

カイって組み紐みたいな綺麗なものが好きだったんだ。



買ってきてよかった。



朔はカイが予想以上に喜ぶのを見て嬉しくなった。




木の間を5月の爽やかな風が吹いていく。


カイは、朔がくれた飴を二つに折ると、

ひとつを朔にわたした。


「全部食べていいのに」


朔の言葉に


「二人で食べた方がおいしいじゃん」


そう言って笑うカイの横顔を見ながら、

朔も飴を口に入れた。


甘い味が口の中に広がる。



幸せだな~と朔はぼんやり遠くをみながら感じていた。



カイは飴を口の中で転がしながら


「そういえば、さっきもらった組み紐ってどう使うんだ?」


と尋ねてくる。


「うーん、なんかお守りとかになるらしいよ」


「へ~、そっか。


 でも懐にいつもいれてて、なくすと大変だよな」


カイは思案顔になる。


「よし、こうしよう」


カイはそう言ったかと思うと、組み紐にたまたま持っていたらしい


麻の紐に器用に結び付け首から下げた。


「こうしてりゃ、なくさないだろ」


そうして、花の形の組み紐を両手でもち、ニカっと笑う。


「う、うん……。嬉しいけど、


首から花の形の紐がみえるの、カイは恥ずかしくない?」


おずおずと朔丸が尋ねると


「バカいうな。


朔からの贈り物が恥ずかしいわけないじゃん」


とカイはあっけらかんという。


それに朔丸は


「……そっか。ありがとう」


と顔を赤らめた。


そして、朔丸が顔を赤らめるのをみて、


カイも顔が赤くなる。



一瞬二人とも沈黙した。



「そういえば!」


カイが、気まずくなったようで、

                          

雰囲気をかえるように話し始めた。



「海って魚や貝やカニ以外もとれるらしいな。


 朔は本をよく読むから詳しいだろ?


 ほかにどんな生き物がいるのか教えてくれよ」



「う~ん、そうだな。


 タコとかかな」



「あ、それ知ってるぜ。

 

 干物でたまーに、村にも行商人が売りに来る。


 でも、足だけで、どんな姿してるのか知らないんだよな」



カイが不思議そうな顔になった。



「うん、僕も実際は見たことないんだけど


 絵巻物にタコが書いてあるのはみたよ」



「へー、どんな形?」



「まず、足が8本あって」



「8本!?そんなにあんのか?」



驚くカイの言葉に朔丸はつい笑いそうになった。



「しかも、ぬめぬめしてて、頭はぶよぶよしてるらしいよ」



「うへー、気持ち悪いな、化け物じゃん」



カイがしかめ面をするので朔丸は思わず声をあげて笑ってしまった。



そして、少し意地悪な気持ちになり、


「ちなみにイカの足は10本だって。


中には船より大きいのもいるらしいよ」


と付け足すと、


カイは、両手で自分の体を抱きしめた。


「やめろよ!鳥肌たってきた!!」


本気で嫌そうな顔をするので、朔丸は


そのあとお腹をかかえて笑った。


その笑い声はしばらく木々の間に響いていた。

















 


















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