今日の日替わりランチは
久々の予定どおりの更新。
ちょっと無理矢理感が否めませんが、次回から少し過去をします。
「おはようっす」
来店を告げる音と共に、昼前にリュコスが店内に入っていくる。
「おはようございます。
お疲れなのに、すいません」
「いや、俺も今日は暇だなーとか思ってたんで平気っす」
リュコスは店内を軽く見渡し、そこそこ埋まっている席を確認するとカウンターの方へと歩いていく。
すると、カウンター奥の暖簾からひょこっと雪が顔だけを出してリュコスを見つける。
「おはようございますリュコス君。
今日は、よろしくお願いしますね」
「あ、雪さんよろしくっす」
「仕事着というわけではないけど、エプロンを一応用意してありますよ」
「あざっす」
一度、暖簾の奥に消えた雪はエプロンを持って改めて出てくる。
持ってきていた軽い荷物と引き換えにエプロンを受け取り、着けたリュコスは胸元を陣取っている可愛らしいデフォルメ狼のワッペンを見て引き攣った顔になった。
「似合ってますよ」
「えぇ、とっても似合っています」
「……どうもっす」
褒めてくれているであろう二人の言葉に、何を言えばいいのか分からず諦め気味で言葉を返した。
それから、一通りの仕事の説明をした黙示は表に出していた看板を一度下げ、自分が不在という事を書き足す。
「それでは、後をお願いします」
メモを取り見直しているリュコスを見て、黙示は笑みを見せたまま雪とリュコスに見送られながら店から出ていった。
――――
「さて、私は少し奥の方に居ますね。
何かあれば、カウンターの所に置いてある呼び鈴を押してください」
「呼び鈴すね。分かりました」
「はい」
雪も暖簾の奥へと消えていき、カウンターにはリュコス一人になる。
何をしていいか悩んだ末、いつもの黙示の様にと二つだけ流しに置いてあったカップを洗い始めた。
「茜、入りますよ?」
「どうぞ」
治療した部屋から雪の休憩用の個室へと移った茜は、部屋の中で雪が用意した朝食を食べていた。そこへ、雪が飲み物を持って入ってくる。
「黙示さんは、もう行かれたの?」
「えぇ。さっきリュコス君が来て、一通り仕事の説明をしたら出ていきましたよ」
「そう…雪にも迷惑を掛けてしまってるわね」
「私と茜の仲じゃない。
気にすることはないですよ」
茜は、雪の言葉に嬉しそうに笑い、止まっていた手を進めて朝食を食べる事を再開する。
二人は、食事をしつつ仲良く談話をしているとブザーが鳴った。
「リュコス君が呼んでいますね…。
少し、いってきます」
「私も、食べ終えたら手伝うわ」
「ありがとう。
エプロンは、そこのロッカーに入っているから好きなのを選んで」
その言葉に茜が頷いた事を確認すると、雪は少し慌てた様に部屋を出て行く。
残された茜は、朝食を食べ終え少しすると雪に言われたとおりロッカーの中を漁り始めた。
―――ー
「ごめんなさい、遅れてしまいました。
どうかしましたか?」
「五番テーブルのお客様、ランチの注文が三つっす」
「ランチが三つね。
飲み物は、大丈夫ですか?」
「コーヒーとオレンジジュースと烏龍茶っす」
「大丈夫そうですね。
それじゃ、飲み物はお願いします」
リュコスが少し不慣れな様子で飲み物を用意し始めたのを見て、雪は厨房へと移り今日のランチである'カレイのムニエル’の用意を始める。
「雪、何か手伝う事がある?」
一皿目が出来上がった所で、エプロンを着けた茜が厨房に入ってきた。
「それじゃ、付け合せとスープをお願いしていい?」
「これね。分量とか決めてるの?」
「大体同じぐらいで」
雪の答えにふふっと笑うと茜は慣れた手つきでスープや盛り付けをしていく。
その注文が始めだった。そこから、昼ピークの時間帯へと突入したようで次々とランチセットや定食の注文が入り、雪達は休憩無く注文を捌いていった。
ピークが始まりに時間ほどすると、客足も落ち着き店内にも空いているテーブルが出始める。
リュコスは、溜め込んでしまったカップなどを洗いながら一息ついた。
「お疲れ様です。
ピークは過ぎたみたいなので、ここからはゆっくりで大丈夫ですよ」
そんなリュコスに、雪が饅頭とお茶を用意して差し出す。
「ありがとうございます。
ピークの時間に来る事が無かったから、こんなに客が来るとは思って無かったっす…」
「近くで仕事をしている人達とかは、もう常連さんになるぐらい足を運んでくれているんですよ」
饅頭を受け取り、雪に椅子に座らされたリュコスはぐったりした様子でお茶を飲んだ。
すると、奥から茜も出てきた。
「タイミングが悪くてお礼が遅れました。
昨晩は、迷惑を掛けてしまいすいません。ここまで運んでくださってありがとうございます」
出てきたと思ったら頭を下げる茜に、口に入れたばかりの饅頭を少し詰まらせながらリュコスは首を横に振った。
だが、頭を下げている茜には見えておらず慌ててお茶で饅頭を流し込み息を整えてリュコスも頭を下げる。
「謝らないでください。
別に、俺は運んだだけで何もできないっす」
「いえいえ、本当に助かりました」
「きっと、何かの縁だったんスよ。
あんまり気にしないでください」
「…ふふっ、人助けを縁と言うなんて黙示さんみたいですね」
「マスターからの受けおりっす。
自分も助けられてそう言われたんで」
互いに頭を上げ、照れくさそうに笑うリュコスと嬉しそうに笑う茜を見て、雪も洗い物を済ませながら笑みを浮かべた。
それから黙示が帰ってくるまで三人で店番を続けていると、話の内容は昔のことへと変わっていった。
人物紹介は、もう少し先で書く予定。




