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私は本当に望まれているのですか  作者: まるねこ


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12 切ない想い

 彼はミラ嬢と笑顔で踊っている。


 私はその姿を見て重い息を一つ吐き、父の元へと戻っていった。



「ジネット、もうダンスはいいのか?」


 父は入れ替わり、立ち替わりする貴族たちとの挨拶の合間に私に言葉をかけてきた。


「ええ、構いません。ミラ嬢はとても可愛い令嬢でしたね」

「ああ、そうだな」


 父も母も既に察しているのだろう。


 それ以上問うことも聞くこともなかった。


 一部の貴族たちも気付いているのだろう。


 ああ、まただめだったのかと。


 誰もわたしの婚約者について何も言わないのが返って傷つく自分がいる。


「ジネット嬢、ごめん。待たせてしまった。なかなか彼女が放してくれなくて」


 笑顔で戻ってきた彼に微笑みを返す。


「もう良かったのですか?」

「ああ、構わない」

「こちらも挨拶は一通り終えたし、私達もそろそろ戻りませんか?」

「いいのかい? 私も挨拶しなくて」


「ええ、問題ありません。父達が挨拶をしていますから」

「私達はまだ少し仕事が残っているからジネット達は先に帰ってちょうだい」


 珍しく母が笑顔で私達を帰るように促している。


 ……笑顔の裏に笑っていない目を見れば理解できるだろう。彼以外は。


「わかりました。では家まで送るよ」

「ありがとうございます」


「……」

「……」


 悲しいかな。


 私と彼の沈黙はきっと違うものだと思う。


 だって彼の目には既に私が映っていないもの。


 私は彼のエスコートで馬車に乗り込んだ。

 静かな車内はカラカラと車輪の音だけが振動と共に響いていた。月明かりが憂い顔の彼を照らしている。


 だめね。ちゃんと切り替えないと。


 馬車はベルジエ家へとすぐに到着した。


「レオ様、今日の舞踏会楽しかったです。本当にありがとうございました」

「ああ。こちらこそ。美しいジネット嬢とダンスが出来て嬉しかった。明日には領地に戻るのかな?」

「ええ、父達と戻る予定にはしています。レオ様、今度はいつ領地に来られますか?」

「んー。騎士の仕事も立て込んでいるし、当分は無理かもしれない」

「……わかりました。今度会う時を楽しみに待っていますね」

「ああ、私もだ」


 こうしてレオ様は伯爵家の馬車に乗り換えてバルベ家へと戻っていった。



「お嬢様、おかえりなさい」

「ケイティ。疲れたわ」


 私はケイティと共に部屋へ入りドレスを脱ぎ捨てベッドに勢いよく倒れ込む。


「お嬢様、お行儀が悪いですよ。せめて化粧を落としてください」


 ケイティはやれやれと言いながら濡れたコットンを持ち私の顔を丁寧に拭いていくれる。


「はあ、最悪。今日は本当に最悪だったんだから」

「例の婚約者様がやらかしたことは聞いております」

「さすがケイティ。耳が早いわね。あのウエイターから?」


「そうです。私があの場にいなくて良かったです」

「確かにそうね!」


 私はクスクスと笑い少し気持ちを落ち着かせる。


 父たちは今、何を話しているのかしら。


 あとで聞かないといけない。これからレオ様とのことを考えないといけないし、そうなってくると新しい婚約者も見つけなければいけない。


 領地のこともあるし、マリリンのこともある。


 考えることが多すぎて面倒になってきた。全てのことが面倒。投げてしまいたい。


 何も考えずに、邪魔されることなくゆーっくりと寝て、好きなことをして遊んでいたい。


 そう思いながらゴロゴロとベッドの上を転がり、父達の帰りを待つことなく、一足先に眠りについた。



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