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幾星霜の月の人  作者: 青門 利空


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15/28

木漏れ日

翌朝。



朔丸は体を起こせるようになっていた。



昨日食事をとったせいか、体に力が入る気がする。



あと、カイが自分を心配してきてくれたから――。



カイに会いたい。



朔丸の中で、カイに対する想いはますます強くなっていた。



襖の外に運ばれてきた食事を



朔丸は平らげた。



そして、朔丸を心配して、様子を伺っていた弥吉と千代若は



朔丸の食べた食事の食器が廊下に出されているのをみると



朔丸の部屋にやってきた。



「大丈夫?朔丸?」



千代若が心配そうな顔をする。


「うん、ありがとう。


 昨日、カイを連れてきてくれたんだよね。


 おかげで元気出た」



にっこりする朔丸に



「本当?よかった。心配したんだからね。


 ご飯たべないとダメだよ。


 人間食べないと元気がでないんだから」



千代若が眉をひそめて注意する。


その後ろで弥吉は何も言わずにだまったままだった。



おそらくだが、弥吉は自分と慈円との間にあったことを


悟っている。


それでも何も聞かない。


なんだかそんな気がした。


「弥吉もありがとう」


朔丸が声をかけると、弥吉は



「あぁ、あんまり無理するなよ」


とやっとその重い口を開いた。


そして、


「今日も、お前は体調が万全じゃなさそうだし、


 休んでいいってことになっているから


 気分転換してきたら」


と言った。


暗に、カイと気晴らししてくるのを勧めてくれているんだな


と朔丸にはわかった。


「そうだよ~。熱はないんでしょ?


 じゃ、こんな部屋の中にずっといたら気持ちも湿っぽくなっちゃうよ。


 外に出て早く完全復活しないと!」


と千代若も勧めてくる。



朔丸は、その言葉に甘えてカイに会いに行くことにした。




三日ぶりに外に出ると、


外の光がかなりまぶしいように感じた。


朔丸はいつものカイとの待ち合わせ場所の


ふもとの大杉のところへ向かう。



まだ、午前中だから、きっとカイはまだ村の仕事を


しているだろう。



でも、気持ちが急いて足がむかうのを止められない。



お昼まで、この間のお返しに今度は僕が野イチゴでも探そうか。



そう思いながら足を進めると大杉の姿が見えてくる。



次の瞬間、大杉の根元に腰掛けている見慣れた姿が目に入った。



カイだった。



朔丸は嬉しくて思わず早足になる。



カイも朔に気づき、嬉しそうな顔になった。



「朔丸!」



嬉しそうなカイをみると自分も自然と笑顔になるのが分かった。



「カイ、来てたの?村の仕事は?」



「大丈夫、昨日のうちに今日の分までもう終わらせてた」



「……そうなんだ。なんで?」



「お前に会いたくて。心配だったから」



カイの言葉に心があたたかくなる。



それと同時になんだか胸がツンとして泣きたくなった。



朔丸はそんな表情をみられたくなくて、顔をそらしながら尋ねた。



「そっか。今日はどうするの?」



「そうだな、どうしようか?


 なんかしたいことあるか?」



「そうだね…。


 なんか海を見たい気がする」



朔がつぶやくように言った。



「そっか、じゃ、いつもの木に登るか」


朔はそういって立ちあがった。



クヌギの木にのぼると、いつものように遠くに海が見えた。



かすかに、波が太陽を反射してキラキラしているようだった。



朔は、太い木の枝が、集まっているところに腰かけ、しばらくぼーっとする。


挿絵(By みてみん)



ここ最近色々なことがあった。



心底疲れていた。



カイはまた何も言わず、何か手作業をしているようだった。



しばらく、風が木々の間を通り抜け、葉っぱがさわさわと揺れる音がしていた。



たまに、どこかでオオルリの鳴き声が聞こえる。



静かだな……。



朔丸は思わず微睡んでいた。




しばらくすると、カイが



「なんか腹減ったな……」



と言い出し竹皮で包んだ握り飯と取り出した。



表面に薄く味噌がぬられており、焼き目がついている。



「母ちゃんが、今朝あぶってくれたんだ。


 うまいぞ」


そういいながら、カイはその俵型の握り飯を朔に差し出してくる。



朔丸は両手で受け取ると、一口、口に入れた。



「……おいしい」



ぼそりという朔丸にカイは



「だろ?俺、大好物なんだ」



そういいながらニカっと笑う。



「カイがくれるものはいつもおいしいね」



朔丸がほほ笑むと、カイは



「そうか~?朔丸の方がいいもん食べてそうだけどな」



といいつつまんざらでもなさそうな顔になる。



あぁ、欲しかったのはこの時間だ。


カイといるから僕は……。



朔丸はカイへの想いを再認識していた。



握り飯を食べ終わると、カイは


「今日はこれだけじゃないぞ。ほら」



そういって、干し柿を取り出した。


「えっ、干し柿?すごいね」


朔丸の言葉に、


「へへっ。梁にさがっていたやつをこっそりくすねてきたんだ」


とカイは誇らしそうに指で鼻をこする。


「え~っ、それって大丈夫なの?後で叱られたりしない?」


心配する朔丸に



「大丈夫大丈夫、二つくらいバレやしないって」


そういいながら、一つを朔丸に差し出してきた。


そして干し柿をかみちぎりながら


「うまっ」


と感想をいっている。


そんなカイの様子をみて、朔丸も干し柿を口に入れる。


かんでいると口の中にじんわりとした甘みが広がる。



幸せだな……。



朔丸は胸の中で素直にそう思った。




食べ終わって、朔丸が


「たくさんありがとう、ごちそうさまでした」


と手を合わせる。



「うん、それよりお前、昨日よりだいぶ顔色よくなったな。



 どこか場所移すか?」



朔丸の顔色をみて、カイがきいてくる。



「ううん、いいよ……。


 それより、カイに聞いてほしいことがある」



「そっか、わかった」



カイは朔丸に向き直ろうとしたが



「ごめん、姿勢はそのままで。


 そっちが話しやすいから」


と朔丸がいうので、カイはまた、海の方角を向いた。


























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