47.迷宮
フテナの外れにある廃屋。その地下水路に冒険者は探索に入る。
「こんな場所にお宝なんてあるのか?」
「馬鹿、知らねぇのか。ここは結構な穴場なんだよ。大昔はここがフテナの街の中心だったんだ。だから旧時代の骨董品なんかが高く売れるだぜ」
「それにここは結構魔獣なんかも出るからな。狩場にもなってるらしい」
探索に入った冒険者たちはC級のベテラン。
地下へと続く階段を見つけ降り、松明で石に覆われた巨大な通路を照らす。先は見えない。
「へぇ~、こんな片田舎にしては結構ちゃんとした水路だな」
「巨大な山崩れで壊滅したらしいが、それでも残っているということはかなりしっかりつくったんだろう。相当金が掛かったはずだ」
探索する道筋はおおよそ地図がある。
狙うのは地下でつながっている個人の邸宅の地下室だ。
張り巡らされた水路は各家庭の地下へとつながっている。上の建物は崩壊していても地下は無事というケースがあり、地下は調度品や隠し資産なんかが眠っていることがあるらしい。
彼らも期待に胸を膨らませて探索に励む。
「確かこの辺りに最近見つかったルートがあるはずだ」
「まだ見つかってない部屋があったのか」
「なんでもこの前、街の学士の家が爆発したらしくてな。その衝撃で地下の通路のどこかが崩落した影響なんじゃねぇかって話だ」
先に進むと確かに壁の一部に隙間ができて、風が通っている。
三人が協力して重たい岩の壁を押すと大きい通路に出た。
水路では無い。
水路に出るように後から掘られた坑道。
「こっちは素人臭いな」
「だから逆に見つからなかったのかもな」
「どういうこった?」
「違法に誰かが堀ったってことは隠してたんだろ」
「ああ」
冒険者たちの予想は当たっていた。
かがり火を頼りに歩を進めるとさらに先に無数の坑道へと分岐していた。
「やたら滅多ら掘ったな」
「こりゃ侵入者対策だ。やっぱり何かあるぞ、その先に!!」
「おお、行こうぜ!」
だが先への道は長かった。
行く手を阻む無数の魔獣。
「数が多い!」
「ここは魔獣の巣穴だ!」
設置された罠。
「侵入者を排除する罠」
「ここは遺跡じゃねぇ! 迷宮だ!!」
冒険者たちは迷路の中を逃げ回った。
前後不覚、そこが何処かもわからなくなっていた。
何処をどう進んだのか追い詰められ、広い部屋に出た。
「なんだここは……」
日の光に見立てた魔道具がその巨大な空間を照らし、湧き水から根が伸びて緑を育んでいた。
「霊廟か?」
魔獣はその部屋への侵入を躊躇する。
「あいつら入ってこないぞ」
「よし、今の内だ。出口を探せ」
「こっちにも扉がある!! 行くぞ!!」
冒険者たちは一目散に脱出した。
しかし、道が分からない。
すると藁にもすがりたい冒険者たちの耳に、声が聞こえた。
『こっちだよ、こっち』
声のする方へと進む。
『こっちだよ、こっち』
「誰かいるのか?」
冒険者たちは怪しみながらもその声に従って暗い地下道を進んだ。
『こっちこっち』
廃屋の地下へと出た。
「脱出できたのか……」
「あの声は一体……」
「おい、見ろ」
三人は廃屋の屋根に佇み、月光を背負う人影を見つけた。
夜の廃屋に佇むその姿はこの世のものとは思えないほど妖艶で、場違いだった。たなびく髪と爛々と輝く赤い瞳。
三人は絶叫した。
「ゴーストだ!!」
「逃げろぉぉ!!」
「うわぁぁぁ!!!」
◇
旧市街の遺跡に現れる女の霊についてギルドでは噂になっていた。
薬草の納品に来ていたチェスはグレイに呼び止められた。
「よぉ、チェス。知ってっか? 廃屋に出た女の霊の話」
「知らん」
「まぁ聞けってぇ~。あの遺跡に地下迷宮が隠されてたんだってよぉ」
チェスは興味を抱いた。フテナには長くいるがそんな大発見は久しくなかった。
「その地下迷宮に入ろうとすると、その女の霊が現れるらしいぜぇ~」
「珍しいなゴーストか」
「一緒に行ってみないか?」
「あぁ? なんでおれなんだ。ゼータを誘えよ」
「任務じゃねぇよ。遊びだよぉ。その霊がさぁ、かな~りの美人らしくねぇ。遭遇した何人かは一目ぼれして何度も会いに行ってるらしいぜ」
「興味ねぇな」
「ああ! お前はいいよな!! 女子三人と同居してるからなぁ~!」
ギルドにいるとチェスには冷ややかな視線が付きまとう。
「忙しい。じゃあな」
「お~い、行こうぜぇ~」
チェスは何か引っかかることがあったがグレイを無視してその場を後にした。
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