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51.攻略

 ギルドでは噂が広まっていた。

 B級冒険者であるゼータとグレイが毎朝疲れ切ってボロボロの状態になっている。旧市街の女の霊は相当に危険だと誰も近づかなくなった。ギルドも事態を重く見て立ち入りを制限した。


「もうやだ~」

「そう言うな。半端に関われないだろ」


 グレイとゼータは仕方なし。


「嫌なら降りろ。分け前は無しだ」


 チェスは進んで挑戦した。

 三人は協力して地下迷宮の攻略を目指した。


「がんばれ。あと27体だけどね」

「あ、薬師様~ども~」

「はぁ、先が遠いね」

「嫌なこと思い出させんじゃねぇ」

「お弁当持ってきたのに」


 さながら夜中のピクニック。

 三人と一匹は地下迷宮へと潜る。






 不思議なことに、地下の騎士は徐々に難易度が上がっていくシステム。


 襲い掛かってくる騎士はどれも大きな違いはない。強力な装備を使い、武器術を使いこなしている。しかし、奥に進むにつれてその強さは確実に上がっていく。



 個体名 勇者ゴーレム

 種族 ゴーレム

 脅威度 惨禍(カラミティ)

 権能 『魔力同調』『先読み』『超直感』『高速移動』

 獲得術式『魔槍術・極』



 広い間合いの槍使い。回避能力と当て勘がすさまじく、長期戦を強いられた。『魔槍術』に対抗するとグレイが先頭に立ち、チェスの付与とゼータのフォローで最後は刺し違えるようにギリギリの勝利。



 個体名 勇者ゴーレム

 種族 ゴーレム

 脅威度 惨禍(カラミティ)

 権能 『魔力同調』『見切り』『乱舞』『高速移動』

 獲得術式『魔双剣術・極』『魔闘術・極』



 攻撃の手数で圧倒的。二刀の魔剣を軽やかに縦横無尽、変幻自在の剣筋で操った。動きを止めるまでにかなりの手順を踏んだ。

 チェスが鎧に『重力波』を直接付与することで動きを鈍らせることに成功。



 個体名 勇者ゴーレム

 種族 ゴーレム

 脅威度 惨禍(カラミティ)

 権能 『魔力同調』『火事場』『捨て身』『高速移動』

 獲得術式『魔剣術・極』『魔闘術・極』



 追い詰めたところで飛躍的に攻撃力と防御力、スピード等が跳ね上がった。チェスの『一撃』が完全に見切られ、成す術がなく、倒すのに三日かかった。

 チェスが徐々に『魔剣術』を習得し始めた。


 個体名 勇者ゴーレム

 種族 ゴーレム

 脅威度 凶禍(カース)

 権能 『魔力同調』『見切り』『再生』『電光石火』

 獲得術式『魔剣術・極』『魔闘術・極』『光魔術・天』



 やがて高度な属性魔法を使いこなす個体まで現れた。戦いの中、実力を引き上げられていくチェスたち。

 何を隠そう、ここはカーミラが勇者を育成するために作った迷宮だ。自分を殺せるものを作るために歴代の勇者の技や能力を受け継がせるための訓練施設。

 魔物が勇者を育てるとは皮肉な話だが、その力で幾度となく勇者は魔王を討伐している。


 約二月もの探索という名の挑戦。


 一番の成長は連携。

 タイミングを合わせ、常にサポートし合う。それにはチェスの持つ力を二人が把握する必要があった。チェスはようやく、仲間と冒険する経験を積んだ。


 三人は協力してついに全てのゴーレムを攻略。

 最深部にたどり着いた。



 ◇


 最初の部屋の様に、静かな場所に緑が茂る。明るいその部屋の中央には墓があった。


 チェスはカーミラの顔を見る。


「誰の墓だ?」


 カーミラは淡々と答えた。

 伝説の人物の名を。


「勇者エヴァンだよ。本当は私の墓だったんだけどね。彼はずっとフテナ(ここ)に暮らしていたから。戦って死んだわけでもなく寿命で死んだ。遺言でここに埋葬して欲しいというからね」


 チェスは勇者エヴァンのことを考えた。ここに眠る理由を。


 グレイとゼータは無造作に積み上げられた宝の山に歓喜している。


「おい、見ろよ! ミスリルの槍だぜ!」

「古代の魔道具に黄金の山だ。こりゃすごいね!」

「おい、これでおれを推薦するか?」

「そうだな。正直チェスの実力は信じられないほど高かった」

「アンタ、ここでも一番成長したね」

「あ、でも、チェスのこと推薦するにはここのことを報告しなくちゃな」

「チェスの天授技能(スキル)についてもね」


 チェスにとって天授技能(スキル)のことは秘密にしておきたい重要情報だ。


「グレイ君にはその槍をあげよう。ゼータちゃんには異次元収納袋(マジックバック)だよ」


 カーミラが口止め料を支払う。

 彼女にはチェスの能力を秘密にする理由はないが、この場所を知られたくない。

 初めからずっとこの場所を護るため冒険者を追い返していたのだから。


「金は手に入った。フテナで面倒な仕事に就くぐらいなら自由なD級でいい」


 こうして地下迷宮は攻略された。ゼータの異次元収納袋(マジックバック)とチェスの『異次元収納』に全ての宝を詰め込み、カーミラは少しムッとしていたが構わず根こそぎ持ち帰った。

 カーミラは戻り際に倒されたゴーレムたちを復旧させていった。


「次は一人でも踏破してやる」

「何のために? 勇者になる気?」


 カーミラには茶化す気はなかったが、チェスは押し黙った。

 強くなるには実戦経験が足りないと悟った。

 ゴーレムは丁度いい相手だ。

 また、獲得できる力があるかもしれない。


 帰還し報告。


 ただゴーストは退治され、もう現れることはないと。




いかかだったでしょうか。楽しんでいただけたら幸いです。

ブックマーク、評価を励みにして連載しております。

不定期に連続投稿することがありますのでぜひブックマークだけでもお願いします。

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