表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/85

第22話:友達とのチャットの嵐(一ノ瀬保奈美)

 ――どうしよう。

 たぶん、私はいま、人生でいちばんマズいことをしてしまったかもしれない。


 4丁目のカフェでみんなとお茶を飲んでいる時に、親友の真央、美里、佳代とのグループチャットからの通知が来た。


《犬山城の写真まだ!?》

《ねぇねぇ、早く送ってってば!》

《ツーショット期待してるよ!》


(……あ、そうだった。忘れてた……!)


 私は慌ててスマホを開いて、犬山城で撮った写真を選んだ。

 直也さんを後ろから軽く抱きしめていて、二人とも笑っている――あの奇跡の一枚。


(うん、これなら……きっと喜んでくれるよね)


 アップロード。送信。

 その3秒後、通知音が爆発した。


《はあああああ!?!?!?!?!?!?!?!?》


《これ、バックハグしてるの!?!?!?》


《……お義兄さん……だよね????》


《やばい、尊死した……義兄妹の限界突破……》


《バックハグとか、そういう次元じゃないでしょ!?》


《これ、禁断の義兄妹モノ少女マンガの公式表紙絵だよね!?!?!》


《全国の女子、今、心臓撃ち抜かれたからね!?!?》


「ひゃっ……!」


 私は慌ててスマホを胸に押さえた。

 カフェの隣の席で、亜紀さんと玲奈さんが顔を見合わせる。


「……また、やらかした?」

「うん。通知の鳴り方が“緊急地震速報”レベル」


「ちょ、ちょっと見ないでください!」


 私は真っ赤になってスマホを隠すけれど、遅かった。

 画面に次々と流れ込むコメント。


《ねぇ、次は明治村の写真も!》


《できれば手つなぎとか!》


《いや、もういっそプロポーズシーンで!》


(ま、まずい。これ以上は送れない……!)


 と思ったのに、つい手が滑って――

 “フォルダ選択” のつもりが、“写真送信” ボタンを押してしまった。


 ……送られたのは、例の“ウェディングフォト”奇跡の一枚。


(うそでしょ!?!?!?!?!?)


 スマホの画面が点滅する。既読10、20、30――止まらない。


《あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?!?!?》


《ちょっと待ってこれ!?!?!?》


《ウェディングじゃん!!!》


《お姫様抱っこじゃん!!!》


《キスしてるじゃん!!!!》


《うわああああああああああああ!!!!》


《これは義妹の奇跡じゃない、神話!!!》


《尊すぎる!尊すぎて死ぬ!!!!》


《エモすぎる、エモすぎて死ぬ!!!!》


「ひゃああああああ……!」

 私は顔を真っ赤にして、テーブルに突っ伏した。


「なに?どうしたの?」

 玲奈さんがニヤリと覗き込む。


「……えっと、うっかり、写真を……」

「写真?どんな?」

「……これ、です……」


 画面を見せた瞬間――。


「ぷっ……くっくっくっくっ……!」

 玲奈さん、爆笑。

「ちょっと、これ……最高すぎるんだけど……!!!」

 隣で亜紀さんまで吹き出す。

「これ共有しちゃったら、そりゃ、もうダメでしょ……!」


「ぐぬぬぬ……」


 二人とも笑いが止まらない。

 もう完全にネタにされている?


《この二人、もう結婚してるでしょ!?!?!?》


《もはや “義理” も何もあったもんじゃないよね!?!?!?》


《#合法的に罪》


《#保奈美神降臨》


《#全国お義兄さんファン絶望》


《お願い、ブーケトスの写真も送って!》


《ハネムーンはどこ行くの!?》


《“義妹コスプレ犯罪” で記事書くから取材させて!》


 玲奈さんがスマホをのぞきながら肩を震わせる。


「……SNSにUPされたらトレンド入りしそうね」

「……やめてください……」


 隣に直也さんが来て、私は小さく息をのんだ。


「……また送っちゃったのか?」

「……ごめんなさい」


 少しだけ、直也さんが笑った。


「まぁ、いいんじゃないか。

 嬉しかったんだろ?」

「……はい」


 その優しい声に、また胸が熱くなる。


(……うん。やっぱり、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいからいいや)


 私はスマホを胸に抱きしめて、小さく微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ