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31.帰省

クノンティスらは自分たちの妨害が上手くいったことで安心しきっていた。


「馬鹿な奴だ」

「聞きましたか、奴の計画」

「ふん……」


クノンティスが頷く。

チェスたちが聞いて回った際、尋ねた技術者がリークした。



「魔力を蓄える魔石の加工などできるわけがない」

「所詮は無知な若造の夢想だったというわけだ」

「それで今後どう動くでしょうね」

「それが、あのチェスという男、学院を出て行くようですよ」

「あれだけ大口を叩いておいて、逃げ帰るわけだ」



笑いが巻き起こる。




「エルルクの当ては外れた。決着がつきましたな」




クノンティスたちは一足早く祝杯を挙げた。

豪奢な部屋で高い酒を飲み交わした。




三日かけて約三か月ぶりにフテナへと戻ったチェス。


その脚でカーミラの家へ向かった。



「帰ったぞミラ婆」

「……チェス君?」


出迎えたカーミラはまじまじとチェスを見つめた。

長いまつげの眼をぱちくりしている。



「アハハ、別人かと思った」

「そんなに変わってねぇだろ」



カーミラは相変わらずボサボサの髪によれよれの服。

肩には埃がついていた。まるで、置物が長いこと放置されていたときのように。


「まぁ、入って入って。座って座って」



カーミラはチェスの労をねぎらい招き入れた。

以前は雑然と物に溢れた部屋は綺麗に片付けられていた。

散らかっていた本はまとめられ、銀製の測りや杯、カップは磨かれて棚に収められている。

得体のしれない臓物のガラス瓶やおぞましいの骨の標本、厳重に封印されている箱には白い布がかけられていた。



「誰か来たのか?」

「アハハ、ここには誰も来ないよ」



何も乗っていない食卓を囲む。



「それでエルルクはどうだった?」

「……食えねぇやつだ」

「でも、魔法上手かったでしょう。どこまで取得したの?」

「『魔操術・天』だ」


チェスはアルフレイドとの対決からさらに魔力制御に磨きをかけた。

しかしカーミラは不満気な顔をした。



「基礎だけなの?」

「だから、戻ったんだ。ミラ婆、錬成術も魔工技術もあるだろ。魔石を加工してくれ」


チェスは魔石を机の上に置いた。

チェスはカーミラにこれから作るものを説明した。

魔石を加工し魔力を貯める器にする。



「なるほど、魔力を貯めるか。私には思いもつかなかった。ナイスアイデアだね」


カーミラはチェスの短い説明で全て理解した。


「だが、実現できる奴がいない」

「そうだね。魔石を加工するにはそれなりの魔力と知識が必要だ。それにちょっと特殊な眼もいるね」

「眼?」

「魔石は魔法式を内包している天然の魔法の塊だからね。外から見て魔法式を解し、必要なものを取り除いて、必要な分を残さないとね」


簡単そうに言っているが、魔石の中の魔法式は外からでは見えない。人間が生み出した規則正しい魔法式とは違う。


「できそうか?」

「だから戻ったんでしょう? いいよ。ただし、ちょっと時間がかかるね」

「だろうな」

「最初の魔石分解が緻密で根気がいる。それを二個同時に行う。魔力と魔法式という非物質へと戻してから、二つの魔法式を対消滅させて魔力をだけを残す。それを再び魔石に戻す。理屈は単純だけどね。時間と手間がかかるよ」

「ああ、わかった。何をすればいい」


カーミラは笑顔をつくった。

一瞬、彼女目が猛禽類のように怪しく変化したように見えた。


「あとで何でも私の願いを聞いてね」

「今言えよ」

「なら手伝ってあげないよ」

「わかった。おれにできることならな」



二人は作業を開始した。


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