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最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第4章 勇者決戦の道へと歩み、切り開く時

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第21話 本物ではない代物


****


 ──時は過ぎ、暗がりから朝焼けが照らすメッキシスコーン城内にて……。


「こんな早朝から、何の御用ですか?」


 ……ハガネ王女が、窓際にかけた白のレースのカーテンに身を寄せて、震える手つきで僕を指さす。


「何、怖がってるんだよ?」


「貴方、モテないからって、直に来て、ハガネのハートを強引に射止めようとしているんでしょ!」


「それは誤解だ! 何でそうなるんだよ!」


 着いた矢先に、王女に会いに行ったらこれだ。

 まあ、ケイタの移動呪文ワープリンが失敗して、王室に着地したらそうなるよな。


 しかも場所は女の子らしい、お洒落な寝室ときたものだ。

 身の危険を感じるのも分かる。


 小綺麗な部屋は全体ピンク色で、ピンクの花柄のパジャマに、可愛らしい子熊のぬいぐるみを抱いている彼女。

 ミヨに似ていて美少女だから、絵になってしょうがない。


「だからどうしてこんな所に来るんですか。冗談にもほどがありますよ!」


「ハガネお姉ちゃん、落ち着いて……」


「何よ、ミヨには分からないでしょ!」


「だから落ち着いて、ブラジャーが見えてる……」


「えっ……きゃあああ!?」


 ハガネが乱れたパジャマからはみ出た白い下着を、華奢きゃしゃな両腕で隠す。

 早起きは三文の得、朝からいいモノをいただきました。


「何、鼻血垂らして見てるのよ。この変態勇者!」


「やれやれ。どうしたものか……」


 それだけ魅力的なんだから、もっと誇ってもいいのに。


 女性という者は、一度本気で嫌いになった異性は好きにはならないからな。

 前回の好き好きアピール? で余計に嫌われたみたいだ。


「ジン、お姉ちゃん。今は喧嘩している場合じゃないでしょ」


「そうだぜ。兄ちゃん、鼻血くらい拭きなよ。それじゃあ犯罪者だぜ?」


『お前ら、うっさいなー!!』


 僕とハガネの意見が、()()()()と一致する。


『ガコン!!』


「はぶっ!?」


 そして、ケイタの脳天に、ハガネが振り回していた竹ホウキがぶち当り、そのまま床へと倒れる、紳士なケイタ。


「きゃあ、ケイタ君、大丈夫!?」


 レスキュー隊のような速さで、ミヨがすかさず彼を救出する。


「ふっ。ミヨちゃんの豊かで柔らかな胸の中でなら、尊く死ねる……ぐぶっ!!」


「ケイタ君!?」


 今、伝説のケイタの勇敢な物語は、ここで幕を下ろしたのだった……。


****


「……そういうことなのね」


 散々、ヒステリーを起こしていたハガネが落ち着きを取り戻し、手元にある紅茶の入った白いティーカップを指に添えて、上品に飲む。


 僕らは魔王の手下を討伐したことを高く評価され、王女と一緒に大きな食堂での朝食に招かれていた。


 白く大きなテーブルクロスに置かれた、様々なごちそうを前に、瀕死から蘇ったケイタなんか、箸を使うのも忘れて、手掴みでがっついている。

 まあ、食べ物はロールパンがおもだから、問題ないけど……。


「しかし、そのための犠牲は多すぎたけどな」


「確かに兄ちゃんはボロボロだもんな」


「そうだな。死してしかばね拾うものなし」


「兄ちゃん、死んでいたら、この世界にいないぜ」


「おお、そうだったな」


 僕は一回死んで転生しているけどな……と言いかけて、口を閉じる。

 このことを仲間はともかく、魔王に知れたらヤバいと思ったからだ。


 だけどこの件は、ハガネには話した方がいいのか?


 じぃー。


「ジン、だからって、そんなぎらついた目で、お姉ちゃんを見ないでもらえますか……」


「おおぅ、僕に人権はないのか!?」


 いかん、いつの間にか狩人の瞳になっていたようだ。

 僕は首をブンブンと振り、余計な思考を飛ばす。


「さっきから、兄ちゃんは何がしたいのだろうか」


「ケイタ君、もしジンがお姉ちゃんに飛びかかったら、全力で阻止して」


「ああ、任されたぜ」


 この二人は僕から距離を離し、何を物騒なことをヒソヒソと話しているのだろう。

 僕は冬眠明けの熊の設定か?


 だとしたら、僕は人間を辞めたということか。

 失礼な、まだ僕の人生は終わってないぞ。


「それで魔王の居場所を突き止めたいから、ここに来たわけね」


「そうなの、お姉ちゃん、何か分かる?」


「分かるもなにも、昨日、()()()魔王が来ましたから」


『えっ?』


 僕とミヨの目が点になり、食事の手を止め、ハガネの言葉に釘付けになる。

 ケイタにいたっては喉に物を詰まらせたらしく、ガブガブとコップの水を飲み干す有り様だ。


「昨日、来たって、どういうことだ?」


「それはね、新居に引っ越したのはいいものの、一向に誰も城に来る気配がないから、暇すぎて遊びに来たって」


 どうやら新居にも、寮というものがなかったらしい。

 それに魔王の手下はすべて倒したから、遊び相手もいないのも当然だ。


「それで魔王は何か言っていたか?」


「ええ、勇者たちがどこで何をしているのか、大人しく教えなさいと……」


 ハガネが肩を細かく震わせながら、シワになったパジャマを胸元に寄せる。

 妹と一緒で胸はそれなりにあるな。

 いや、そうじゃない……。


「ハガネ王女、魔王に何かされなかったか?」


「ええ、口元に棒アイスをくわえて……ボードゲームを強引に」


「……はっ、何だって?」


「だから手を使わずに棒アイスを落とさないように食べながら、人生ゲームで遊んだのですが、落としたら、そこで敗けが確定でして……」


 例え、ゲームで大金持ちになっても、食べ物一つで運が逆転するのか。

 まるで賭けごとのような、凄い人生設定だな。


「それで負けました()()()は、魔王の言うことを一つだけ聞くという命令に従い……」


 彼女が熱い話題になったせいか、法衣の上着の襟を少しだけはだけさせる。


「まさか言うことを聞いてしまったのか!?」


「ええ……」


「くそう、こんな可愛い美少女相手に……」


「何か、顔が怖いんですけど?」


「怖い顔は生まれつきだ!!」


 僕は荒い呼吸を整えながら、冷静に状況を纏める。

 ハガネ王女が可愛らしいエプロンを着け、幼い顔の魔王の手により、あんなことやこんなことなどをされて……。


『──旦那様、今日はオムライスにしますか、それともシチューにしますか?』


「ぶぶっ!!」


 僕はその場で興奮を抑えきれずに、活火山のように鼻血を吹いた。


「きゃっ、ジン、どうしたのですか!?」


「清楚なハガネ王女が、あられもない姿に……」


 僕の妄想に汚染された脳みそは沸騰し、爆発マグマの勢いは止まらない。


「……あの、何か勘違いしてません?」


「……ハガネは、魔王から勇者の居場所を教えろと聞かれまして」


 何だ、彼女のメイドの貞操は守られたのか。

 そうか、それは良かった。

 婚約まで純粋なメイド心を守りきり、お父さんは嬉しいぞ。


「……って、それはともかく、今、何て言った?」


「ですから、()()()()()()()()()を教えろと」


「何だって? ということは……」


 そう、あの洞窟に突然、魔王が訪れた理由……すべての現況の源は、ここからだったのだ……。


「お前なあ、そのお陰で酷い目にあったんだぞ!

もう、お前の純潔は僕がもらう!」


「きゃあああ!?」


 僕が王女に向かって飛びかかろうとした時に、炎の渦が僕の体に覆い被さる。


「あぎゃあああ!?」

 

 体中が焼けるように熱い。

 ケイタの攻撃呪文か!?


「よし、でかしたケイタ君」


「へへっ、言われた通り、尻尾の先まで、こんがり焼いたぜ」


「うんうん、お利口さん。でも人間に尻尾はついてないよ」


「あはは、そうだったぜ」


 ケイタの何も知らぬ発言を耳にしながらも、僕の意識は遠のいていった……。


****


「あっ、ジン。取りあえず落ち着きましたか?」


「僕は今まで一体……あちちち……」


「ごめんなさい。少しばかりやり過ぎたみたいです」


 ミヨが申し訳なさそうに頭を下げる。

 僕は彼女にひざまくらされていて、今度はその唇が眼前に迫ってきた。


「ミヨ、顔が、ち、近いって!?」


「あっ、すみません」


 何となくガッカリしているように感じ取られ、落胆したようにも見える表情だ。


「ミヨ、お腹でも痛いのか?」


「違います。もう、何でもありませーん、べー!!」


 ひざまくらを退けて、可愛らしく舌を出して、アッカンベーをするミヨ。

 どうやら怒っていることは確かのようだ。

 何に関してかは不明だけど……。


「しかし、いくらなんでも味方を攻撃するのはヤバいだろ、ケイタ?」


「あはは、ごめん」 


 僕たちから離れた場所にいる、ケイタが頑なに笑う。


「何がおかしいんだよ、下手してたら焼け死んでたぞ?」


「やっぱり、そう簡単には死なないか」


「はあ、お前、寝ぼけてるのかよ?」


「寝ぼけてるのはそっちだろ?」


 ケイタが『ガハハ!』と、豪快に笑う。

 その途端にケイタの姿が煙に隠れて、黒い影だけになる。


 黒い影は左右に広がりながら、奇怪な動きを始める。

 初めから、それは人ではなかったかのように。


「ガハハハハ……!」


 ケイタの姿から化け物染みた怪物となったそれが、大きく飛び出た腹を抱えながら、この大地に降り立つ。

 その体格は雑魚ゴブリンのコブトンそのものであり、魔王の配下にいた以前の彼にそっくりだった。


「そうか、変身魔法ダマシか。と言うことは、お前はあのコブトリンなのか?」


「そう、本物のケイタは王室の寝室でぐっすり眠ってるでしよ」


 それでさっきの食事中は、箸を使わなかったのか。

 その手前から、本物のケイタと入れ替わっていたんだな。 


 パンを喉に詰まらせたのも、単なる変身を恐れた動揺だろう。


「でも一つだけ訂正ポイントがありますでしね。ボクはコブトリン兄貴の弟のコプトリンなところでし」


「ププッ、その名前としゃべり方は笑えるな」


「失礼でしね、しゃべり方は関係ないでし」


「いえ、そんなことより、ケイタ君をどこにやったのですか。答えなさい!」


「だから寝室だって、さっき言ったでしー!」


 僕の手前にミヨが飛び出して、意見をぶつける。


 ああ、僕はもう知らないぞ。

 命をかけても恋する乙女を、怒らせてしまったな。


「さあ、コプトリンとやら、この状況にどうやって対応するかい?」


「状況も何も、君たちはもう終わってるでし」


「はあ、意味が分からないぞ?」


 いくら能力が優れていても、しょせんは一匹。

 こっちは二人がかりで、追い詰められているのはそっちなのに、コイツは何を言っているんだ?


「どうやら余程、僕たちにボコボコにされたいらしいな」


「ちっちっち、君たちはとんだあまちゃんでし」


 コプトリンがひとさし指を左右に振りながら、僕に挑発をしてきた。


「そんな誘いには乗らないぞ」


「それはどうかなでし」


 コプトリンがこしみのから取り出した水晶が眩しく光り、ある映像を映し出す。


「サクラ、それにヨーコ王女!?」


 映像からの二人の姉妹は、暗くて狭い有刺鉄線に囲まれた檻に閉じ込められていた。

 二人の体は痩せ細り、顔色も生気がない。


「もう魔王城に監禁して、丸二日になるでしが、一向に口を割らないので困ってるでしよ」


「魔王城だと!?」


 そうか、戦闘になっても、サクラの反応がなかったのは、ここにいたせいか。

 恐らく能力や呪文を使えないように、無効化する檻なのだろう。


 前回の同人誌(薄い本)漁りのサクラが、捕まった時の檻と同じ形状だったからだ。


「さあ、どうするでし。時と場合によっては、あの二人を処分してもいいんでしよ」


「卑怯だぞ、コプトリン」


「腕利きな二人で取り囲んで、その答えはないでしよ。さあ白状するでし……」


 やたらと大柄なコプトリンが鼻息を荒くして、僕の間近に迫る。


「……本物の勇者の剣のありかを教えろでし!」


『えっ?』


 コプトリンから問いつめられても僕らは、その言葉の真意が分からなかった……。


 

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