真名津姫女 ③
「…さてと…ひいふぅみぃ…へへっ、十二人か」
「これでしばらくは食い物には困らねぇっスね兄貴!」
閉ざされた空間。
マリーたちはGWを利用し、同級生と一緒にテーマパークに遊びに来ている。
しかし、本来楽しい一日になるはずだった今日、それが劇的に変わるとは誰も想像してはいなかった。
マリーを含む同級生男女十一人。
そしてマズいことにそのメンバーに加え、凶悪な宇宙人に拉致された十二人目として、小学生の少女までもが巻き込まれている。
「…こ、これは何? 今何が起きてるのか理解不能」
最初に声を挙げた六界アリスが皆の気持ちを代弁するように呟く。
広さはおよそ普通の教室程度だろうか。
何もなくただ薄暗いだけのその場に、ほとんど全員が立ち尽くす以外になかった。
「こ、これもアイツらの仕業だっていうの?」
「ま、マリーちゃん、あの宇宙人は私たちを保存食にしようとしてるみたいだよ」
焦った様子の魅麗と雛が続いて口を開いた。
「俺たちの仲間内ではちょっとした噂になってるんスけどね」
「だなぁー、俺らに狙われたのに生き延びたヤツがいるとか」
「どうやらそいつは新月と知り合いらしいんで、んじゃあ誰も来れない空間に閉じ込めればいいなと考えたわけっスよ!」
会話の内容から、どうやら宇宙人二匹は兄弟分であると悟ったが、二度も宇宙人の手から生き残った当のマリーでさえ、まさかこんな方法で捕まるとは思ってもみなかったのだ。
「…お姉ちゃん」
不安そうな顔を向け、小学生の少女は半泣きの表情をマリーに見せている。
「だ、大丈夫、心配しないで。絶対に私がなんとかするから!」
根拠のない言葉を少女に投げかけるも、マリーも全く同じ思いである。
誰か助けて欲しいとはマリー自身が言いたいところだ。
けれど、まだこんな幼い少女までも手にかけようとするような連中に対し、恐れよりも怒りが勝っていた。
「黒鋼」
「霧島君」
先日襲われたばかりの二人、そしてすでに凶悪宇宙人の存在を知っている雛と魅麗。
他の皆よりは驚きと混乱具合が少しだけマシとはいえ、それでもこの状況に焦りは隠せない。
過去の経験から四人は「新月美裂」に、この場所を伝えるのが最善策だというのが満場一致だと気づいていた。
--- けどどうやって?
時間が経つごとにこちらが不利になるのはわかっている。
少しでも時間を稼ぐしかない ---
他の同級生が慌ててスマホで外部との連絡を試みるも、その表情から徒労に終わっているのは気づいている。
「マリーちゃん…」
こんな状況でも、たとえ強がりだとしても、誰かにそんな言葉を言えるマリーを見て、真名津姫女の目には知らないうちに涙が浮かんでいた。
「どれ、まずは少しだけ味見してみるか」
「あっ、いい考えっスね兄貴! こいつらの内臓は、いったいどんな味なんスかね!」
「ひっ!」
十メートル四方しかない空間、圧倒的に逃げ場などなく、ヤツらの声は両端にいても聞こえる距離でしかない。
「味見」と称し、ヤツらはアリスに手を伸ばす。
ほぼ二メートルはあろうかという体躯の化け物に抗うなど、人間の成人男子でもおそらくは不可能だろう。
何より、マリーたちは知っているが、宇宙人連中は、人間を効率的に殺害できる「能力」を持っていると想像できたからだ。
「いやあぁぁぁーーー!」
「へへっ、心配すんな。今は片腕だけで勘弁してやるよ」
他の十一人から離され、アリスは空間の中央に引きずられていく。
「くそっ! やめろ!」
霧島瞬はそれを止めようと殴りかかるも、その渾身の力を込めた拳もヤツらを止める原因にはならない。
「はぁ? 何やってんだおまえ?」
痛みを感じるほどのダメージさえ与えられず、逆に軽く腕を振った平手を受けただけで瞬は吹っ飛ばされる。
「霧島君!」
「瞬! 大丈夫か!」
マリーと同級生・鈴木が声を上げる。
「くぅ…痛ぇ…」
マリーたちを保存食にするつもりらしい宇宙人たちは、どうやら今すぐ命を奪う気はないようだ。
それは幸いなことであったが、何日生き延びられるかという目安はない。
今すぐなんとかしないと --- それはその場にいる十二人全員が考えることだ。
「では」
「いただきますっス」
「いやぁっ!」
泣き叫ぶアリスの目の前で二匹の宇宙人が口を開く。
アリスの表情には絶望の色が浮かび、抵抗する気力さえ失っていった。
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雲ひとつない快晴が高揚した気持ちを招いている。
絶好の行楽日和と呼ぶにふさわしい空模様に、マリーたちはウキウキした気分を隠せなかった。
「みんなー揃ってるかー? チケットは持ってるかー?」
「おーーーっ!」
マリーも同級生・鈴木の点呼に、他の同級生たちと同じように手を挙げる
お昼前の午前というまだ早い時間、テーマパークの入り口に制服の高校生男女十一人の集団が固まっている。
「なんつってもSNS映えするのは制服っしょ♪ 最近流行りっぽいし」
最近の流行に敏感らしい魅麗の提案により、なぜか制服での参加となった一行。
大人気テーマパーク、アミバ―サル・ スタジオ・ジャッポン。
通称・ASJ。
「ASJはどんな流行でもすぐに習得できる天才だ」
とはアリスの弁である。
GWという連休ともなれば、普段からASJに行きたい人はもう我慢できないらしい。
まだ長期休みの初日だというのに、入場する人の列は想像以上の多さだった。
「えー、今回はよく知ってる同級生に加え、なんと! GW明けにうちのクラスに編入する真名津姫女さんまで参加してくれましたぁ!」
「おぉーーー!」
姫女を知らないマリー以外の同級生たちから歓声が上がる。
姫女が参加したことで、男五人女六人という比率になってしまったが、そんなことは誰も気にしていない様子だ。
「えー、はじめまして。真名津姫女です」
姫女にしても、まだ初対面である同級生の中に混ざるのは、少し緊張している様子であったが、その中にマリーの顔を見つけるや、安心した表情を見せる。
「何よあの子。編入生だって目立ちたいわけ?」
「…むっ…編入生から『清楚系』の匂いが…」
「いやいやあんたら、そもそもうちのクラスじゃないでしょうが」
「そ、そうだよね(困笑)魅麗ちゃんとアリスちゃんが参加してるの、よく考えたら謎だよね」
別のクラスなのになぜか当たり前のように今回のイベントに参加している二人に、改めて不審に思うマリーと雛。
魅麗にしてみれば「私の勝手」らしいが、どうやら姫女が女子の中で最も目立っているのが気に食わないようだ。
「まぁまぁ、いいじゃん。姫女はあんたと違ってまともだし、優等生だからさ」
「ん-? あんた、なんであの子の肩持ってるわけ?」
「あれ? マリーちゃんって知り合いなの?」
マリーは簡単に姫女との経緯を話す。
中学の時同級生だったこと、姫女が社交的な優等生だったこと、昔近所にあった神社が実家だということ。
それでも「中学卒業間際の告白事件」については言及はしなかったが ---
「平均点が九十点台⁉ 何それ! 化物⁉」
「…社交性がハイパー化していると…わたしまけましたわ(回文)」
入場前から魅麗・アリスの二人は負けを認めたようである。
「ふふん、姫女はちょっとおつむの出来が違うのよ! 私たちと違ってね!」
「えーと…どうしてマリーちゃんがドヤ顔してるの?(困笑)」
なぜか自慢するマリーに、「おめーもこっち側だろ!」という視線を魅麗とアリスは向けてくる。
平均八十点台の雛はツッコむのを躊躇するだけだった。
「うおおぉぉぉーーー!」
「ひゃあぁぁぁーーー!」
ASJのアトラクションを存分に満喫する同級生たち。
マリーたちも当然同じように騒いで、自撮りや「映え」を求めて記念撮影を楽しんでいる。
「ほら! アトラクション! もう一回行こう!」
「ま、また?」
普段とは別人の様子を見せ、普通の女子高生のようにはしゃぐアリス。
よほど楽しかったのか、いつもの素っ気ない口調とは全くの別人に見える。
「つか、誰だおまえ(困笑)」
「も、もしかしてアリスちゃんって…これが素なんじゃ(困笑)」
マリーと雛は見慣れないアリスの様子に驚きながらも新鮮さを感じていた。
「魅麗! 行くよ! レッツアトラクション!」
「オッケー! たっのしーーー!」
一緒に楽しそうにはしゃぐ二人を見ながら、雛は微笑んでいる。
「あー二人とも行っちゃった」
いくら楽しいとはいえ、同じアトラクションを何度も見るのは勘弁だとマリーは思った。
そんなマリーをよそに、魅麗とアリスは仲良く走っていった。
「マリーちゃん」
ベンチに座ったマリーを呼ぶ声。
廊下で会ったあの日以来、話す機会がなかった姫女が目の前にいた。
「姫女」
「うん」
笑顔を見せながら同級生たちとエンジョイしている姫女の顔を見て、マリーはなぜか安堵を覚える。
「姫女ちゃんだよね! はじめまして、よろしく! 私、高美原雛だよ!」
「はじめまして、私は真名津姫女、よろしくね」
笑顔で挨拶を交わすと、雛は遠慮なく色んな質問を投げかけている。
頭の出来が違う二人なら、おそらくすぐに親しくなるだろうという予感がマリーにはあった。
中学時代の話や好きな科目、果てはペットや世界文明などにも話は飛び、マリーにはわからない内容で会話は埋められていく。
「マリーちゃん」
「ん?」
少しの時間が経ってから、姫女はおもむろにマリーに声をかける。
「ごめんね、別に無視してるわけじゃないんだよ」
「うん」
「あー、ごめんマリーちゃん。姫女ちゃんとばかり話し込んでたよね」
雛はマリーに謝りながら自分の頭を小突く。
「マリーちゃんだけに話しかけるわけにもいかなかったし、迷惑もかけたくなかったから」
「あ、そう」
言い訳のようにしか聞こえないマリーは少し不貞腐れたような態度をしてしまう。
少しだけ姫女を困らせてやろうという悪戯心が芽生えたのか、素っ気なく返答する。
「前にも言ったけどさ…」
「ん?」
「マリーちゃんは私の『特別』だから」
「…」
雛は横で聞いているも、その姫女の言葉の真意を測りかねている。
「だからこそマリーちゃんが嫌がることはしないし、私はそばにいられるだけでいい」
「…(え? え? ナニコレ)」
まるで「愛の告白」のような姫女の言葉に、雛はわけがわからずうろたえる。
「マリーちゃんを守るための覚悟はできてるから…命に代えてもね(笑顔)」
驚いた表情でマリーは姫女に向き直る。
「ごめん、他のみんなに呼ばれてるから。雛ちゃんもごめんね。またあとでね」
「う、うん。またねー」
呆けた顔のマリーを尻目に、姫女はベンチから立ち上がるや、手を振りながら去っていく。
「どどどどういう意味? ままままマリーちゃん?」
「スクラッチスンナ」
真面目な優等生の裏に隠れている影を垣間見た雛は少し混乱している。
「…はぁ」
「あ、あの子って…マリーちゃんを?」
わざわざ言う必要もなかった話を、マリーは雛に話さざるを得なかった。
中学卒業時の告白と失恋、そしてどうやらそれが原因でしばらく引き籠っていたこと。
多分にマリーから見た推測という注釈つきだが、おおよその経緯を知った雛はようやく納得しているように見えた。
「…なるほどー」
「…笑っちゃうでしょ? 私のどこにそんな好かれるところがあるんだか」
今でもマリーは自分のどこがいいのか全くわからない。
成績が良いわけでも品行方正なわけでもなく、どこにでもいるただの凡人でしかない。
「けど、姫女ちゃんの気持ちはわかるよ」
「はあぁ~?」
雛までもおかしなことを言い出したと思い、マリーは素っ頓狂な声を発した。
「こういう言い方もなんだけど…あの問題児だった魅麗ちゃんと、他人と関わるのが嫌いなアリスちゃんが、マリーちゃんには心を許してるんだよ?」
「たまたまでしょ」
「ふふっ」
「なによー?」
「自分の良さってさ、自分じゃわかりにくいからね」
それだけ言うと、雛は話を切り上げ立ち上がる。
仕方なくマリーもそれ以上追及するのも不自然に感じ、同じく立ち上がると雛と連れ立って場所を移動するのだった。
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「はぁ…」
同じASJ内の一角、人の通りが多い場所で少女は溜息をつく。
「お嬢様、いかがなさいました?」
その小学生高学年の少女の後ろからはがっしりとした、背広の上からでもその鍛えられた筋肉がわかる成人男性がついてきている。
「…あまり楽しくないです」
少女は無遠慮にそう答え、憂鬱そうな表情は男性に向けないまでも、はっきりと言い切った。
「申し訳ありません。私がそばにいるせいでしょうか? しかしこれは大和お嬢様を護衛するためで ---」
「あなたのせいではありません」
ようやくそのお嬢様と呼ばれた少女 --- 日ノ本大和は成人男性に向き直り、明確に答える。
「今の私は心の底から楽しいとは思えないのです。親父様のお仕事のせいでしょうか、私は色んな人の権力に惹かれた下心に接して、平気で嘘をつく人があまりにも多い現実に嫌気が差しているせいです…」
「は、はぁ…」
「あなたはよくやってくれています…ごめんなさい、楽しくないのは私自身の問題です」
寂しそうにつぶやく大和の背中は、ある種の絶望を纏っている。
まだ十二歳で、未来に対し希望溢れる盛りだというのに、日ノ本大和は政治家の父親の仕事の関係で、頻繁に自宅を訪れる他の政治家の、「先生、先生」と持ち上げる明らかなお世辞まみれの言葉を聞きながら育ってきた。
政治という、特に人脈や派閥が重要な世界の一端に触れ、幼い大和の心は人知れず錆びていく。
「嘘も方便」という言葉は理解しながらも、それは自分のためでしかない嘘がまかり通る世界は大和にとっては毒にしかならなかった。
「何かに熱中した子供時代」など経験しないまま、大和の心は苦悩だけに支配されていく。
人生に希望など持てない、それでも何かに熱中しようと試みるも、余計に心は冷めていく。
十二歳という年齢で生きる希望など欠片もない、今の大和には「死」さえも救いに思えてきていた。
「きゃっ!」
「あっ!」
背の低い大和の姿が見えなかったのか、そこに通りすがったマリーは大和とぶつかってしまう。
「ご、ごめん! 大丈夫だった!?」
「は、はい、こちらこそ申し訳ありません」
確かに人混みの中で立ち止まった大和に問題はあったのだが、それでもマリーは雛との会話でよそ見をしていたことを不注意だと思った。
「えっと…」
キョロキョロと周囲を確認し、マリーは大和の手を引くと、人の波から抜け出して近くの建物のそばまで移動する。
「どこも痛くない? ごめんねー、私よそ見してたから」
「いえ、お姉さんのせいではないです。私が…」
マリーには大和の心の苦悩などわかるはずもない。
明らかに元気のない大和を見て、どこか怪我をしたのか勘違いしたせいだ。
「…あ」
大和は護衛の男性のことを思い出した。
人の行列の多さに、護衛男性はふとした拍子に大和を見失ったようだ。
「あれ? お嬢ちゃんどうしたのかな?」
笑顔で雛が大和に話しかけるも、大和は他のことに気を取られている。
「ご、護衛の人とはぐれて…」
「護衛の人?」
「お姉さんに引っ張られて、それで…」
苦悩している大和ではあったが、現実問題として今保護者である護衛男性から離れることに大きな不安を覚える。
「…あちゃー! もしかして私、やらかしちゃった!?」
「ちょ、ちょっと余計なお世話しちゃったかもね」
盛大に後悔するマリーに苦笑しながら、雛は迷子センターへの届け出を提案する。
人混みの中でも護衛男性は頭ひとつほど背が高かったため、遠くからでも確認はできるが、大和が周りを見渡してもそれあしい姿は見えなかった。
おそらくはあまりの人混みのため、その大きな体躯で立ち止まるのは不可能だったのだろうと思われる。
「ま、迷子センターね! オッケー!」
「マリーちゃん、急ごう!」
少し迷ったが、本気で自分の心配をするマリーに安心感を覚える大和。
見知った人よりも、全く知らない他人の方が親切に感じる皮肉を感じていた。
「あっ、マリーちゃん」
「姫女ぇっ!」
必死の形相で近づいて来たマリーに気づく姫女。
理由はわからないが女の子の手を引いている様子から、なんとなく事態を察した。
「ま、迷子センターはどこ!?」
「ふふっ、やっぱり」
予想通りの返答に姫女は笑いをこらえることができない。
「なんで笑うの」
「だって…あはは! 予想通りだったから」
「むー」
見透かされていたと察したマリーは頬を膨らませ、ふくれっ面を見せる。
そんな様子さえも姫女にはご褒美なのだが、今はそんな場合ではないことは百も承知だった。
「おっ? どうした黒鋼」
「どうしたの? その子は?」
姫女の周囲に他の同級生たちが集まって来る。
今日が初対面だというのに、もう同級生たちと打ち解けている姫女の社交性に驚きを隠せないマリーだった。
「魅麗ちゃんとアリスちゃん、アトラクションも見たから迷子センターに向かうって」
雛はどうやら連絡を入れたらしい。
一旦全員が迷子センターで落ち合う手はずとなった。
「大和ちゃんごめんね、急いで迷子センターに行くから泣かないでね」
雛が不安そうにする大和を抱きしめながらつぶやく。
「いえ、私の方こそご迷惑をおかけして…ごめんなさい」
同級生たちは気を遣ったのか、全員が大和に声をかけていた。
そしてそのまま全員で迷子センターに向かい、事態はそこで終わるはずだった ---
「この女の肩から肘までは俺が貰うぜぇー! あ、おまえは肘から指までな」
「チェッ、わかりましたよ兄貴。あ~あ、骨ばった部分だけどまぁいいっス」
「あぁ…あ…」
アリスのすぐ目の前、わずか三十センチという至近距離で、二匹の宇宙人は、その大きな口を開く。
--- 作り物でも着ぐるみでもない
その生々しい口内には「生物感」があり、生粋のヲタであるアリスには、作り物である着ぐるみとの相違が一層理解できた。
同時に獣臭さと吐息が、造形物っぽさを否定している。
もはやアリスにとっては、比喩ではなく、物理的に食われるのが決定済みだという現実。
楽しい思い出が、人生の終焉の日という印象に上書きされていく。
他の同級生たちは恐怖のあまり動けずにいる。
目を背ける者、倒れている者、それぞれの様子がアリスが最後に見た光景だと思われたが ---
「このやろーーー!」
不意打ち同然に宇宙人の横っ面を殴り飛ばす拳。
だがそれは、「ぽこん♪」という表現が似合うほどの弱々しさだったが、不意を突かれた宇宙人にとっては、威力よりも驚いたことの方が効いているようだった。
「はぁっ! はぁっ!」
「なっ! なんだぁ!?」
怒りに任せた一撃に驚愕する宇宙人からアリスを奪い取り、そのまま手を引いて後ずさる黒鋼マリー。
「こっ! この野郎! お転婆さんかよ!」
「あ、兄貴! 平気っスか!?」
ただ怯えるだけの連中だと高を括っていた宇宙人には、よほど衝撃だったのだろう。
まさかここまで抵抗を続けるとは思ってもみなかったからだ。
「あ、あんたらのご馳走にするほど、私の友達は安くないわよ!」
涙ながらに訴えるマリーに驚いたのは宇宙人だけではないようだ。
「う、宇宙人がホントにいたとか信じられないけど」
「おまえらなんかに黙って食われるのはごめんだ!」
同級生たち全員が吹っ切れたようで、少し空気が変わった様子がある。
「…黒鋼っ…!」
床に叩きつけられたダメージに耐えながら、霧島瞬も無理矢理立ち上がる。
「霧島君!」
マリーを守るようにその前に立ち塞がり、宇宙人を睨みつけた。
「気持ちだけはおまえらには負けねぇ…」
「けっ! バカが! ちゃんと立ててねぇクセにでかいこと言うんじゃねぇよ」
ヤツらは吐き捨てるようにそう言うが、少し空気が変わったことは感じ取っている。
気を抜けば、自分たちも地球人と同じように娯楽の対象にされてしまうからだ。
一部のゴロツキ宇宙人にとって、他人を出し抜いてでもうまく立ち回ることが、自分が生きる界隈での常識だったからだ。
「チッ! わかったよ、じゃあ取引にしようじゃねえか」
「なんだと?」
「この空間からてめえらは出られねえ、それはわかるな?」
悔しいがそれは事実である。
今どれだけ抵抗しようとも、マリーたちが目の前の二匹に勝てる要素はほぼないと理解している。
「だ・か・ら、今の女、ピンク頭のそこのお転婆女」
「誰がお転婆よ! 失礼しちゃうわね!」
「何が言いたい? 黒鋼がお転婆なのは事実だが、それと取引になんの関係がある?」
「霧島くぅ~ん(涙目)」
予想もしないフレンドリーファイアを直に受けたマリーが少し落胆する。
霧島瞬から言われるのは、宇宙人連中に言われるよりも数百倍のダメージのようだ。
「私だって! 私だってこう見えてねぇ! 意外に可愛いところはあると思うの!」
「わかったわかった。それで? どんな取引だ?」
ほぼ無視される形になったマリーの落ち込み様を見た同級生たちは、なんとなく察したようだ。
(ははぁ~…あ、こいつらそうなの?)
口には出さないまでも、皆それぞれにとっては周知の事実と化してしまった。
「えっ!? マジで!? あいつらいつの間にそんな関係に!?」
「さぁ…(困笑)ま、まだなんじゃないかな」
魅麗はどうやら本気で驚いていたが、ある程度事情を知る雛は、誤解のないようやんわりと否定する。
「…」
姫女の心の内には激しい動揺があったが、それでも耐えるしかなかった。
決して表には出さず、常に笑顔でいるのが自分の役割だと決めていたから。
「なぁに、簡単なことだ。そのピンクさえ置いていけば、てめえらは全員無傷で返してやる」
「!?」
宇宙人の言葉に全員が言葉を失う。
「てめえらがどれだけ頑張ってもここからは出られねえ、わかるな? 俺たちをなんとかしようにも無理だってわかってるはず。じゃあピンクを差し出せば? あら不思議! てめえらは元いた場所にすぐ帰れるって寸法さぁ!」
提示されたのは体のいい人質作戦だ。
だが、宇宙人の言うように八方塞がりの状況では確かに良い条件なのは確かだった。
とはいえ、良心から絶対に受け入れられる条件であるのも間違いない。
「兄貴ィ~、その条件じゃもったいないっスよ~、どうしちゃったんスか?」
「うるせえ! てめえは黙ってろ!」
一喝された弟分はそのまま黙るしかなかった。
「ひ、卑怯よあんたたち!」
マリーが叫ぶも、敵は圧倒的有利なのを理解してニヤニヤ笑う以外には反論してこない。
黒鉄マリーと霧島瞬というカップル(誤解)誕生を喜んだのも束の間、全員の沈黙が迷っているのを証明していた。
「…」
「さぁ、どうする?」
「…バカか」
「なんだと?」
「霧島君…」
「そんな約束をおまえらが守るわけないだろ! いや、たとえ本当だとしてもだ!」
「てめえ~!」
「俺は黒鋼を! マリーを絶対おまえらには渡さない!!」
「霧島君!」
マリーは泣きながら霧島瞬の背中に抱きついた。
霧島瞬のその言葉に、ようやくマリーは自分の気持ちに気づいたのだろう。
その言葉は他の同級生にも波及し、皆は自分の心の弱さに気づかされたようだった。
それは、人を信じることを諦めかけていた大和にも響いていた。
「交渉決裂だぁ! てめえらは今全員ここで引き裂いてやるぅ!」
「くぅっ!」
異様なまでの怒りの空気を纏い、宇宙人はその本性を現し、その爪と牙を剥き出してにじり寄る。
凄惨な光景が広がろうと思われたその時 ---
「待って!」
「!?」
唐突に発せられた言葉にその場にいた全員が振り返る。
「あなたたちの交渉、私が受ける」
「姫女…?」
そしてマリーと瞬の前に進み出た姫女は、そのまま話を続けようとする。
「てめえが受けるだと? どういう意味だ? あぁ?」
不思議そうな口調で姫女に問いかけるが、マリーたちからすれば、その表情から読み取るのは不可能だった。
異様に肥大した口だけがやたら目立つ、目鼻立ちと呼べる部分はその宇宙人には見受けられなかったからだ。
一見すると、その口がついているのが頭部かどうかさえ怪しい。
「私がマリーちゃんの代わりにここに残る」
「えっ!? ひ、姫女!」
「ほう?」
何事かと思えば、姫女から出たのは意外な話である。
だが、この連中相手に、そんな取引が通用するとでも本気で思っているのだろうか?
恐怖のあまり気が狂ったのではないかとマリーはそう思ったほどだ。
「当然、他のみんなも無事返してくれるよね? あんたたちが言い出したことだよ」
「何考えてんのよ姫女! こいつらが約束なんて守るわけないでしょ!?」
マリーの言い分は正しいと思える。
瞬だけでなく、他のみんなもうなずいた。
「姫女っ!」
「ダメだな。俺が今ムカついてるのはそのピンク頭だ。てめえが残ろうとも俺の気は晴れねぇ、却下だ」
「それについては私が謝るよ、ごめん」
「…姫女」
「けどね」
「あぁ?」
「私は取引として公平だと信じるから言ってるんだ。あんたたちみたいなクズに命乞いをするためじゃない」
「てっめぇ…」
「私にはあんたたちと戦える力なんてない、けど私はマリーちゃんを守りたいんだ! 命を賭ける覚悟なんてもうできてるよ!」
真っ直ぐに化物に向かって指を差す姫女。
マリーを守ろうとする瞬に張り合ったのかはわからない。
ただ、姫女自身は、瞬が動かなくても、おそらく自分はそうしたであろうという信念がある。
バカだろうと自己犠牲だろうと、ただの自己満足だろうと誰に罵られようとも、姫女はそんな外聞には耳を傾けない。
今この状況でできることは、マリーの代わりになることが最善だと思ったからだ。
「おバカっ!」
姫女の頬を渾身の平手打ちが襲う。
怒る相手の矛先を変えたマリーの我慢がとうとう限界を迎えたようだ。
「…マリーちゃん」
「あ、あんたがここまでバカだとは思わなかったわよ私は!」
「…うん、ごめんよ…マリーちゃんが怒るのはすごくわかる…」
「私があんたの犠牲で助かったとして、それで喜ぶとでも思ってるの!?」
「…」
「ナメるなぁ!」
姫女の胸ぐらを掴み、正面から文句を言うマリーだが、その心中では色んな思いが渦巻いたのか、徐々に力を失い膝をついてしまう。
どちらにせよ、このまま時間が経てば全員が絶望的なのはわかっていることだ。
「全員が助かる」のは状況から考えると理想論に過ぎない。
だからこそ、一人が犠牲になるのは「正しい判断」とも言えた。
しかし、今のマリーにそんな冷静な判断はとても無理な状態なのは想像に難くはない。
「ケッ、よく言うぜ。わかったよ、そこの紫頭が残るなら、他のヤツらは元の場所に返してやる」
「!?」
マリーにしろ、宇宙人から思ってもない言葉が飛び出した。
まだ半信半疑だが、まさか本当に約束を守るとは思えない連中だったからだ。
「あーマジだ、俺たちの本業は商人だからな。おまえらをいたぶるのはあくまでも『趣味』の一環だ。信用が大事なんだよ、商人ってのはな」
「やだ…悪趣味もいいとこね」
人を殺害するのが「遊び」だと言い切る発言に、魅麗は怒りと嫌悪感を露わにする。
「…マリーちゃん、ありがとう」
「え?」
片方だけ赤く腫れた頬を押さえ、姫女は寂しそうな顔で微笑を浮かべる。
「この痛さが、マリーちゃんが私を『大事な友達』だって思ってるのをわからせてくれるよ」
「…姫女…なんで」
マリーのそばを離れ、姫女はゆっくりと二匹の宇宙人の元へ歩み寄る。
「マリーちゃんはさ、人を惹きつける引力があるんだよ。それがマリーちゃんの魅力。だから…自分を卑下しないで」
「姫女っ!」
「ありがとう、ここでお別れだね」
宇宙人の片割れが、どうやら元の世界に戻る力を使ったらしい。
姫女に駆け寄ろうとしたマリーは、その伸ばした手の先にあるのが見知った人混みなのに気がついた。
「こ、ここは…元の場所か?」
「そうだよ! ほら! 迷子センターがある」
同級生たちが口々に叫びながら笑顔を見せている。
しかし、帰還したのは十一人。
やはり姫女だけはあの空間に残されたのだとマリーは再確認すると、その場に泣き崩れるのだった。
「へへ…約束は守ったぞ? まぁ、てめえを食ったあとは、またすぐにあいつらはここに逆戻りだけどな」
「…そうだろうね、あんたらならきっとそうするだろうと思ってた」
冷静な様子で姫女はそう答える。
たとえ今、自分が命を賭けてマリーを救おうとも、それは一時しのぎにしかならないのはわかっていた。
それでも、目の前にいる化物の話から、マリーたちが何度も逃げおおせたという事実はあったらしい。
目の前にある危機さえなんとかできれば、この先もマリーが助かる可能性の芽はある。
どのみち自分の命程度で、マリーの命をずっと保証することなど無理な話だと姫女は理解していた。
「それじゃあ、今度はてめえが約束を守ってもらうぜぇ~」
「両手両足を先に千切ってやりましょうよ兄貴~」
下品な笑いと品性の欠片もない会話、所詮それがコイツらの本性だ。
一切の躊躇などなしに、この化物たちは四肢を千切ってから食うつもりなのだろう。
「…マリーちゃん…心配させてごめんね…」
姫女は間近に迫る化物の口から目を背け、「親不孝だな私」と両親へ最後の別れを心の中で告げた。
「んごぁ…?」
喜びでふざけているのかと思うような妙な声を、突如化物が上げる。
閉じた瞼の裏に微かな光を感じた姫女。
「…え?」
目を開け、化物に向き直り、状況を確認しようとすると ---
何があったのか姫女には全くわからない。
化物の巨大な口から上はなくなっており、姫女を食うことなどもはやできない様子であった。
「おごぁっ!」
再びの叫びと同時に、今度は化物の両手が床に落ちる。
そして一瞬の閃光が見えたと思えば、姫女が声を上げる間もなく、目の前の化物は数十の細切れへと化していく。
「…え? えっ…!?」
驚きながら後ずさる姫女。
薄暗い空間で、まるで鎌鼬のような現象が起きたようで、床へとへばりついた化物の肉塊は気持ち悪い液体へと変わっていく。
「…人の命は…貴様らのおもちゃじゃない」
抑揚のない、それでも怒りが宿った少女の声。
目をこらすと、赤の瞳が宇宙人の背後で煌々と光っている。
「…だ、誰?」
今しがたの化物以上の圧倒的な力を前に、姫女は初めて恐怖を覚える。
気づかないうちにバラバラにされた化物の姿が、自分の未来と重なる。
「あ! 兄貴ィ!」
情けない声を発するや、もう一匹の化物は姫女の存在など忘れたかのように身構える。
「…返してもらう、その子を」
「て、てててめぇ…まさか、新月か!?」
「新月?」
姫女にとっては何者なのかはわからなかったが、その小刻みに震える化物の様子から、どうやら自分にとっては事態が好転したのかと、ほんの少しだけ安心を覚える。
「わかっている…貴様らが殺そうとしたのは十二人…」
「そ、それが! それがなんだってんだよ!」
「では私は十三人目…貴様らにとっては…『死神』だ」
「ひぃっ!」
その言葉を聞いた化物の弟分は、どうやら戦意を喪失したらしい。
新月と呼ばれた少女から一定の距離まで後ずさると、空間の壁をすり抜けて逃げていった。
「…怪我はないか?」
「あ、ありがとう…助けてくれたの?」
「…遅れてすまない、座標位置を特定するのに時間がかかってしまった」
「ざ、座標位置? というと…もしかして空間座標のこと?」
「…頭がいいな」
ほんの少しだけ新月美裂は口元に笑みを浮かべる。
「…長居は無用だ、この空間から出る」
「は、はい!」
美裂は指で空間をなぞると、そこから円形状の穴が開く。
驚く姫女の手を取るなり、美裂は元の空間へと連れ立った。
「姫女っ!」
目の前に空間の穴から出て来た姫女の姿を見るなり、マリーは叫びながら抱きついた。
「マリーちゃん」
「良かった! 無事で良かったぁ~!」
マリーに抱きつかれた姫女の鼓動は早くなるが、マリーを心配させたことについての罪悪感が先に立っていた。
「ごめん…ホントに…」
「そうよ! もうあんなことはもう言わないで、お願いよ」
マリーにしろ、姫女が自分のためにしてくれたことは嬉しくもあり、それでも大切な「友人」を失くすのは何よりも耐え難いことだ。
その行為は美しくもあり、それでも遺された者にとっては残酷な美でもある。
理屈ではなく、自己犠牲などマリーは感情的に否定したいと考えた。
「…また君が絡んでいるのか、黒鋼マリー」
「あっ! あなた! ありがとう! やっぱり来てくれたのね!」
マリーは続いて美裂の姿を見つけると、その両手を取り、感謝の気持ちを叫んでいる。
マリーのあとに魅麗と雛も続く。
三人の様子を見て、姫女はどうやらすでに既知の仲なのだとわかった。
しかし同時に、美裂の姿を見て少し思うところがあるのは事実だ。
(この人…どこかで見たような…?)
それは想像ではなく、また姫女も美裂を知っていたということにすぐ気づくのである。
「皆さん、本当にありがとうございました」
「拉致事件」もひと段落し、ようやく大和も護衛の男と再会できたようだ。
正直迷子どころか命の危険まであったのだから、あまりの慌ただしさに大和本人も自分が迷子だというのを忘れるほどだった。
マリーをはじめ、その他同級生全員に礼を述べる大和。
結果オーライではあったが、今まで自分が見聞きしてきた世界とは違う、人の好意に触れる機会に大和は自分なりに考えたようだ。
「お姉さん、本当にありがとう。お姉さんがいなければ、私は今頃どうなっていたか…」
「あはは、いいのよ、別にたいしたことしてないし。当たり前のことだから」
大和はその言葉に少し吹っ切れた表情を見せた。
「皆様、本当にありがとうございました。では、私どもはこの辺で」
マリーたちに深々と頭を下げる護衛の男性。
彼に促された大和に、マリーたちとの別れの時間が近づく。
「私、また他人を信じられそうです」
「えっ? む、難しいこと言うんだねぇ~、うん、けどその方がいいよ! それがハッピー!」
マリーには大和の真意は理解できなかったが、他人を信じることができるならそれがいいと単純に思う。
それは、自分以上に、危険を伴いながらも「誰かのために」生きている人がいるのを知っていたからかもしれない。
ようやく最後に笑顔を見せた日ノ本大和。
マリーと大和がその後再会するのは、この時よりまた数年の月日が必要だった ---
「…あっ!?」
テーマパークの建物の向こう、そこから巨大な嫌な顔が覗かせ、ASJの来場者たちの視線を奪う。
「な、何あれ!?」
「さっきの宇宙人じゃないか?」
「嘘…もしかしてかなり巨大じゃない?」
一般の人々はどうやらアトラクションのひとつだと勘違いしているようだ。
しかしマリーたちにとっては、先程自分たちを食おうとしていた相手である。
その明らかに化物といった風貌は間違えようなどなかった。
「あいつよ! 私たちを拉致した宇宙人!」
「…人間には未知の能力だね。あれは細胞を肥大化させてるんだと思う。けど、単純に大きくなればその分強くなる。大きさ=パワーだからね、厄介だよ」
マリーと姫女はそれぞれの考えを述べている。
二メートル近くある化物相手でも、美裂は切り刻んできたことを知っているマリーたちにせよ、さすがにビルの四階五階という大きさの相手には分が悪いとも思える。
「…君たちはここから離れてくれ、危険だ」
「あ、うん、わかった! けどあなた、えーと美裂ちゃん? ど、どうするのあんなヤツを!?」
マリーは化物を指差しながら美裂に尋ねる。
あまりにも体格差がありすぎて、さすがに美裂でもどうにもならないと思ったからだ。
「…なんとかする」
再び美裂は何もない空間を指先でなぞる。
三十センチほどの円形の空間が開き、美裂はそこから直径十五センチほどの銀色のボールを手に取った。
少し離れた場所、美裂に促され、マリーたち十一名はその場から離れようと走っている。
「…えっ!?」
数十メートル離れた場所から美裂を見守っているマリーたち。
手に持った銀色のボールが、まるで切ったスイカの断面のように展開する。
その中心にある突起物から大量のエネルギーが解放された。
同時に、美裂の髪が一気に背中まで伸びる。
戦闘時には視界を遮らないための髪の長さだが、エネルギー吸入のためには面積は広い方がいい。
「バージョンアップ」に要するエネルギーは膨大だ。
髪から大気中の地球のエネルギーを取り込む美裂は、今そのボールに蓄えられたエネルギーを取り込む。
全身黒づくめの美裂の体が、膨大なエネルギーを受けながらその姿を変えてゆく。
「あ、あれはっ…!」
その美裂が変貌していく姿を見て、姫女は声を上げる。
「っと…『黒きをなご、光る玉持ち、やがて身の丈五十尺の猛きをのことなりて、異形との諍いを』…なにこれ?」
そこに書かれている内容は、姫女にしてみれば現代のアニメや、漫画の描写と変わらないように思えている。
大昔の書物に、まさか少年漫画のようなバトル描写があったのが予想外だったせいだ。
「つまり、黒い女の子が光る蹴鞠みたいなのを持って、十五メートルの大男になって妖怪と戦うってこと?」
あまりに突飛すぎる内容に姫女は少し頭を抱える。
いくら小説だろうと整合性も何もあったものではないと感じたからだ。
「面白いことは面白いけど…ちょっとこの作者、電波入ってるかな?」
いつか読んだ大昔の古書。
そこに書かれていた内容と同じ様子が、今姫女の目の前で起きようとしていた。
その全身は漆黒の姿。
能面のような無表情な顔と、体の部位には一部赤い模様が走っている。
まさにそれは悪魔を思わせる色合いと出で立ちの巨人。
しかし、普段の姿と似た面影はあり、凶悪な外面とは裏腹にその内面を、今日姫女は理解した。
それはマリーや雛・魅麗にとっても同じで、不愛想ながらも誰かを守ろうとする美裂の心はわかっているつもりだ。
それでも現実に理解が追いつかないマリーをはじめ、その場にいる友人たちは皆呆然としている。
「あれは…フィクションじゃなかったんだ…」
室町の世から続く異形との闘い --- その闘争は未だ続いていることに、姫女は気づくのだった。
はい、すみません(;^ω^)
取り急ぎ、新作をアップしました。
異世界関係の話が止まったままですが、時系列的にはこちらのが先でしたので、なんとかこちらは一区切りつけました。
次回からホントに異世界の話に移りますが、といってもそちらも予定では次回か、またはその次ぐらいには決着が着く予定にしています。
ん-、まぁ思ったのは、動画にすればすぐだけど、文字にすると意外に膨大というのが率直な感想です(;^ω^)
キャラの心情を描き切れてないところも多数ありますので、その辺はちょっと申し訳なく思っています。
元々そこまで文章力がある方じゃないんで、そこは自分でも残念なところですけど。
以前にもお伝えしました通り、異世界の話は佳境に入り、各キャラがどうなるかはまぁ見ていただくしかないんですけどね('ω')
予定では次回の後書きでもまたYouTubeのURLを載せる予定にしております。
元ネタであるAI曲が結構自分でも気に入ってますので、またよければ次回もこの後書きからYouTube動画を見ていただければ、なんとな~くこんな感じかーとわかってもらえると思いますので。
では本日もありがとうございました。
また次回お会いしましょう(*'▽')ノ今後ともよろしくお願いしまーす。
追記:はい追記です。
YouTubeのURLをまた載せておきます。
リンク先はYouTubeのうちのチャンネルで、危険性がないのは確認済みです。
FALLING INTO THE SKY → https://www.youtube.com/shorts/YDTzbDrvHdc




