表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第4章 勇者決戦の道へと歩み、切り開く時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/31

第20話 何かを犠牲にして得た剣

『さて、ジン君とやら。彼女に秘めていたこくのちからの威力はいかがだったかな』


『ギュイーン!』と機械の起動音を立てて、地上最強の男児が目の前に現れる。

 その子供はこの世界の支配をたくらむ魔王、ジイ・エンドだった。


「魔王様、あっしはまだ負けていません」


「いや、君はもう用済みだよ」


「そんな、あっしはまだ戦えます」


「君もいい加減しつこいなあ。

フワリ!」


 ジイ・エンドが右手を宙に振ると、つむじ風がゲーム・オバの頭に当たり、まぶたを押さえる。


「ぎゃあああー!?」


「最強の闇魔法使いの異名と能力を与えたにも関わらず、こんなちんけな輩も倒せないとは。命をとらないだけでもありがたく思ってよね」


 そのまぶたから、おびただしい血が流れ続ける。

 どうやら魔王のフワリの呪文で、両目をやられたらしい。


「おい、女の子に対して、何てことするんだよ!!」


「あはは、こんな老いぼれの女に向かってそれかい。ガチであきれるよ」


「失礼だな。女性は何年経っても少女のような存在だぞ。しかも顔は女の命なのに」


「そうですよ、ジンの言う通りです。キュンキュンパワー!」


 ミヨがゲーム・オバに近寄り、彼女のまぶたに手をかざし、回復呪文キュンを唱える。


「はははっ、今は綺麗ごとを言ってる場合じゃないだろう」


「本当、人として最低だな」


「まあね。我輩は魔王だし、使えない部下は魔王には必要ないさ」


「その言葉、そっくりそちらに返してやる」


 僕の頭上から、無数の光の刃が飛び出す。


「フフフ、いきなりレーザー魔法かい。まあ、武器がないとなると、我輩にはそれしか効く攻撃がないよね」


「黙れ。食らえ、レーザー100!」


 両手をだらんと垂らし、ボケーと突っ立っているジイ・エンドの体に、無数の光る刃が叩きこまれる。


 しかし、彼は痛みを一言も声に出さず、体にも傷一つついていない。


「おい、まさか?」


「そのまさかだよ。変身ダマシの呪文さ」


 僕の横からジイ・エンドがケタケタと笑いながら、人だった物から変化した、粉々になった支柱を見せる。


 しばらくして、数秒後、ガタガタと大きな音を鳴らす洞窟。


「おい、何をしたんだ!?」


「なーに、ちょっとばかり、ここの洞窟の軸を崩そうとしただけだよ。ここには厄介な剣もあるらしいからね」


「何だって!?」


「さあ、モタモタしていたら、洞窟もろとも潰されちゃうよ?」


 ジイ・エンドの姿が砂のように消えて、僕は現状を理解する。

 初めから、ゲーム・オバと一緒に、罠にかけるつもりだったんだ。


「ジン、どうしますか?」


「兄ちゃん、この揺れはやべーぞ!?」


「どうもこうも、移動呪文ワープリンで逃げるしかないだろ」


「確かにそれが、一番の手ですよね」


 ミヨが回復の手を止めて、ゲーム・オバに何かを呟いている。

 するとゲーム・オバは悟ったかのように手探りで、上空に闇の呪文で穴を開け、ミヨに体をそっと寄せた。


「ケイタ君、準備はできたよ。呪文を唱えて」


「ああ、みんなオラの近くに寄ってくれ」


 みんなして、ケイタの元へと集まる。


「いくぜ、ワープリン!」

 

 僕らは光の玉となり、頭上へと飛んでいく。


『ゴツンー!!』


「うわっ!?」


 だけど、僕らは見えない壁にぶつかり、勢いあまって地面へと落下した。


「……どういうことだよ?」


「あはは。無様だね。我輩の相殺のちからを前にして、そんなちゃちな魔法で逃げられたら苦労しないよ。

さあ、どうするかい。絶体絶命のピンチだよね」


 洞窟の天井から、ジイ・エンドの声が響く。


 そうか、先に逃げたのは障壁のバリアの呪文を張って、僕たちをここで足止めしたかったのか。


 その間にも、ガラガラと音を立てて崩れていく洞窟。


 この調子だと、数分ももたないだろう。

 みんな揃って生き埋めになり、次の日の朝刊で大きく報道される。


 まあ、この異世界には新聞という、情報媒体はないみたいだけど。


「そんなことより、どうしたらいいんだよ!」


「何だよ、オラに怒鳴ることないじゃんか」


「何でもできる魔法使いなんだろ。どこからでも脱出できる呪文とかないのか?」


「兄ちゃん、上級移動呪文ブットビプリンは、そう簡単に習得できる呪文じゃないぜ」


「くっ、こんな時に僕が移動呪文を使えたら!」


 僕はその場でひざをおり、冷たい地面にこぶしをぶつけた。


「くっ……」


 こぶしから流れる赤い証、これが生きているという痛みか。

 だけど、この命はもうすぐ消えてしまう。


「ジン、ごめんなさい。元はと言えば、自分がハガネお姉ちゃんと相談したから……」


「いや、ミヨは悪くないさ。悪いのは今までろくにレベルも上げずに、遊び呆けていた僕が一番悪いんだからさ」


「ジン……」


「まっ、最初の最後で、ようやく勇者らしい台詞が言えたから良しとするよ」


「兄ちゃん。ありがとう。オラ、兄ちゃんのこと、今回も誤解していたぜ」


「そうか。そんなに僕は駄目なヤツか?」


「いいや、その言葉からして、いかにも兄ちゃんらしいぜ」


「ありがとう。みんな死ぬときは一緒だ。さあ、逝こう!」


 魔王は倒し損ねたけど、この異世界の歴史は刻めた。

 物語は語り継がれ、いずれ新しい勇者が魔王の計画を阻止するはずだ。


 僕らの冒険は無駄ではなかったと……。


『ドカーン!!』


 頭の上から、巨大な岩の固まりが落ちてくる。

 僕はキツく目を閉じて、その恐怖に耐える。


 そう、何度も死んできたんだ。

 今さら死ぬのは怖くない。

 痛いのは一瞬だけだから……。


『ドカーン!!』


 何かがおかしい……。

 さっきからじっと待っているのに、一向に死が訪れる気配がない。

 頬には小石が落ちてくる感触しかしないのだ……。


 もしや……。


 僕は気になって、閉ざしていた視界を広げてみた。


 ──そこでは、信じられないことが起きていた。


「なっ、一体、何をしてるんだよ!?」


「フフフ……無事かいの?」


 ゲーム・オバが、その体ごと岩石を防いでいたからだ。


 彼女が呪文をモゴモゴと呟き、頭上の大きな岩が細かく砕けていく。

 僕は、そのつぶてに当たっていたのだ。


「さあ、あっしの元に集まるんじゃ。ここから脱出するよ」


「えっ、あのブットビプリンの呪文が使えるのか?」


「まあ、それくらいお茶の子さいさいじゃよ。似たような呪文ならば」


「そうか。みんな!」


 ゲーム・オバの周りに仲間たちを集めて、彼女の紡いだ透明な光の球体に飲み込まれる。


 だが、その中には若干一名足りない。

 発動者の本人だけは、玉の外にいたからだ。


 そんな外野の彼女が、治癒されたまぶたをくわっと見開き、空中に浮かぶ僕らに笑いかける。


「昔から恋仲で付き合ってきた、じいやに愛想を尽かされてしもうた。捨てられたあっしは、もう駄目な女なんじゃよ」


「だから、何をしているんだよ!?」


「勇者としての真の勇姿、見せてもろうたよ。ありがとじゃ」


「ババー!」


「失礼なヤツじゃな。オバだって言ってるじゃろ」


「ババー!?」


「キキキ。ジンとやら、その呼び方、わざとじゃな。まあいいかの。

それじゃあの……」


『ブットンデプリン!』


 僕らを運ぶ玉は上空へと舞い上がり、雪の止んだ雪原の地上へと顔を出す。


 その途端に、雪の重みで崩れ去る洞窟。

 オバの犠牲により、辛うじて迷宮から抜け出せたのだ──。


****


「……何でだよ、他にマシな方法があっただろ……」


「ジン、彼女の行為を無駄にしないで下さい」


「だけどさ、何でオバだけが犠牲にならないといけないんだよ」


 瓦礫の山に足を下ろした僕がやった最初の行動は、ものに当たるという苛立ちだった。


「いや、兄ちゃん。それなりの理由があったみたいだぜ」


 ケイタが足元に刺さっていた物体を引き抜く。

 それは西洋の剣のような形をしていた、真っ黒な鞘だった。


「兄ちゃん、これが例の剣じゃないかな?」


 ケイタから無言でそれを受け取り、鞘から抜いた銅色の刃を、晴れ晴れとした日の光に当てると『AHO』と刻まれている。


「確かに普通に装備できるけど。どうして僕らの足元に?」


「兄ちゃん……気を悪くしないでくれよ?」


「何でだよ?」


 ケイタが握っていたこぶしを、僕の前で開く。

 黒い指輪をはめた、片割れの一本の指先を……。


 その血が付いてしわがれた指は、ついさっきまでオバの指だった物だ。


 僕は耐えきれなくなり、吐き気に襲われる。

 すかさず、ミヨが背中をさすってくれた。


「ジン、大丈夫ですか?」


「ちょいと、兄ちゃんには刺激が強すぎたか」


 おい、何てグロい物を見せるんだ。  

 ちょっとどころじゃ済まないぞ……。


「……と言うことはオバは、この剣を護るために我が身を犠牲にしたと?」


「そう言うことだぜ。移動呪文には人数制限もあるから、自分の体と引きかえに、この剣をワープさせたんだろうぜ」


「命と引きかえにか……」


 ありがとう。

 あなたの行為は決して無駄にしない。


「それでジン、その剣なら使えそうですか?」


「うん、手元に吸い付くように、しっかりとした握り心地でいい感じだよ。刀身に刻まれたAHOという単語がちょっと引っかかるけどな」


「それはひょっとして、アホの意味でしょうか?」


 僕は改めて、錆び付いた色のような剣を日射しに向ける。


「ふーん。どんな相手でも装備できるからアホなのか。だから『アホの剣』か。

まあ、分からないでもないけど」


 僕は剣を構えて、上段、下段へとお得意なチャンバラの真似ごとをしてみる。

 剣自体もそんなに重くなく、振り回しても剣に引っ張られる癖もない。


 錆びたような剣先だから、多少はカッコ悪い武器だけど……。


「まあ、これこそが僕の求めていた剣だったんだな」


 数回素振りをして、しっくりと体に馴染んだのを確認して、鞘に収める。

 

「さて、魔王の配下も全員倒して、残るは魔王のみとなったけど……肝心の魔王城が分からないとなればなあ」


「確かに場所がばれたから、移転したと聞きました」


「どうにかして、見つける方法はないものか……」


「兄ちゃん、いったんメッキシスコーン城に戻らないか。ここはハガネ姫から情報を集める方が先だぜ」


「なるほど。ハガネお姉ちゃんの知識を借りるのですね」


「よし、そうとなったら行くぞ。ケイタ」


「ああ、それじゃあ行くぜ!」


 僕らはワープリンの呪文により、すい星のような速さでナモナキ島を後にしたのだった──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ