67.殺人鬼
チェスたちが一先ず休憩している間、試験官たちは話し合った。
「クゥートはダメだな」
「ええ、彼は冒険者に向いていない」
臆病な割にプライドはいっちょ前にあるらしく、先ほどからチェスの行動を非難している。誰も聞いていないが。
「スタックはどうだ?」
「ぼくは適正ランクだと思います。まぁ、経験不足なのは否めませんが」
大きなミスはしていない。
「ステルの評価はどうする?」
「周りが見えるようになった分、前進はしていると思うよ」
「そうか? 独断専行するタイプだ。おれなら背中を預けられないが」
「それでもチェスの言うことは聞いていた。結果で判断するなら、まぁ、組んだチームに恵まれたってこったな」
評価の大勢はすぐに決定していた。
クゥートは資格はく奪。スタックとステルは暫定。
「さて……あいつはどうする?」
問題はチェスだった。
「少なくともD級っていうのはおかしいだろう。戦闘能力だけでもC級かそれ以上だ」
「しかし、これは問題児たちの更生プログラムみたいなもんだ。三階層だけ見ても、あいつの実力は測り切れていない」
「パーティの先導、立ち回り、指示だし、判断力、対応力、戦闘力……全てが実に手馴れている。一匹狼とは思えない」
評価はC級並み。
ただし、およそ冒険者に求められる能力に置いて全てがC級相当。
それは総合的にC級を超えていることを意味する。
「ありのまま報告すればいいのでは? ぼくは彼のランクを知らずに今日の立ち回りを見たら、A級冒険者だと思うでしょうね」
「A級か……」
A級は脅威度が特別高い【死滅】級の魔物と単騎で渡り合える実力者だ。
【禽獣】級でD級。
【獰悪】級でC級冒険者が派遣される。
【暴虐】級がB。大型魔獣の群れや中級魔物の群れがこれに該当する。
【死滅】級がA。オーガやリッチ、デーモンのような上位の魔物のさらに特殊な個体がこれに該当する。
「実際A級ってことはないにしろ、パーティに欲しい人材だよな。あいつが一人いるだけで、作戦の幅が一気に広がるだろう」
ちなみにAの上に【惨禍】級、さらにその上に【凶禍】級があり、最上位の脅威に【厄災】級が存在する。
◇
「む、おい!」
話し合う試験官の一人が気配に勘付いた。
「誰か来る」
「あっちのメンバーか?」
「今頃かよ」
彼らの予想通り、現れたのは参加者の一人だ。
「た、助けてくれぇ……もう、ダメだ」
男は額に汗をかき、足元もおぼつかない。
「あらら」
「一人脱落っと」
「おい、おっさん。お前の担当試験官はどうした?」
「そ、それが……逸れてしまったんだ! 頼む、何か食い物をくれぇ……」
弱り切った中年の男。
呆れる試験官たち。
その様子を傍の瓦礫に腰掛け、ただぼうっと眺めていたチェスは寒気がしてとっさに動いた。
「離れろ!!」
チェスが飛び掛かった。
迷いはない。
神官だった頃、ありとあらゆる罪人を見てきた。慈悲を求める殺人鬼たちの顔は今でも脳裏に焼き付いて夢に見る。
そうして見て染み付いた、殺人鬼の放つ独特な存在感。
人であって魔物のような、あべこべな違和感。
それを察知し、『看破』を使った。
この天授技能は相手の偽証を見破り、本性を察知する。
穢れきった魂に触れたようで、吐き気を催した。
放たれた『一撃』
ところが弱弱しかった男はそれを片腕で受け止めていた。
「ほほう?」
男は歯を見せて笑い、ぎょろりとした眼をさらに見開いた。
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