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最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第4章 勇者決戦の道へと歩み、切り開く時

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第19話 彼女による底知れない魔力

「キイッー、キイッ、キイッ!!」


「その癖のある笑い方、やっぱりゲーム・オバか!」


「そうじゃよ、癖は余計じゃが、随分ずいぶんと久しいの。魔王から聞いてはいたが、あっしのあのこくの呪文を食らっても、無事でおるとはのう」


「何の。お前の思い通りに、僕たちはそう簡単にはやられないぞ」


 ゲーム・オバの上機嫌の笑いが、洞窟内に響く。


「まあ、前回のお手並みからして、そなたらなんて、あっしが出る幕もないさ。さあ、みんなやってしまえ」


『ビビビ!!』


 何十体も仲間を引き連れたクラクラゲが、体を発光させながら接近してくる。

 確か、コイツは触れた対象を痺れさせる能力を持っていたな。


 いくらゲーム・オバと比べたら雑魚とはいえ、こんな大量のモンスターの中で体が麻痺されたら、ボコられて一瞬で終わりだ。


 おまけにクラクラゲと同じく、イカシタヤツもウヨウヨといる。

 イカシタヤツも雑魚には違いないが、ヤツが墨を吐き、視界を曇らせたら厄介だ。


 何より、こちらはたった三人だけだ。

 正攻法では確実に殺られる。

 だからと言って、ここで逃げるわけにはいかない。


 憧れの剣を振りかざし、バッタバッタと敵をなぎ払う妄想劇。

 僕の脳内での勇者将来設計は万全だ。


「何の。剣が無ければ、これがある!」


 僕はポケットから棒を出してひけらかし、相手を挑発する。

 そのアイスの棒には『あたり』と刻まれていた。


「やったぞ。あたりだ、もう一本!」


「それはやったぜ。兄ちゃん」


「でも待てよ……」


「どうしたんだい?」


「いや、冷静に考えたらさ、この世界のどこで、これを交換するんだよってな?」


「まあまあ、兄ちゃん、それ当たった時点で今すぐ使えるからさ。試しにその棒を地面に突き刺してみてよ」


「そうか? せりゃぁー!」


 僕はアイスの棒を、土の地面へと突いた。

 裂けた大地から亀裂が走り、裂け目から赤い光が飛び出してくる。


 微妙な数10センチのラインで僕らの体が宙に浮き、次々と奈落へと落ちていくモンスターたち。


「これは、もしかしてダンの魔法か?」


「そうだぜ。このマジカルアイスバーのあたりが出た時に使えて、攻撃呪文ができる特殊効果だぜ」


「へえ、便利な代物だなって……あっ!?」


 喜びも束の間、そのアイスの棒が先端から燃え出し、あっという間に消し炭となる。


「でも残念ながら、効果は一回のみだけだけどさ……って、兄ちゃん、泣いてるのかよ?」


「……ようやく僕も呪文が使えて、みんなの役に立てると思いきや、これじゃあな……」


「まあまあ、ほとんどのモンスターは倒せたからいいじゃないですか」


「ミヨ、ありがとう」


「それに勇者が、これくらいで落ち込んだら駄目ですよ。仮にも勇ましい者なのですから」


「そうだな」


 地面と足先が元に戻り、残った数体のイカシタヤツをケイタの攻撃呪文で葬り去り、僕ら三人は最後に残ったゲーム・オバを取り囲む。


「気をつけて下さい。この方は強力な呪文を扱う危険人物ですから」


「そう、人は見かけによらないぜ」


「でも腕利き三人組で囲んだら、さすがのオババも終わりだな」


「キキキ……誰が終わりかのう」


「観念するんだな。もう逃げ場はないぞ!」


「……ひそひそ。ミヨちゃん見たかい。兄ちゃん、美味しいセリフだけはもらっていくんだぜ」


「……まあ、いいじゃないですか。勇者なのですから」


 そこの二人、会話が丸聞こえなんだけど……。

 まあ、いいや。


「キキキ、逃げ場がないなら作ればええ」


「何だ、その創造力豊かな発想は?」


「その強がり、いつまで持つかのう」


『オムレツ愛憎、あぢぢのぢー!!』


 ゲーム・オバの両手から生み出された炎の渦を何とかかわす。


「何の。ケイタシェフ。同じく、炎の呪文でボコボコにしてやれ」


「兄ちゃん……オラには無理だ……」


「どうした、顔色が悪いぜ?」


 ケイタはその場で膝を折り、頭を上げようともしない。


「二人とも危ないです!!

ジャンジャン、バリアー!」


 その場にゲーム・オバの炎が直撃しそうになり、駆けつけたミヨが防御バリアの呪文を唱えた。


「いや、きゃあああー!?」 


 しかし、ゲーム・オバの強烈な呪文の威力に耐えられるまでもなく、バリアは消し飛び、僕ら三人は衝撃で宙へと吹っ飛んだ。


『うわあああー!?』


「きゃあああー!?」


 これが、ちからの歴然の差というものだろうか。

 直撃を受けたミヨに至っては、うつ伏せになったまま、ピクリとも動かない。


「だけど、あの程度の呪文なら、ケイタでも相殺できるはずだけど」


「兄ちゃん、だから……、無理なんだぜ……」


「なに、弱音を食べて、吐いてるんだよ。いつものお前らしくもないぞ」


「……兄ちゃん。あちは炎の呪文同士か、ひょうの呪文じゃないと相殺できない。だって、あれは禁断のこくの炎の呪文だから」


「何だって? 同じ炎じゃないか?」


「いや、兄ちゃん。よく見たら炎の色自体が違うぜ。あっちは少し紫が混じってるんだ」


「でも、前回の戦いでは同じ炎で防げたじゃんか? まさか?」


 炎で所々(ところどころ)の生地が焼け焦げ、ボロボロな身なりの僕は、地面に片ひざをついたまま、相手を伺うかのように、ゲーム・オバに楯突く。


「おい、もしやと思うが、この前は手加減していたのか?」


「キイッー、キイッ、キイッ!!

前回は元勇者もいたからのお。さながら力を試させてもらったんじゃ。

でも、今さら気づいても遅いわい!」


 ゲーム・オバが、僕らの前に両手を繰り出す。


 これはマズイ。

 ケイタも僕の体力も、ほとんど残っていない。

 回復、補助呪文を使用できるミヨは気絶しているらしく、このままだと全滅する。


 僕だけなら死んでも、あのサクラの世界に飛ばされるだろうけど、ミヨたちはどうなるか見当もつかない。


 親父、何でこんな役立たずの僕なんかに、勇者を託したんだよ。


 これじゃあ、僕は最弱で最低の勇者じゃないか。


 それにさっきから、僕の攻撃をサポートしてくれるサクラの思念も一切ない。

 ゲーム・オバによって、能力を封じられているのか?


「ちくしょうー!!!!」


 僕はありったけの言葉を振り絞って叫んだ。

 もう、頭の中は絶望の二文字でグチャグチャだ。


「何じゃ、ちょっと本気を出してみて、これじゃあ、手応えがないのう。

まあ、いいか。これで終わりじゃな」


『病欠生搾り……』


『──ヒュンヒュンヒューン!!』


 ──そんなゲーム・オバの頭上を飛び交う、無数の弓矢の形をした光の刃。


「何じゃ、この光は……まさか!?」


『ヒュンヒュンヒューン!!』


 ジンの光輝く体から、次々と出てくる光の刃。

 その光はゲーム・オバの周りを囲む形で上空に留まり、ジンからの攻撃命令を待つ。


「まっ、まさか、あのちんけな小僧が、レーザー呪文を使うのかい!?」


「いえ、ジンは呪文は使えませんでした。でも、あなたの自己中で身勝手な行為に許せなくなり、彼のしんのちからを引き出したのです」


「……自分はそれを信じて、ジンのお父さんに頼まれて、旅を続けてきたのです。彼は元から、勇者としての素質はあったのですよ」


 自分はよろめきながら立ち上がり、ゲーム・オバの心に鉄槌を下す。


「闇の呪文に唯一対抗できる光魔法。もう、あなたに勝ち目はありませんよ」


「う、うるさいわい。そなたのような小娘に何が分かるんじゃ!」


『──黒々と迫る恐怖、気分はダークサイド!』


 彼女の卑劣な叫びにより、自分たちの周囲がたちまち黒い風景へと変わる。

 恐らく、彼女による闇の呪文だろう。


 空も大地も仲間のモンスターたちも、ジンが起こした光の矢さえも、ゲーム・オバの手から生まれた球体の暗い世界に吸い込まれていく。


 すると、自分も頭から泥をかぶった様子になり、闇へと意識が放たれた……。


****


 ──闇から目が覚め、暗黒の風景で覚醒した、自分の灰色のシルエット。


 まず、そのシルエットから、右手が暗闇に溶けて無くなった。

 それと同時に、利き手の感覚がなくなる。

 これでは明日から、ご飯を食べる時に苦労するだろう。


 次に左手が消える。

 これで自分は、ただのサボテンのようになってしまった。

 だけど、炎天下で過ごすサボテンのように、強くは生きれない。

 物事の動作の半分を失ったかのような感触だ。


 そして、両足が瞬時に無くなり、自分は暗闇の床に体を倒した。

 歩行さえもできなくなった自分は、床でもがくことすらも許されない。


 自分は大きな声で、彼の名前を叫ぼうとした瞬間、今度は声が出せなくなった。

 いや、口がついている素振りがない。


 続いて、耳から聞こえていた、風のせせらぎさえも聞こえなくなる。

 耳さえも、彼女に消されたか。


 それから最後に視覚を奪われ、五体満足をすべて飲み込まれた自分は、真の闇に堕ちていく……。


 ──いや、まだ自分は闘える。

 何があっても、彼を信じると約束したではないか。


 自分は何も付いてない肉の個体で床を這いながら、高鳴る気持ちを落ち着かせて、聖なる物の気配を探し、肌から感じる暖かい光に触れた。


 このトゲトゲとした質感。

 薄っぺらい紙のような刃。

 自分はその刃に体当たりして、自ら体を突き刺していた……。


****


「──なっ、なんじゃとー!?」


 洞窟でのバトルを終え、クッキーを摘まみながら、ゆるやかにお茶会をしていたゲーム・オバ。


 闇に飲まれていた僕らが洞窟の壁から戻ってくると、彼女は驚いたはずみで手を滑らせ、カップの破片が床へと散乱する。


「あっしの屈指の闇の呪文を破るとは!?」


 自身最強の呪文から逃れた、僕たちを見つめたゲーム・オバは、かなり動揺していた。


「いえ、自分一人のちからではありません。勇者のお導きです」


「アガガ……そんな夢物語なぞ、信じられぬわ……」


「ゲーム・オバ、終わりだな!」


『ヒュンヒュンヒューン!!』


『ザクザクザクー!!』


 ジンの意志で操られ、ゲーム・オバに次々と刺さる光の矢。


「ぐああああー!?」


 ミヨもケイタもジンが生み出し、停止している光の弓矢を掴み取り、それを縄にして彼女を縛る。


「この、こんな所でやられるあっしじゃないんじゃ。少しでもあの人のお役に立たないと……」


 いくらもがいても、どうにもならない苦しそうな様子。

 闇とは正反対の光の縄となると、簡単には抜け出せないようだ。


『──見苦しいよ。もう下らない抵抗はしなよ、オバ』


 不意にどこからか、ヤツの声がした。

 この声には聞き覚えがある。

 周りの反応からして、ミヨたちにも聞こえるようだ。


「そ、その声は魔王様!?」


 その途端にゲーム・オバがまごまごし始め、乙女の恥じらいのような表情になる。

 どうやら、この声の主が気になるらしい。


 それは僕たちも一緒だ。


『うん。そうだよ。魔王ジイ・エンドさ。我輩から直に君たちに話があるからさ』


 どこからか来るか分からずとも、あの歯が立たなかった魔王の声に緊張して、体がいささか震える。


 僕はミヨの回復呪文キュンを受けながらも、新たなる相手に、心の中が絶望に覆われていた……。

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