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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@5/14【魔物解体嬢】コミックス②巻発売


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第32話 あったかいなあ


「ふぅ、いい湯だったなあ」


「また来たいねえ」


「また来ようねえ」


「そうだにゃあ。みんなでまた来るのにゃ」


「気に入ったようで良かった。また連れてきてやろう」



 温泉を満喫した俺たちは、身体を拭い、服を身に纏って布の上に転がっている。


 身体の芯からポカポカとして心地よく、凛とした冬の空気が気持ちいい。



「さて、休み休み飛べば、昼には小屋に戻れるであろう。片付けが済んだら発つぞ」


「そうだな。あんまり長居もできないしな。次に来るときはしっかり準備を整えて泊まりがけで来ても楽しそうだな」



 俺とヴェルデがそんなことを話していると、隣で大の字になって転がっていたアルクとシエルが跳ね起きた。



「お泊まり!」


「するの!」


「ワハハ、そうか。それじゃあ、決まりだな。今は真冬で冷えるから……そうだなあ、春を迎える頃にまた来よう」


「わーい!」


「やったあ!」


「楽しみだにゃあ」



 何気ない会話で未来の予定が決まることに、なんだか胸が温かくなった。温泉であったまった場所とはまた違う場所だ。これから先も共に過ごすことをみんなが当然のように思っている。



「……あったかいなあ」



 思わず溢れた言葉に、アルクとシエルが目を瞬いた。



「温泉のこと? あったかかったね!」


「お泊まりで遊びにきたら、好きなときに温泉に入れるねえ!」



 無邪気に笑う二人が愛おしくてたまらない。

 何も言わずに二人を抱き寄せると、「きゃー!」「わー!」と歓声を上げてくれる。


 胸の奥が温かいのは、温泉のおかげじゃない。


 大切なパーティを抜けることになったあの日、ぽっかりと胸に開いて隙間風が吹き抜けていた穴が、いつの間にか埋まっていたようだ。まだ軋む時はあるけれど、随分と癒えたのではないかと思う。


 それは言うまでもなく、アルクやシエル、それからシャムやヴェルデのおかげだ。



「ありがとうなあ」



 込み上げてきた思いを感謝の気持ちに乗せる。



「んー? どういたしまして?」


「どういたしまして!」



 急にお礼を言われてキョトンとするアルクとシエルは、首を傾げながらも屈託のない笑顔を咲かせた。



「むむ、なんだか楽しそうなのにゃ。オイラも混ぜるのにゃあ!」


「おわっ! 勢いが良すぎるぞ!」



 二人をぎゅむぎゅむ抱きしめていると、瞳孔を開き、尻尾を左右にゆらゆら揺らしたシャムが飛びかかってきた。


 慌てて受け止めると、シャムはアルクとシエルに挟まれるようにして顔を埋め、ゴロゴロと喉を鳴らした。



「ぎゅー!」


「ぎゅうー!」


「うにゃあん」



 俺の腕の中で、三人がむぎゅむぎゅ身体を押し付け合っている。流石に可愛いな。


 四人で密集しているからか、徐々に身体が暑くなってくる。

 じんわりと汗ばんで、前髪が額に張り付いている。



「……いや、あっついな⁉︎ なんだ⁉︎」



 ただくっついているだけでこんなに暑くなるわけがない!


 俺は慌てて身体を起こして三人を引き剥がす。三人とも汗だくで頬がリンゴのように赤くなってのぼせたように目がトロンとしている。


 おかしい。明らかにおかしい。もしかして、火山活動が活発化したとか?



「ヴェル……」



 答え合わせをするように、少し離れた位置で涼んでいた偉大なる緑竜に声をかけようとした俺は、思わず口を噤んだ。


 ヴェルデの鋭い視線は、空を向いている。

 俺もその視線を辿るように顔を上げて、目を見開いた。



「おい、嘘だろ……!」



 ヴェルデの視線の先には、炎を身に纏った人型の存在――火の上位精霊であるイフリートが滞空していた。


 彼らの住処を荒らしたり、こちらから無理に干渉したりしない限り、知性が高い精霊は人間を攻撃してこない。


 だが、今目の前にいるイフリートは殺気立っていて、見るからに敵意を剥き出しにしている。



 まさか、この一帯がイフリートの棲家なのか⁉︎



 そう思ったが、そもそもここはヴェルデのダンジョンだ。上位精霊であるイフリートが生息しているのなら、ヴェルデが把握していないはずがない。



 もしかして、また招かれざる客というやつか? 多すぎないか⁉︎



 とにかく、子供達を守らなければ。

 そう思い、くったりとした三人を横たえ、三人を守るように結界を張る。


 熱を遮断する効果を付与し、風魔法と水魔法を組み合わせて結界内に涼風を生み出した。


 三人の表情が、少し和らいだように見えるのでひとまず安堵の息を漏らす。


 ヴェルデに色々問いただそうにも、ヴェルデはずっとイフリートに鋭い視線を向けたままこちらを向く様子はない。


 痺れを切らした俺が、ヴェルデに歩み寄ろうと足を踏み出した時、ヴェルデは低く地を這うような声を出した。



「ふん、随分と舐められたものよ」



 ヴェルデは嘲笑するように口の端を歪ませた。



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